NEWSLETTER(第3号)

1 (特集)第44回国連婦人の地位委員会及び女性2000年会議準備委員会

国連婦人の地位委員会(以下CSW)の第44回会議が平成12年2月28日から3月2日までの日程で、また本年6月に開催予定の「女性2000年会議」の準備委員会(以下準備委員会)が3月3日から3月17日までの日程で、ニューヨークの国連本部で開催されました。

会議には、我が国を含む45カ国の委員国のほか、委員国以外の国連加盟国、国際機関、NGO等の参加がありました。我が国からは、目黒依子婦人の地位委員会日本代表、梅田邦夫国連代表部公使のほか、総理府男女共同参画室、外務省、文部省、厚生省、農林水産省、労働省、人事院から17名が出席しました。

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(役員)

今次第44回CSWの冒頭において、新たに議長及び副議長から成る役員(以下ビューロー)が2年の任期で選出されました。議長はクロアチア、副議長はデンマーク、チリ、セネガル及び我が国です。

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(主な議題)

第44回CSWでは、北京行動綱領の実施状況に関する包括的レビュー及び評価についての各国ステートメントや一般討議が行われました。また、4本の決議件(1) 武力紛争下での女性と子供の救済、2) アフガニスタンの女性・女児、3) 女性と女児とHIV/AIDS、4) パレスチナ女性)が採択されたほか、次回会議のテーマ(1) 女性・女児とHIV/AIDS、2) ジェンダーと全ての形態の差別、特に人種主義・人種差別・排外主義及び関連する不寛容)が決定されました。準備委員会では、主に「女性2000年会議」に関する「日程・進め方等の組織事項」、「会議に参加できるNGOの参加資格の拡大及び参加形態」、「会議での採択予定文書の内容」が検討され、その結果、NGOの参加資格の拡大等、組織事項についての決定がされた他、採択予定文書である政治宣言(案)が合意に達しました。

この他、第44回CSW及び準備委員会で、各々1回ずつパネルディスカッションが開かれました。

それぞれの詳細は次ページ以降をご参照下さい。

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CSWは例年2週間の会期で、北京会議以降は行動綱領の12重大問題領域に沿って各国の女性の現状や施策についてレビュー等を行っていましたが、本年は通常会期としてのCSWは4日間に短縮され、その後は女性2000年会議の準備委員会として機能しました。(CSWの詳細についてはNEWS LETTER2号をご覧下さい)


(1)会議日程

第44回CSW

2月28日(月) 開会、議題・事務手続き採択、議長・副議長の選出、通報作業委員会メンバーの指名、一般討議「第4回世界女性会議に関するフォローアップ」、「北京行動綱領の実施状況に関する包括的レビュー及び評価」

2月29日(火) 一般討議(継続)

3月1日(水) パネルディスカッション及び討議「女性または男女平等に影響を与える新しい問題の台頭、その傾向及び解決のための新たなアプローチ」

3月2日(木) 決議案・第45回CSW議題案採択、報告書採択、閉会

準備委員会

3月 3日(金) 開会、議題・事務手続き採択、一般討議「女性2000年会議への諸準備」

3月 6日(月) パネルディスカッション及び討議「2000年以降の男女平等・開発・平和への展望」

3月 7日(火)~15日(水) 非公式討議

3月16日(木) 国連の祝日(3月11日(土)に振替え)

3月17日(金) 提案・報告書採択、閉会


(2)第44回CSWにおいて採択された決議

今期第44回CSWにおいて次の決議が採択されました。

1)武力紛争下での女性と子供の救済

武力紛争下における女性と子供を救済するために、国際人権法及び北京行動綱領の実施の重要性を確認するもの。

2)アフガニスタンの女性・女児

アフガニスタンにおける女性及び女児の人権侵害を非難するもの。アフガニスタン政府に対し、女性・女児に差別的な法律の廃止等を求めている。

3)女性と女児とHIV/AIDS

どの地域においても女性のHIV感染者が増えていることに言及し、各国政府に感染者の治療・保護や統合的な予防政策の実施等を求めている。

4)パレスチナ女性

占領下におけるパレスチナ女性の置かれた苦境について言及し、イスラエルに対して世界人権宣言やその他の条約を遵守し、難民の返還等、平和に対して取り組むよう求めている。


