6 婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略(抜粋)

6 婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略(抜粋)

(1985年7月)

I 平    等

B 基本的戦略

52. 政府は適切な手段を講じて、男女双方が平等な権利、機会及び責任を享受できるようにし、個々の資質や能力の開発を保障し、婦人が開発における受益者かつ活発な行為者として参加できるようにしなければならない。

C 基本的戦略実施のための国内レベルにおける措置

社会参加における平等

78. 2000年までに、すべての政府は社会のあらゆる分野における婦人の完全かつ平等な参加に対するすべての障害を撤廃するため、総括的で一貫した適切な国内婦人政策をとることが必要である。

79. 政府は、婦人に男性と対等で差別なしに、小地域、地域及び国際会議への代表団の全てのレベルで政府を代表する機会を与えるための適切な措置を講じなければならない。外交官及び平和と開発に関する活動に関連した分野におけるポストを含む国連システム内の意思決定ポストに、より多くの婦人を任命すべきである。

84. 政府は職業上の障害やタブーの撤廃を図るため、あらゆる職業、特にこれまで男性の領分とみなされていた分野への婦人の完全な参加を奨励することが要請されている。雇用平等プログラムを発展させ、婦人をすべての経済活動に男性と対等に組み込むようにする必要がある。

政治的参加及び意思決定における平等

86. 政府及び政党は、国及び地方のすべての立法機関への婦人の平等な参加を奨励し、保障する努力、及びこれらの団体の行政、立法、司法部門の上位ポストへの婦人の任命、選任及び昇進について平等を達成する努力を強化する必要がある。地方レベルにおいては、政治的参加における婦人の平等を確保する戦略は実際的なものでなければならず、また地方の婦人に関する問題と密接な関係を持ち、提案された措置の地方のニーズや価値への適合性を考慮したものでなければならない。

87. 政府及びその他の雇用主は、すべての人権の発展と実現における重要な要因である種々の形態の一般市民の参加において管理部門へ婦人をより広範にまた平等に参加させ、かつ統合させるように特に注意を払う必要がある。

88. 政府は、立法及び行政的措置により、国、州、地方レベルの意思決定過程への婦人の参加を確保する必要がある。政府の各部門が、それぞれの内部に、できれば婦人を責任者とした特別な室を設け、婦人を平等に代表させるための過程を定期的にモニターし、促進させることが望ましい。婦人が平等に代表することが達成されるまで、ポストを公表したり、上方への流動性を引き上げる等により、特に意思決定及び政策決定者の地位への婦人の採用、任命、昇進を増加させるための特別な活動を実施すべきである。公務における婦人の人数や仕事における責任のレベルについて定期的に報告書をまとめる必要がある。

89. 公務、特に在外勤務につく婦人の数の増加に関し、政府は家庭責任と職業上の責務の両立を図るため、その特別なニーズ、特に夫婦の同一勤務地への転勤の希望を配慮することが要請されている。

90. 婦人の政治的権利に対する認識を、公式、非公式の教育、政治教育、非政府機関、労働組合、メディア、企業組織を含む多くのルートを通じて推進する必要がある。婦人は激励され、動機を与えられる必要があり、あらゆるレベルにおいて男性と対等に投票し選挙され、政治過程に参加する権利を行使するため男女は互いに助け合う必要がある。

91. 政党及び労働組合のようなその他の団体はその内部で婦人の参加を増加させ、改善する努力をしなければならない。また、婦人が候補者の選出を通じ選挙され、任命される権利につき憲法上及び法律上の保障を活性化する措置が講じられなければならない。組織の政治的機関へ平等に参加する機会、実用的政策の技術と戦術における技能及び効果的指導力を開発するための資源及び手段を平等に利用する機会が婦人に与えられるべきである。指導的地位の婦人もまたこの分野において援助を行う責任を有している。

92. 個々の婦人及び最も弱く、恵まれない、あるいは最も抑圧されたグループの婦人を含むすべての種類の婦人の利益団体の代表者が国及び地方の政策問題及び活動の立案、追跡調査、見直し及び評価のあらゆる局面に積極的に参加できるような制度的な取り決めや手順をまだ確立していない政府はこれを行うべきである。


