「共同参画」2026年9月号

巻頭言

多様なチカラ・キャリアが創る地域の未来

産業界では今、人的資本経営が重視され、人材を価値創造の源泉と捉え、育成や健康面への投資を戦略的に進める動きが広がっています。有価証券報告書での多様性項目の開示義務化により、DEI・女性活躍推進は経営戦略・人材戦略の一部として位置づけられ、企業の持続的成長を支える基盤となりつつあります。

一方、男女雇用機会均等法施行から40年が経つ今、企業間の格差は広がっています。規模や業種など複合的な要因に加え、地域の影響も否めません。社会の変化に気づきにくい環境にある企業もあり、女性のキャリア形成ではアンコンシャス・バイアスが意思決定に影響する場合もあります。身近に多様なロールモデルがいない地域では、キャリア選択の幅が狭くなることもあり、企業や個人だけでは変革が進みにくい現実が残っています。

こうした状況を動かすには、外部からの働きかけが欠かせません。地域の経済団体や産業別団体、地域リーダーの会、行政機関など多様な主体が連携し、企業の経営層に向け、企業価値向上・人材確保・持続的成長といった経営課題と結びつけて働きかけることが重要だと考えています。企業組織を動かすには、トップのコミットメントが不可欠だからです。

組織内部では、女性のみならず多様性・DEIを戦略的に一体化させ、「誰もが」働きやすく働きがいを持って活躍できる環境づくりが鍵となります。ただ、制度や環境が整っても、それを動かす管理職や社員の意識が変わらなければ形骸化してしまいます。地域の生活や慣習に残る性別役割分担意識やアンコンシャス・バイアスは、職場に持ち込まれると、マネジメントや社員の言動に表れ、女性のキャリア形成に影響を及ぼすこともあるのです。

だからこそ、これからは地域ぐるみで、多様な主体が領域を横断しながら取り組むことが重要です。企業単独では気づきにくいことや、社員個人では変えられないことが今もなお残っています。こうした状況のもと、知識や情報の共有、ネットワークなど外部とのつながりが、企業の取組を後押しする契機となる場面も少なくありません。

誰もがウェルビーイングであるために、地域の経済を支えるのは一人ひとりのチカラ、地域で育まれたキャリアです。男女雇用機会均等法施行50年を迎える頃、サステナブルな地域・企業、そして誰もが活躍できる社会であるためにも、社会全体で連携・協働を進めることが、遠回りに見えて実は最も確かな近道だと感じています。

河野 真理子
河野 真理子
KONO Mariko
株式会社キャリアン
代表取締役