特集2
国土交通省におけるジェンダー主流化の推進
-「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言」の策定と取組-
国土交通省総合政策局共生社会政策課
近年、政策の企画・立案から実施、評価に至るまで、あらゆる段階でジェンダーの視点を取り入れる「ジェンダー主流化」の重要性が国際的に高まっています。国土交通分野においても、多様な利用者や担い手の視点を政策に反映することは、安全性や利便性の向上、地域の活性化、持続可能な社会の実現につながります。国土交通省では、令和8年6月に「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言」を策定し、省横断的な取組を本格的に開始しました。本稿では、行動宣言の概要と、その考え方を具体化する取組、今後の推進の方向性について紹介します。
1.国土交通省におけるジェンダー主流化の推進
ジェンダー主流化とは、政策や事業の企画・立案から実施、評価に至るまで、あらゆる段階で性別による影響やニーズの違いを考慮し、誰もがその恩恵を受けられるようにする考え方です。これは、特定の施策に関することではなく、すべての政策そのものの質を高め、より実効性の高い行政を実現するためのアプローチとして、国際的にも広く取り組まれています。
国土交通行政は、住宅、まちづくり、公共交通、観光、防災など、人々の日常生活や社会経済活動を支える幅広い分野を所管しています。そのため、利用者や働き手の多様な視点を政策に反映することは、安全性や利便性の向上、地域の活性化、人材確保など、幅広い政策課題の解決にもつながります。
こうした認識の下、国土交通省では令和7年5月に「国土交通省ジェンダー主流化推進本部」を設置し、国土交通大臣を本部長とする省横断的な推進体制を整備しました。また、国土交通業界の民間企業が業種を超えて各社の取組を相互に共有するとともに、今後の継続的な関係を築く場として、「国土交通ジェンダーネットワーク会議」を開催するなど、ジェンダー主流化を着実に進めるための基盤づくりを進めています。
2.「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言」の策定
国土交通省では、ジェンダー主流化を全ての政策分野で推進するため、令和8年6月に「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言」を策定しました。
本宣言は、ジェンダー主流化を国土交通行政全体に浸透させるための基本的な方針を示したものであり、政策立案や事業実施に当たって職員一人ひとりが共通の認識を持ち、各分野で主体的に取り組むことを目的としています。宣言では、ジェンダー主流化を進める上で、三つの視点を重視しています。

第4回国土交通省ジェンダー主流化推進本部の様子
第一は、「利用者」の視点です。公共交通や道路、住宅、公園などの施設やサービスについて、多様な利用者のニーズを把握し、誰もが安全で快適に利用できる環境を整備することを目指しています。
第二は、「担い手」の視点です。建設業や運輸業、観光業など、国土交通分野を支える産業において、多様な人材が能力を発揮し活躍できる環境づくりを進めています。
第三は、「社会・経済」の視点です。人口減少や人手不足が進む中、多様な人材の活躍を促進し、持続可能な地域社会や経済の発展につなげていくことを目指しています。
ジェンダー主流化は、一部の施策だけで完結するものではありません。あらゆる政策分野でジェンダーの視点を自然に取り入れることが、国土交通行政の質を高め、より包摂的で持続可能な社会の実現につながるとの考え方を、本宣言では明確に示しています。
3.ジェンダー主流化の推進に向けた取組
国土交通省では、ジェンダー主流化推進本部の設置以降、各局・各分野においてジェンダーの視点を政策へ取り入れる取組が進められてきました。こうした取組を広く共有し、各分野への横展開を図るため、「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言」の策定に合わせ、「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言施策集」を取りまとめました。
その一例が、「トイレの便器数に係る基準と適用のあり方に関するガイドライン」の策定です。従来、トイレの便器数は画一的な基準に基づき計画・設計されることが多くありましたが、本ガイドラインでは、施設ごとの利用者構成や利用実態を踏まえ、男女の待ち時間ができる限り均等となるよう計画・設計するという考え方を示しています。利用者の実態やニーズを踏まえて政策を見直すという点で、ジェンダー主流化が目指す方向性を具体的に体現する取組です。
このほかにも、各分野ではジェンダーの視点を取り入れた施策が広がりつつあります。例えば、水防分野では、人口減少や高齢化による担い手不足を踏まえ、性別等にかかわらず幅広い人材が防災活動に参画できる環境作りを進めるため、水防団への多様な人材の参画を促進するなど、地域防災を支える担い手の確保・育成に取り組んでいます。
このように、ジェンダー主流化の考え方は個別の施策へ着実に反映されつつあり、各分野における実践事例の共有を通じて、その取組のさらなる横展開が進められています。
4.今後に向けて
国土交通省では、「国土交通省ジェンダー主流化行動宣言」に基づき、各分野における取組を着実に推進するとともに、ジェンダーの視点を政策形成のプロセスに定着させるための環境整備を進めていきます。
そのためには、職員の理解促進や知識の向上、性別等に関するデータの活用、政策立案時にジェンダーの視点を確認する仕組みづくりなどを進めることが重要です。また、地方公共団体、関係団体、有識者等との連携を深めながら、実践事例の共有や知見の蓄積を図り、国土交通分野全体への定着を目指します。
ジェンダー主流化は、一過性の取組ではなく、政策の質を高め続けるための継続的な取組です。国土交通省は、多様な人々の視点を取り入れながら、誰もが安全で快適に暮らし、活躍できる社会の実現と、持続可能な地域社会・経済の発展に向け、ジェンダー主流化を着実に推進していきます。

国土交通省職員の理解促進を目的として作成した「ジェンダー主流化」啓発ポスター
ジェンダー主流化に向けた取組
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000355.html

国土交通省ジェンダー主流化行動宣言
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/002006124.pdf