II 発    展

B 基本的戦略

107. すべての婦人の知識人、政策決定者、意思決定者、立案者、貢献者及び受益者としての開発への効果的参加に対する障害の除去のための公約は、種々の地域、国々の婦人の特殊な問題や、これらの地域、国々の異なるカテゴリーの婦人のニーズに応じて強化されなければならない。この公約は、婦人の完全かつ効果的な参加により、開発の展望が好転し、社会が発展することを認識した上で、政策、計画及びプログラムの策定及び実施を導く必要がある。

109. 開発は、包括的な一つの過程として考えられ、開発の過程においてすべての国民、特に婦人の効果的参加を確実なものとする経済的、社会的目標を追求するものとされるべきである。また、これらの抱負を達成するために必要な構造上の変革のための努力もなされるべきである。

111. 婦人は開発の目標と方法を定義する過程及びそれらの実施のための戦略、措置を発展させてゆく過程に不可欠な部分でなければならない。婦人が政治的過程に完全に参加する必要性及び開発の努力を導き、かつそこから利益を得る平等な権限の一端を有する必要性が認識されるべきである。婦人の関心や選好を別の開発目標と戦略の評価及び選択に組み込むことのできる系統的その他の手段が認識され、支援されるべきである。これは、婦人を男性と対等に開発過程の主流に入れるために、婦人の自主性を向上させる特別な措置又は開発の努力全体に婦人を完全に統合するその他の措置が含まれるものである。

116. 政府は、伝統的及び非伝統的な分野、部門の双方において意思決定者、政策決定者、経営者、専門家及び技術者である婦人の数を十分にふやす方法を探求すべきである。ハイレベルの管理職や専門職に婦人が平等に就任することを促進するために資源、特に教育、訓練への平等な機会が婦人に提供されるべきである。

117. 開発の一つの要素としての婦人の役割は、多くの場合、労働者の経営参加、産業の民主化、労働者の自主管理、労働組合、協同組合のような、経済的、社会的構造における意思決定や管理の種々の形式やレベルへの婦人の組み込みに結びついている。労働条件や生活条件の開発と促進に影響を及ぼすこれらの参加形式の発展及び男性と同じ基盤に基づくこれらの参加形式への婦人の組み込みはきわめて重要なことである。

C 基本的戦略実施のための国内レベルにおける措置

総    括

126. 平等と平和という目標と不可分に関連している発展の目標を達成するため、政府は開発のすべての分野、部門に適切な機構を設置し、あるいは強化することによって婦人問題を制度的に組み込む必要がある。更に、政府は、男性の意思決定者の態度に積極的な変化をもたらすことに特別の注意を向ける必要がある。政府は、法令、行政政策の策定及び履行を確保し、婦人がすべてのレベル及び段階における、立案、履行、評価といった開発の全局面に参加する法的権利に対する社会的認識を創出するためにコミュニケーション及びインフォメーションシステムを動員すべきである。政府は婦人団体やグループの形成と発展を促進すべきであり、また適当な場合には婦人の活動に対して財政面と組織面での支援を行うべきである。

127. あらゆるレベルとあらゆる分野、部門における婦人の参加促進を図るために国内資源が利用されるべきである。政府は開発における婦人のための国内計画、部門別計画、及び特別の目標の策定、婦人問題担当機構に対する政治的、財政的、技術的な資源の供給婦人の参加促進における部門間の調整の強化、及び特に脆弱な婦人団体のニーズに取り組む制度的機構の設立を行うべきである。

III 平    和

B 基本的戦略

248. 婦人は国連憲章に合致した民族解放運動を通じる等により民族自決に重要な役割をこれまでに果たし、また、現在もその役割を果たし続けている。婦人のこうした努力は彼女らの国の建設と、人道的で公正な社会及び政治システムの創造への婦人の完全な参加のためのひとつの基礎として認められ、推奨され、かつ、利用されるべきである。この分野における婦人の貢献は政治権力への平等なアクセスと意思決定過程への完全な参加によって保障されるべきである。

