男女共同参画社会基本法逐条解説

社会における制度又は慣行(1)についての配慮)

第4条 男女共同参画社会の形成に当たっては、社会における制度又は慣行(1)が、性別による固定的な役割分担等(2)を反映して、 男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすこと(3)により、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ(4)、社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮(5)されなければならない。

1 趣旨

男女共同参画社会は、第2条の定義にもあるように、自らの意志によって社会のあらゆる分野における活動に参画す る機会が確保される社会であるが、社会における制度や慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、結果とし て就労等の活動の選択をしにくくするような偏った影響を与えるおそれがある。

本条は、これらのことを踏まえ、男女共同参画社会の形成に当たって、社会制度・慣行の及ぼす影響に配慮すること を基本理念としている。この規定には、直接的に男女共同参画社会の形成を目指す制度だけでなく、社会のあらゆる制 度や慣行を対象として男女共同参画の視点を反映させていく考えが背景にある。税制、社会保障制度、賃金制度等男女 の活動や生活に大きな影響を与えるものについては、男女の社会進出や家族、就労形態の多様化、諸外国の動向等も 踏まえつつ、男女共同参画社会の形成という観点からも、広く議論されることが期待される。

なお、法令でなく「社会における制度又は慣行」とされている点で、法律上の平等のみならず事実上の平等(結果の平 等ではない。)を目指している。

2 用語解説

(1)「社会における制度又は慣行」

社会におけるあらゆる制度又は慣行が含まれる。制度には、法制度や社会的に定められた仕組みなどが該当する。 慣行を法律で取り上げた例は数少ないが、男女共同参画社会の形成において無視することはできないので規定されてい る。なお、社会制度、慣行であって、性別による差別に該当するようなものについては、本条よりも第3条の基本理念に反 するものと言える。

(2)「性別による固定的な役割分担等」

男女を問わず個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるにもかかわらず、男性、女性という性別を 理由として、役割を固定的に分けてしまいがちである。「男は仕事・女は家庭」、「男性は主要な業務・女性は補助的業 務」等は固定的な考え方により男性、女性の役割を決めている例である。

「等」には、女性蔑視等の偏見等が含まれる。

(3)「男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすこと」

「中立」とは、男女が「社会における活動の選択」を行うに当たり、影響を与えないことであり、換言すればある方向に誘 導したり、ある選択をしにくくしたりしないことを言う。個別の制度・慣行が「活動の選択に対し中立でない影響を及ぼす」か 否かについては、男女の社会における活動の実態に関する調査、各種制度等の目的・適用関係等を踏まえ、男女いずれ か一方に特別の影響を及ぼしているか否かとの観点から、個別に判断するものである。

(4)「男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ」

社会における制度又は慣行が、性別による役割分担等を反映して、男女の社会における活動の選択に対し、中立でな い影響を及ぼすことにより、男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることが、本条を設ける趣旨であ る旨が明記されている。したがって、単に男女異なる取扱いを明記していないからといって、直ちにそれで本条の規定に照らし て問題にならないということではない。

(5)「できる限り中立なものとするように配慮」

社会における制度又は慣行が男女共同参画社会の形成を阻害する要因とならないよう、それらの目的・意義との関係 も踏まえつつ、活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮することである。社会における 制度又は慣行は、必ずしも男女共同参画社会の形成を直接的な目的とするものではないし、また、制度を作った目的を 追求すれば、男女共同参画社会の形成について完全な中立を保つのは難しい場合もあることから、「できる限り配慮す る」ことを規定している。


<参考>制度、慣行の中立化

「本基本法の制定によりまして、男女共同参画社会の形成という観点から、さまざまな制度、慣行について国民の間で 広くご議論され、必要な検討がなされていくものと考えております。」との総理答弁(4月12日の代表質問)がある。

本条は、「男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立にする」ということであり、中立的なも のとする対象は、個別の制度、慣行について男女の活動の選択に対する影響の有無、影響の程度、対象となる制度・慣 行の目的や効果等を考慮して検討されるべきである。なお、子どもの祝い事(鯉のぼり、雛祭り)のような慣行の中立化ま で求めるものではないと考えられる。

また、大相撲の賜杯を女性が土俵で授与することについての質問に対して、「本法が制定されることによって国民の間 で議論がなされ、その結果として自ずと社会の中でいろいろな慣行の見直し、検討がなされていくと期待している」旨答弁 (5月18日)されている。

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