巻頭言
労働時間改革で人手確保と共同参画の同時実現を
人手不足が深刻化するなか、労働時間の在り方が議論になっています。働き方改革以降残業の削減が進みましたが、依然道半ばという見方がある一方、働き方が硬直的になったという声も聞かれます。男女共同参画の観点からは、これを契機に、労働時間を生活時間全体の中に位置づけ直す議論が深まることが期待されます。
現代社会において、労働は多くの人々にとって生活費を得るための主な糧であるとともに、社会参加を進めてくれる重要な営みでもあります。その一方で、我々の生活時間全体を考えれば、労働時間は重要な位置を占めるものの、全体の一部に過ぎません。そうした認識がジェンダーの違いのみならず、年齢や国籍を超えたダイバーシティを活かした共同参画を進める際の出発点になります。
労働は生活に必要ですが、家事・育児・介護などの家族のケアも不可欠な行為です。「近代」では、こうしたケアを労働の下位に位置づけ、女性が担うものとされてきました。それは職業キャリアにおける女性の成長機会を奪う一方、特に企業への強い帰属意識を求められる我が国では、男性が会社を離れると居場所を見つけられない状況を生んできました。
もっとも、「近代」をいち早く迎えたがゆえにその問題が早く顕在化した欧州諸国では、一歩先に女性の職場進出とともに男性のケア参画が進められてきました。そうしたなかで注目すべきは、勤務体系の多様化が進んでいることです。週労働時間を①29時間以下、②30~39時間、③40時間以上の3つに区分して、労働者の分布を見たとき、欧州主要国は②の割合が男女ともに多くなっています。男女ともにメリハリをつけて仕事をし、ケアや自己啓発にも時間が割ける勤務体系が普及しているのです。
これに対し我が国では、性別役割分業を反映して①と③に二極化している状況です。仕事の属人化を見直し、デジタルツールで複数の人が仕事を共有できる業務体制を整え、ほどよい労働時間の勤務体系の普及が望まれる状況です。そうなれば、男女共同参画が進んで多様な人材の活躍が可能になるとともに、業務デジタル化で生産性が向上し、人手不足の緩和に貢献することも期待されます。

山田 久
YAMADA Hisashi
法政大学教授