トピックス2
資生堂DE&Iラボ シンポジウム
『女性活躍という言葉がなくなる未来へ』開催報告
資生堂は「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」を企業使命に掲げています。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重要な経営戦略に位置づけ、多様な人の力による社会価値の創造と持続的な成長を目指しています。中でもジェンダー平等は、社会的課題への戦略的アクションとして、特に注力している領域です。当社は、2030年までに日本国内のあらゆる階層における女性リーダー比率50%を目指しており、国内資生堂グループ女性管理職比率は41.1%に達しました。2023年には、多様なバックグラウンドを持った人材の活躍と企業成長の関係を研究する社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」を設立しました。東京大学との共同研究により、女性リーダーが増えてきた資生堂での知見やデータを経済学的に検証し、企業がジェンダー平等を実現する際の課題を可視化しています。ジェンダー平等を目指す資生堂での学びを社内外に公表することで、日本社会のDE&Iを後押ししています。
株式会社 資生堂 資生堂DE&Iラボ
2025年3月に資生堂DE&Iラボは初めてシンポジウムを開催し、企業やアカデミアの登壇者が組織における女性活躍やDE&Iについて多角的な視点での討論を行いました。同シンポジウムのオンライン配信には様々な企業の人事部門の方々を中心に700名超の申し込みがあり、参加者自身が組織におけるDE&Iを捉え直す機会となりました。
参考:資生堂DE&Iラボ | ダイバーシティ エクイティ&インクルージョンの研究と取組事例
https://corp.shiseido.com/deilab/jp/
登壇者
・山口慎太郎さん(東京大学大学院経済学研究科 教授)
・林孝裕さん(dentsu DEI innovations 代表)
・山本真希さん(資生堂 DE&I戦略推進部 部長)
左から 山本さん、山口さん、林さん
当日は、各登壇者が研究や調査に基づく知見を紹介し、ジェンダー平等を進める上での障壁や未来に向けた可能性について、資生堂の実践例を交えた対話が展開されました。
登壇者からの主なメッセージ
(結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で明らかにする)労働経済学研究者の山口さんは、DE&Iは人権問題であるという前提に触れ、海外での事例を交えながら、経済成長の側面からDE&Iの重要性を述べました。
「企業でジェンダー平等が進まない要因」としては、ある製造業企業における男女間賃金格差に関する最新の研究知見を解説。
また資生堂DE&Iラボの共同研究者として、資生堂におけるデータの分析結果や取組の試行錯誤をこうしたシンポジウムや資生堂DE&Iラボのウェブサイトで広く開示することが、社会や他企業へのヒントにつながると強調しました。
資生堂DE&Iラボを率いる山本さんは、資生堂にとってDE&Iが企業使命“BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD”を実現するための経営戦略であると説明。社内調査をもとに、部下を評価する際のジェンダーバイアス(性別に関する無意識の偏見や偏り)に関する社内調査結果1や、労働時間に依存した人事評価の弊害を紹介しました。資生堂では、年齢や労働時間ではなく、グレード(個人が働き手として今どの役割を担っているのか)で目標設定し公正に評価するパフォーマンスマネジメントという制度を導入しており、同制度によるジェンダー平等への効果2について、具体的なエピソードを交えて示しました。
仕事でチャレンジしにくいと感じる女性が多いことにも触れ、出産・育児期の女性社員には、具体的な期待を言語化して伝えること、上司や周囲とのコミュニケーションがやる気を引き出すことの大切さを語りました。
参考リンク:
1)ジェンダーバイアスの評価手法と資生堂での研究・検証結果 | RESEARCH | 資生堂DE&I ラボ
https://corp.shiseido.com/deilab/jp/research/bias/
2)多様な働き方と組織の公平性を両立させた資生堂の人事評価 | RESEARCH | 資生堂DE&I ラボ
https://corp.shiseido.com/deilab/jp/research/performance-management/
林さんは、ジェンダー課題チャート3,4からの知見として、家事分担の不平等さや余暇時間の男女差を紹介。ジェンダー課題は女性だけの問題でも、個人の意識だけの問題でもない、みんなで取り組むべき課題であると紹介しました。
参考リンク:
3)ジェンダー課題チャート(女性版 2022)
https://www.dentsu.co.jp/sustainability/sdgs_action/pdf/gender_issue_chart_2022.pdf
4)ジェンダー課題チャート vol.2(男性版 2023)
https://www.dentsu.co.jp/sustainability/sdgs_action/pdf/gender_issue_chart_2023.pdf
今回のシンポジウムでは、複数の研究知見や実践例に基づくディスカッションが行われ、「評価者・マネジメント」や「リーダーのジェンダーバランス」、「新たな価値創造」といったさまざまなキーワードが挙がりました。
女性活躍という言葉がなくなる未来に向けたコメント
「DE&Iはすぐに結果が出るものではないが、さまざまな社会課題の解決につながる。10年後の会社の成長のため、コストではなく投資として考えてほしい。DE&Iは決して面倒なものではなく、個人の幸福にもつながるだろう。」(山口さん)
「女性活躍の状態を見ることは、健康診断のように、“どこに組織としての課題があるか”“どのような状態なのか”を明らかにする入口になる。」(林さん)
「女性活躍をきっかけとして、DE&Iが定着していくことが社会にとって重要になってくる。」(山本さん)
参加者の反応
事後アンケートでは、「データに基づく知見に対する納得感」「各エピソードに対する共感」「資生堂DE&Iラボがさまざまな知見を公開していることへの驚きや、継続的な知見公開への期待」など、多くの良い反響が寄せられました。
アーカイブ視聴のご案内
お申込みいただいた方へ同シンポジウムのアーカイブ動画を限定公開しております。ご希望の方は、以下リンクからのご登録をお願いいたします。
(予告なく配信を停止する場合がございます。あらかじめご了承ください。)
https://corp.shiseido.com/deilab/jp/news/20250608.html
資生堂DE&Iラボは、組織のDE&Iに関する知見を今後もイベントやウェブサイトを通じて多くの方へお届けしていきます。私たちの取組が、皆さまのDE&I推進に役立つことを願っております。今後の発信にもぜひご期待ください。