(3)各国等のステートメントの概要

第44回CSW及び準備委員会の一般討議では、各国政府、国連諸機関、NGO等が自国における女性の現状及び施策の報告や女性2000年会議についての各種提案等を行いました。その概要は以下の通りです。

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◇ 北京行動綱領は男女平等達成のための重要な手段であり、その達成状況を見直し評価することが重要である

◇ 女性2000年会議では、北京行動綱領の成果のレビューを行い、更なる行動を求める文書が採択予定であるが、同文書が残された課題を克服するうえで効果的なものとなることを期待する。

◇ 北京行動綱領の実施には多くの進展が見られる一方、完全実施には依然様々な障害が残されている。北京行動綱領の更なる実施には、施策の目標設定や継続的モニタリングを含め、政治的意志が不可欠である。

◇ 主な成果として挙げられたこと:ジェンダーの主流化の高まり、貧困や女性に対する暴力に関する世界的な関心の高まり、女性の非識字率の低下、妊産婦死亡率の減少、女性の地位向上の制度的仕組みの強化等。

◇ 達成を阻む主要因として挙げられたこと:グローバリゼーションのマイナスの影響、情報・通信技術へのアクセスに関する途上国・先進国の格差の拡大、HIV/AIDS、貧困、固定的男女役割意識、武力紛争等。

◇ 主な課題として挙げられたこと:政府とNGOとの協力、ジェンダーの一層の主流化、男性の関与、国際開発への各国支援等。

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日本政府代表スピーチ

日本のステートメントでは、少子高齢化、国内経済活動の成熟化等、急速な社会経済情勢の変化に対応するため、男女共同参画社会の実現は緊急課題であると位置づけ、そのために実施している主な施策を紹介したほか、男女の固定的役割意識の解消、ジェンダーの主流化、人間の安全保障の観点からの取組等を今後の主要な課題として紹介しました。


(4)パネルディスカッション

第44回CSWでは「女性または男女平等に影響を与える新しい問題の台頭、その傾向及び解決のための新たなアプローチ」、準備委員会では「2000年以降の男女平等・開発・平和」と題するパネルディスカッションがそれぞれ行われ、各テーマ毎に専門家パネリストが個人の立場または機関を代表して発表を行いました。

準備委員会においては、目黒依子上智大学文学部社会学科教授が、4名の専門家パネリストの1人として参加し、「ジェンダーの視点からの人口、出生力、開発:女性のエンパワーメントのための戦略構築」と題した発表を行いました。発表とその後の会場との質疑応答については、終了後、タイのジャーナリストが同教授の発言のインターネットへの掲載を申し出たり、また、韓国、ヴィエトナム、インドネシア、フィリピン等の政府代表団からアジアの女性達が直面する問題を提示してくれたとのコメントがある等、好評を博しました。

ここでは、とくに準備委員会での各パネリストの発言の概要について以下のとおりご紹介します。

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2000年以降の男女平等、開発、平和の展望

(1) 目黒依子氏:上智大学教授

「ジェンダーの視点からの人口、出生力、開発:女性のエンパワーメントのための戦略構築」

(なぜ人口と出生力に注目するか)

1) 高齢化は否定できない世界的傾向である。2) 多くの社会で女性は男性より長生きするため、高齢化社会の問題は女性の問題であるといえる。3) リプロダクティブヘルス・ライツの概念が導入されたことにより、人口政策にジェンダーの視点を主流化させる必要性が認識され、人口統計に関する分析手法の重点がマクロからミクロへと移行しつつあるが、独立した意思決定主体である個人も人口統計というコンテキスト(文脈)の中で生きている以上、必要なのは二つのアプローチをリンクさせることである。4) エンパワーメント戦略を考える好例がこの領域にある。

(女性のエンパワーメントのための戦略)

