「共同参画」2015年 5月号
特集
「男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)」について
内閣府男女共同参画局推進課
男女間における暴力対策の推進に資するため、内閣府は、平成26年12月に、全国の20歳以上の男女5,000人を対象として、男女間における暴力の実態を把握するためのアンケート調査を行いました。
また、平成27年3月には、ストーカー総合対策関係省庁会議において、被害者支援の取組や加害者対策の在り方について検討し、取組を推進するための総合的な対策として「ストーカー総合対策」を申し合わせました。
内閣府では、男女間における暴力に関する実態を把握するため、3年毎に調査を実施しています。今回の調査では、平成26年12月に、全国の20歳以上の男女5,000人を対象に無作為抽出によるアンケート調査を実施しました。3,544人(女性1,811人、男性1,733人)から回答がありました。
前回(平成23年度)の調査と今回の調査を比較してみると、配偶者からの暴力を受けたことが「何度もあった」と回答した人が、前回の調査では女性10.6%、男性3.3%、今回の調査では女性9.7%、男性3.5%となっており、被害状況に大きな変化は見られず、依然として被害が深刻な実態にあることが確認されました。
調査結果の概要は次のとおりです。調査結果の全文は、男女共同参画局ホームページ(http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h26_boryoku_cyousa.html)でご覧になれます。
1 配偶者からの被害経験
- 女性の9.7%、男性の3.5%が何度も被害を受けている
- 被害を受けた女性の44.9%はどこにも相談していない
- 配偶者(事実婚や別居中の夫婦も含む)から、“(1)身体的暴行”(例えば、なぐったり、けったり、物を投げつけたり、突き飛ばしたりするなどの身体に対する暴行)、“(2)心理的攻撃”(例えば、人格を否定するような暴言、交友関係や行き先、電話・メールなどを細かく監視したり、長期間無視するなどの精神的な嫌がらせ、あるいは、自分もしくは自分の家族に危害が加えられるのではないかと恐怖を感じるような脅迫)、“(3)経済的圧迫”(例えば、生活費を渡さない、貯金を勝手に使われる、外で働くことを妨害されるなど)、“(4)性的強要”(例えば、いやがっているのに性的な行為を強要される、見たくないポルノ画像等を見せられる、避妊に協力しないなど)のいずれかの被害を受けたことがある人は、女性23.7%、男性16.6%となっている。(図1)
- “(1)身体的暴行”“(2)心理的攻撃” “(3)経済的圧迫”“(4)性的強要”のいずれかの被害経験を「何度もあった」という人は、女性9.7%、男性3.5%となっている。
- 配偶者から何らかの被害を受けたことがあった人に、被害の相談をしたか聞いたところ、「だれにも(どこにも)相談しなかった」が女性44.9%、男性75.4%となっている。
2 交際相手からの被害経験
- 女性の19.1%、男性の10.6%に被害経験
- 交際相手から、“(1)身体的暴行” “(2)心理的攻撃”“(3)経済的圧迫” “(4)性的強要”のいずれかの被害を受けたことがある人は、女性19.1%、男性10.6%となっている。(図2)
- 交際相手からの被害を受けたことがあった人に、被害の相談をしたか聞いたところ、「だれにも(どこにも)相談しなかった」が女性39.3%、男性55.0%となっている。
- 交際相手からの被害による生活上の変化があったのは、女性55.5%、男性33.0%となっている。
3 特定の異性からの執拗なつきまとい等の経験
- 女性の10.5%、男性の4.0%に被害経験
- ある特定の異性から執拗なつきまといや待ち伏せ、面会・交際の要求、無言電話や連続した電話・メールなどの被害にあったことがある人は、女性10.5%、男性4.0%となっている。
- 被害にあった人に、その被害によって命の危険を感じたことがあるかを聞いたところ、「感じた」は女性28.9%、男性15.7%となっている。
4 異性から無理やりに性交された経験(女性のみ)
- 被害経験は6.5%
- これまでに異性から無理やりに性交されたことがあるかを聞いたところ、「1回あった」が3.7%、「2回以上あった」が2.8%で、被害経験のある人は6.5%となっている。(図3)
- 異性から無理やりに性交されたことがあった人に、加害者との関係を聞いたところ、「配偶者・元配偶者」が19.7%、「交際相手・元交際相手」が28.2%、「まったく知らない人」が11.1%となっている。(図4)
- 異性から無理やりに性交されたことがあった人に、被害の相談をしたか聞いたところ、「どこ(だれ)にも相談しなかった」が67.5%となっている。
関係省庁によるストーカー総合対策の取りまとめについて
【安全・安心を脅かすストーカー】
ストーカー事案は女性の安全・安心な暮らしを脅かすものであり、「すべての女性が輝く社会」を実現する上で克服すべき重要な課題です。一方、警察庁によると、平成26年中のストーカー事案の認知件数は22,823件で、ストーカー行為等の規制等に関する法律施行以降最多となっており、また、内閣府が行った調査(前掲「男女間における暴力に関する調査」)によると、女性の約10人に1人が、特定の異性からの執拗なつきまとい等の経験を有しているという結果が出ています。こうした被害の実態や状況を踏まえ、「すべての女性が輝く政策パッケージ」(平成26年10月10日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)において、ストーカーの総合対策を平成26年度内を目途に取りまとめるとされたところです。
本総合対策は、これに基づき、関係省庁において、早急に行うべき対策を取りまとめたものであり、3月27日に公表しました。
【ストーカー総合対策の概要】
ストーカー総合対策はストーカー被害者支援の取組や加害者対策の取組を推進するため、6つの大きな柱から構成されています。
○ ストーカー事案に対応する体制の整備
被害者の安全の確保を最優先とした警察における対処体制の強化や、関係機関における被害者への切れ目のない適切な支援体制を構築するための相談員の質の向上、関係機関の連携強化などの施策が盛り込まれています。
○ 被害者等の一時避難等の支援
一時避難場所の確保や長期的避難のための住宅、就業等の情報提供などの施策が盛り込まれています。
○ 被害者情報の保護
被害者の情報の保護や、加害者による被害者の住所の探索防止などの施策が盛り込まれています。
○ 被害者等に対する情報提供等
ストーカー被害の未然防止、被害拡大防止の観点から、相談窓口の周知や被害者支援情報等の積極的な提供を行うことなどの施策が盛り込まれています。
○ ストーカー予防のための教育等
ストーカーの被害者にも加害者にもならないための教育啓発の推進や指導的立場にある教職員を対象とした研修の充実等の施策が盛り込まれています。
○ 加害者に関する取組の推進
加害者に対する迅速・的確な対応や加害者更生に関する取組の推進などの施策が盛り込まれています。
こうした対策を関係省庁等が連携し、着実に推進していくことで、ストーカー被害の未然防止と適切な被害者支援に繋がっていくことが期待されます。