特集3
令和6年改正育児・介護休業法が10月で全面施行されました
厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課
令和6年改正育児・介護休業法の概要
2024年5月に改正育児・介護休業法(以下「改正法」という。)が成立し、本年4月・10月に段階的に施行されました。改正法は、育児・介護に関する労働者の個別の事情に対応して、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにすることを目的としたものであり、主な改正事項は以下のとおりです。
【育児関係の主な改正事項】
子の年齢に応じた柔軟な働き方を可能とするため、改正法には主に以下の事項が盛り込まれました(②~④は4月施行、①、⑤は10月施行)。
①3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付けること。また、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付けること(詳細は後述)
②所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子(従来は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大すること
③子の看護休暇を感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式及び卒園式の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(従来は小学校就学前)まで拡大すること
④3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずるよう努めるべき措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加すること
⑤妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付けること
さらに、改正法には、育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超(従来は1,000人超)の事業主に拡大することも盛り込まれました。
【介護関係の主な改正事項】
仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、改正法には主に以下の事項が盛り込まれました(いずれも4月施行)。
・労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付けること
・労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付けること
なお、改正法により事業主に介護離職防止のための措置が義務付けられたことを受けて、企業の「役割」や「対応すべきこと」を明確にするとともに、それぞれの措置を効果的に実施するためのポイントや利用可能な様式・資料等を取りまとめた「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」を作成しました。今後、事業主の皆様には支援ツールなどを活用しつつ、仕事と介護を両立しやすい職場環境の整備を進めていただきたいと思います。
改正法の詳細や「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」については、こちらをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
本年10月施行の改正事項の詳細
まず、事業主は、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対して、始業時刻等の変更・テレワーク等・短時間勤務制度を含む「柔軟な働き方を実現するための措置」を2つ以上講じる必要があります。これら措置は、労働者が子の年齢に応じて柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くことも選べるようにするためのもので、労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。事業主は、講じる措置を選択する際、過半数労働組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
図1
また、事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、その子が3歳になるまでの適切な時期に、「柔軟な働き方を実現するための措置」として選択した制度について、個別に周知するとともに、その措置の利用意向を確認するために、面談等を実施する必要があります。
図2
加えて、子の年齢に応じて一律に講じられた措置のみでは、個々の労働者の子や家庭の事情から仕事と育児の両立が困難になる場合も想定されます。そのため、妊娠・出産等の申出をした労働者や、3歳に達するまでの適切な時期の子を持つ労働者に、仕事と育児の両立に資する労働条件について、個別の意向聴取を行い、その意向について配慮を行うことを事業主に義務付けました。この措置を講ずる際、労働者の子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合であって、労働者が希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇の利用可能期間を延長することや、労働者がひとり親家庭の親である場合であって、労働者が希望するときは、子の看護等休暇の付与日数に配慮することが望ましいと考えられます。
「柔軟な働き方を実現するための措置」の円滑な実施を支援するための「『育児に係る柔軟な働き方支援プラン』策定マニュアル」については、こちらをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62766.html
両立支援等助成金
働き続けながら育児・介護を行う労働者の雇用の継続を図るための就業環境整備に取り組む事業主を対象に、両立支援等助成金を支給することとしています。この助成金には例えば以下のコースがあり、こうした仕組みを活用し、仕事と育児・介護を両立しやすい職場環境の整備を進めていただきたいと思います。
【育休中等業務代替支援コース】
・育児休業や短時間勤務期間中の業務を代替する周囲の労働者に手当を支給したり、代替要員を新規雇用するなどした中小企業事業主を支援
図3
【柔軟な働き方選択制度等支援コース】
・育児期の柔軟な働き方に関する制度を3つ以上導入し、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者がその制度を利用した中小企業事業主を支援。また、10月から子の看護等休暇制度有給化支援など新たな助成メニューが加わりました。
図4
両立支援等助成金のその他のコースについては、こちらをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001472912.pdf