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「共同参画」2026年3・4月号

巻頭言

身近な関係での性暴力を防ぐために

時々、性暴力をめぐる問題について、若年層の方々にお話をさせていただく機会があります。そうしたとき、これまで何度か、性暴力や境界線、性的同意について「もっと早く知りたかった。自分はすでに、大切な人を傷つけてきたかもしれない」「もっと早く知りたかった。そうしたら、友達からの相談を性暴力だと気が付けたのに」という感想を受け取ってきました。

未だ社会の中で、性暴力や境界線、性的同意についての共通認識が完全に広がっているとは言い難い状況があります。そのため、たとえば、Aさんは「家に遊びに行く」と考えており、Bさんは「家に遊びに来たのだから関係を進めてもいいはずだ」と考えている、といったことが生じます。そして、Bさんの行ったことが結果的に性暴力にあたる行為になる、ということがあります。あるいは、盗撮について子どもたちが「なぜ悪いことなのか分からない」ままに、本人たちは「軽いノリで」行い、盗撮された側の子どもが深刻に傷つくという事案も生じています。

内閣府が行った「若年層の性暴力被害の実態に関するオンラインアンケート及びヒアリング結果」(令和4年3月)では、性交を伴う性暴力の加害者について、「通っていた(いる)学校・大学の関係者」、「交際相手・元交際相手」であったという回答が多くみられます。性暴力は身近な関係性の中で起きています。しかし、その中の、同意の認識が不足しているために起こる性暴力は、性暴力や境界線、性的同意についての共通認識を社会に広げることで、防ぐことができるのかもしれません。

また、前述の調査で、相談した人・機関、最初に相談した人・機関は、ともに、「どこ(だれ)にも相談しなかった」が最も多く、次いで「友人・知人」です。性暴力は、相談されるとしたら、最初に身近な関係の中で相談されることが多いです。何が性暴力かを子どもたちが知っていたら、子どもたちは相談されたときに、それを大人に伝えることもできるかもしれません。

まず大人が、性暴力とは何か、境界線とは何か、性的同意とは何かについて知っていくことが大切だと思っています。そして、その知識が子どもたちにも届くことで、自分も相手も大切にする関係性が育ち、知らなかったが故の暴力を防ぐことにつながると考えています。

齋藤 梓
齋藤 梓
Saito Azusa
上智大学総合人間科学部心理学科 准教授