連載2
世界各国が直面している新たな人権侵害:TFGBV
(テクノロジーを悪用したジェンダーに基づく暴力)
独立行政法人男女共同参画機構(JGEPA)
第70回国連女性の地位委員会(CSW70)でも喫緊の課題とされた、デジタル技術や通信を用いた「ジェンダーに基づく暴力」(TFGBV:Technology-Facilitated Gender-Based Violence)を取り上げます。SNSの普及やAIの進展に伴い、被害・加害ともに急増する深刻な現状への早急な取り組みが国を超えて求められています。今回はCSW70での議論を踏まえ、その実態をまとめました。
世界共通の課題―TFGBVの深刻さと多様さ
TFGBVは世界共通の人権侵害です。SNSでのストーキング、同意のない性的画像・生成AIによる偽画像(ディープフェイク)の拡散に加えてスマホやスマート家電のハッキングによる盗撮・位置情報特定など、手口は多様化・悪質化しています。
TFGBVの特徴は、加害者の匿名性による恐怖、デジタル特有の拡散性、画像の削除困難さ、相談先の少なさ等にあり、被害者を精神的に追い詰めます。デジタル空間での子どもの性被害・加害も急増しており、この背景には、SNSを介した巧妙な「性的グルーミング(わいせつ目的の懐柔)」や、画像閲覧者が次々と二次加害者化する構造的問題があります。
また、被害はサイバー空間にとどまりません。ネット上に暴露された個人情報が、現実世界のストーカー行為を誘発したケースもあります。CSW70では、SNSが女性や児童の性搾取や人身売買に直結している実態も指摘されました。国境を越えて広がる被害に対し、単一国家での対応には限界があり、各国共通の法整備やプラットフォーム事業者への国際的な規制枠組みの構築など、国際社会の強固な連携が不可欠です。

AI が増幅するネット暴力と法整備の必要性
被害者の多くが女児や女性である背景には、現実社会に根深く存在するジェンダー不平等の構造が、AIやデジタル空間によって増幅・再生産されているという深刻な構図があります。不平等なジェンダー権力関係や偏見が、デジタル空間においてはテクノロジーを通じてより暴力的な形となって現れます。検索履歴などから好む情報だけが抽出され反対意見が見えなくなる「フィルターバブル」や、閉鎖的なコミュニティ内で偏った意見が反響し合い過激化する「エコーチェンバー」も差別的言動を増幅します。
CSW70では、デジタル空間における新たな形の暴力の問題が広がっていることを重く捉え、根底にある現実のジェンダー不平等を解消していく視点を取り入れ、被害者の声を反映した、実効性ある制度設計の推進が求められました。
安全・安心な地域づくりに向けて
TFGBVは、技術についての正しい知識の不足や無関心からも生まれます。自治体や男女共同参画センターは、現実世界とデジタル世界の被害防止の接地点としての役割が期待されており、最新動向の把握と知識のアップデートが求められます。
JGEPAでは、各地の取組の一助となるよう、男女共同参画の基礎知識などを学ぶ研修を「JGEPAオンラインキャンパス」にて無料で提供しています。日々の業務の振り返りや学びの一歩を踏み出すきっかけとして、ぜひご活用ください。
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JGEPAは、ジェンダーに関する国際動向や先進事例を広く発信しています。CSW70についても、冊子「CSW早わかり」に概要をまとめ、併せて「グローバルな視点から考える地域課題解決のヒント」と題したセミナーを実施しました。