253. 平和とこれに関する諸問題についての意思決定に婦人が平等な役割を果たすことは、婦人の基本的な人権のひとつとして認められるべきであり、国、地域、国際的レベルでこれを促進し、奨励すべきである。女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に従って、女性が男性との平等の達成を妨げるすべての現存する障害が除去されるべきである。このため、偏見や定型化された考え方、女性に対する職業上の展望や適切な教育を受ける可能性の否定、また国際的、外交的職務への婦人の男性と平等な参加に必要な変更に対する決定権者の抵抗を克服するため、あらゆるレベルにおける一層の努力が必要である。

F 基本的戦略実施のための国内レベルにおける措置

平和努力への婦人の参加

266. 国際平和と協力の推進に関する意思決定過程への婦人の積極的参加を可能にすべきである。政府は、制度的、教育的、組織的手段によって婦人の参加を可能にするために必要な措置をとらなければならない。この過程においては草の根レベルの参加及び婦人団体と他の非政府機関との協力に力点が置かれるべきである。

267. これまで是正措置をとらなかった政府は婦人に対する現行の差別的慣行を撤廃するためにあらゆる適切な措置をとるほか、婦人があらゆるレベルの公務に参加し、外交的職務に就きまた平和や紛争解決、軍縮等に関するものを含む国、地域及び国際レベルの会議、安全保障理事会その他の国連機関の会合に代表団のメンバーとして国を代表して参加する平等な機会を与えるため、あらゆる適切な措置をとる必要がある。

269.政府は公務に婦人が参加する機会に関する情報を提供し、また政府、非政府機関やその活動への婦人の公平な参加を促進することによって、婦人の平和の促進への意思決定者レベルでの参加を奨励すべきである。

V 国際協力

B 基本的戦略

310. 技術協力、訓練、助言サービスは、特に開発途上国間の経済技術協力に重点を置き、自発的開発と自助を促進すべきである。婦人の特別のニーズを定期的に評価し、活動の計画と評価に婦人の関心を組み込む方策を発展させるべきである。技術協力政策及びプログラムの策定における婦人の参加が確保されるべきである。

313. 直接あるいは間接的に、平和と安全の維持、開発における婦人の役割、及び男女平等の達成にかかわる諸活動を含む、国際、地域及び小地域レベルでの活動及び意思決定への婦人の参加を増加させるための手段がとられるべきである。

315. 婦人職員の募集、昇進、維持を確保するための継続的努力の必要性を示した国連システムの評価に基づいて、すべての国連機関、地域委員会及び専門機関は、すべての基幹的分野及び現場のポストにおける管理及び専門職のレベルでの男女のスタッフの公正なバランスを実現するようあらゆる措置をとるべきであり、特に地域レベルでの婦人の公正な参加促進のために特別の注意を払うべきである。平等・発展・平和の分野を含む国際及び地域レベルにおける活動への婦人の参加を促進するため、国連システムの意思決定にかかわる地位や管理職に婦人が採用されるべきである。

C 基本的戦略実施のための措置

国際及び地域レベルにおける活動及び意思決定への婦人の参加

358. 婦人にとって関心のある計画や活動に必要な注意が払われ、これが優先的に扱われることを確実にするためには、国連におけるプログラムや政策の立案策定、意思決定及び評価プロセスに婦人が積極的に参加することが不可欠である。この目的のために国際、地域、及び国内機関は、「十年」の間、婦人スタッフの地位の向上と増員を要請されていた。しかしながら、これらの目的を達成するための総合的目標や有効な機会が欠けており、婦人スタッフの増加、昇進及び職業開発を確実にするためにはより一層の努力が必要とされる。従って国連システムのすべての組織や機関は、2000年までにすべてのレベルにおける男性と対等な婦人の参加を達成するためにあらゆる措置をとるべきであるこの目標を達成するため、国連事務局と国連システム内のすべての組織機関は中間目標の設定や婦人スタッフの地位を向上させるための特別の組織、例えばコーディネイターの設置とその維持のための準備を含む総合的な肯定的行動計画の準備のような特別な措置をとるべきである。措置の進捗状況は国連総会、経済社会理事会、婦人の地位委員会に定期的に報告されるべきである。

365. 国際、地域、小地域、及び国内機関は、一層の人的、財政的資源の投入、あるいは政策及び意思決定レベルへのより多くの婦人の参加によって強化されるべきである。