「共同参画」2014年 5月号

「共同参画」2014年 5月号

連載 その2 女性首長から

男女共同参画の子育てコミュニティタウン新宿を目指して
新宿区長 中山 弘子

新宿区章


新宿区は江戸以来の歴史と伝統を持ち、時代の先端を走ってきた多様性を力とするまちです。人口32万人のうち1割を外国人が占め、幅広い年代の未婚の単身者も多く住むまちです。また新宿区は多くの人々が働き、学び、訪れる賑わいのまちです。こうした新宿区の持続可能性を高めるため、区長就任以来一貫して、少子高齢社会に的確に対応するための子育て支援や高齢者施策の充実とともに、文化創造型産業の振興など活気あるまちづくりに取り組んでいます。

「暮らしやすさも賑わいも一番のまち新宿」を目指すためには、区民・事業者など誰もが当事者としてそれぞれの力を活かし、多様に協働することと併せ、男女ともに個性と能力を発揮し、責任も分かち合う「男女共同参画」が不可欠です。新宿区では、平成16年に「新宿区男女共同参画推進条例」を制定するとともに、「新宿区第二次男女共同参画推進計画」(平成24年度〜29年度)を策定し、「ワーク・ライフ・バランスの推進」や「多様な生き方を認め合う社会づくり」の取り組みに力を入れています。

共働き世帯の増加など人々の生き方が多様化している一方で、働き方や子育て支援などの社会的基盤は必ずしもこうした変化に対応できていない現実や、職場や家庭、地域では、男女の固定的な役割分担意識が残っていることなどは大きな課題です。

私は区長就任以来、男女が働きながら子育てできる環境の整備、保育園待機児童解消対策などに取り組んできました。これは、人口減少社会における明日への投資ともいえるものです。全国に先駆けて子ども園を開設するなど、多様な子育てニーズに応える施策を展開し、0歳から就学前の子どもの数に対する保育定数は40%を超え全国でもトップクラスとなっています。また、平成15年から5年毎に実施している次世代育成支援に関する調査で、新宿区を「子育てしやすいまち」と思う人の割合が大きく増加しているという嬉しい結果も出ています。

また新宿区では、平成19年度に他に先駆けてワーク・ライフ・バランス推進企業認定制度を立ち上げ、職場における子育て支援、地域活動支援、介護支援及び働きやすい職場づくりを推進しています。また、平成21年度からは、優良企業表彰を実施し、取り組みを応援するとともに、広く情報発信を図っています。さらに、男性の育児・介護サポート企業応援事業では、区内中小企業に対して奨励金を支給するなど特色ある取り組みを行っています。

このような取り組みの結果、新宿区で生まれる子どもの数が平成21年以降2000人を超え、平成24年に2324人と、最も少なかった平成8年の1638人から4割も大きく増加しました。男女ともに子育てに関わり、地域の支えあいの子育てから新しい出会いと世代を超えた交流が生まれる男女共同参画のまちを目指していきたいと考えています。

さて、新宿区は多くの文学者が暮らし活躍したまちです。夏目漱石生誕150周年の2017年に向け、区では文豪終焉の地に夏目漱石記念館の整備を進めています。さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場も区内にあります。ぜひ、皆様に新宿の多様な魅力を楽しんでいただけるよう願っています。

新宿区長 中山 弘子
なかやま・ひろこ/1945年生まれ/1967年日本女子大学文学部卒業。1967年東京都入都、生活文化局消費生活部長、清掃局作業部長、人事委員会事務局長、監査事務局長を歴任。2002年11月、23区初の女性区長として新宿区長に就任、現在3期目。