「共同参画」2026年10月号

巻頭言

未来の選択肢を広げる

私は長崎県島原市で育ち、大学では生物応用化学を学びました。卒業後は化粧品の商品開発からキャリアを始め、その後マーケティングへ進み、現在は食のブランドづくりに携わっています。マーケティングは、データで人を理解し、感性で人の心を動かす仕事です。私の仕事では、理系と文系は分かれていません。理系で培った「なぜ」と問い、仮説を立て、確かめ、失敗から学ぶ姿勢は、今も私の土台です。理工系を選ぶことは、将来を一つに決めるのではなく、未来の選択肢を広げます。

科学技術が社会を大きく変える今、誰が課題を見つけ、何を問い、何をつくるかで未来は変わります。多様な視点が加わることは、公正さだけでなく、より良いイノベーションに不可欠です。「女性だから」「理系は特別な人のもの」という思い込みで扉が閉じられることは、本人にも社会にも大きな損失です。

STEM Girls Ambassador(理工系女子応援大使)として全国の学校を訪れ、私は「自分のやりたいことは自分で決める」「人生の選択に正解はない。選んだ道が正解になる」「行きたい道を切り拓け」と伝えてきました。講演後に、自分のワクワクを大切にしたい、マーケティングにも興味を持ったという声に触れるたび、可能性を狭めているのは能力ではなく、情報や出会いの不足であることが少なくないと実感します。

これから必要なのは、進路選択の直前だけの働きかけではありません。早い段階から科学や技術の面白さに触れる体験、多様なロールモデルとの出会い、そして保護者や教員も無意識の思い込みに気づき、本人の意思を後押しする環境を、学校、大学、企業、地域が共につくることです。住む地域や家庭環境に左右されず、誰もが機会に出会えることも重要です。

「好き」「知りたい」「やってみたい」という小さな火を、周囲の大人が消さずに育てる。私はこれからも、一人ひとりが自分の意思で道を選び、選んだ道を自ら正解にしていけるよう、扉を開く言葉と出会いを届け続けたいと思います。

ズナイデン房子
ズナイデン房子
ZNAIDEN Fusako
日本マクドナルドホールディングス株式会社 取締役
日本マクドナルド株式会社 取締役 上席執行役員 CMO