人口、出生力の分野において、女性をエンパワーするための2つの戦略が見い出せた。その一つは「意図せざる成果」あるいは「副産物」の分析である。これは、女性のエンパワーメントを第一義的な目的とはしない施策・プロジェクトを実施する過程で、意図せずにジェンダーの関係を改善することとなった要因を分析することである。もう一つの戦略は女性の交渉力を確認する方法である。女性はこれまでの性差別的なシステムを変えるために、権力を持つ人々と交渉する必要がある。したがって、この戦略の目的は女性が既に持っている力を確認し、それをより大きな力を獲得するための資源として活用することである。

(結論)

これら2つの戦略は既に報告されているミクロ・データをジェンダーの視点から再度検討することによって、明らかになったものである。マクロの人口統計データのみでは、関連する変数が社会によって異なるので、ジェンダー分析には不十分である。国、コミュニティーの単位での調査が、特定の環境において鍵となる変数を特定する上で必須である。もっとも重要なのは、これらの戦略が、我々の現状に対する認識を喚起し、既存の資源をさらなる女性のエンパワーメントの前進のために使いうるという強みを有しているということである。

(会場との質疑応答)

会場からの「グローバリゼーションの進展に伴い、途上国における女性の生活がさらに悪化している」という発言に対して、目黒教授から「経済開発は必要だが、女性の権利を犠牲にするような形で達成することは望ましくなく、それはいかなる代価を払っても避けねばならない。女性のエンパワーメントと開発へのアプローチには、昨年の第43回CSWのパネルで報告があったジェンダー予算分析のみならず、総合的なジェンダー分析が必要である」とのコメントがあった。

(2)Ms.Ros Alba Todaro Cavallero:エコノミスト サンチアゴ女性学センター研究員

「グローバリゼーション及び貧困に関するジェンダーの諸相」

グローバリゼーションの進展により、女性の地位向上に対する政府の取組が阻害されている。多くの国において経済が再構築される過程で深刻な変化が生じており、政府は経済の再構築による悪影響から女性を保護するための補償的な政策等を実施すべきである。また同時に政府は、全ての人々が自分自身の能力を開発できる機会を保障するために、グローバリゼーションによる肯定的な影響を活用し、また男女平等の知識を普及すべきである。

(3) Ms.Carolyn McAskie:国連人道問題調整局(OCHA)緊急支援コーディネーター

「ジェンダー、人道的救援及び紛争解決」

近年武力衝突の性質が劇的に変化しており、より多くの文民及び救援者が標的になっている。男女ともに紛争による影響を被っているが、紛争は男性と女性に異なる影響を及ぼしている。難民及び強制退去させられた人々の80%が女性及び子どもであり、紛争下では女性は性暴力やレイプにさらされやすい。レイプによるHIV/AIDS等の性感染症も広がっており、またその犠牲者は彼女達自身のコミュニティーから疎外され、周辺化されることになる。したがって、人道支援にジェンダーに敏感な要素を取り入れる必要がある。

(4) Ms.Krisztina Morvai:Eotvos Lorand大学 助教授

「民主化への過渡期の状況におけるジェンダー及び人権」

北京行動綱領の実施状況を評価するためには、まず行動綱領が誰によって行われるべきかを明確にすべきである。例えば、行動綱領では女性に対する女性に対する暴力に取り組むため、法曹・医療関係者等、数種の関係者が行動綱領を実施すべきことになっているが、おそらく殆どの関係者がいまだこの重要な文書の存在すら知らない。通常政府によって国際文書を普及するためのルートは確立されているが、女性の権利に関しては、特に民主的な意思決定手法がいまだ定着していない国においては、かかるルートはいまだ確立されていない。

*各専門家パネリストの発表内容のオリジナル原稿(英語又は西語)は国連のホームページ(http://www.un.org/womenwatch/daw/csw/44sess.htm)に掲載されています


(5)女性2000年会議の進め方について

女性2000年会議の進め方等の組織事項の概要が、今回の準備委員会で決定されました。会期中は、「本会議」と「アド・ホック全体会合」が並行して開催されることになりました。

  • 本会議(Plenary)
    各国代表、国連諸機関等のステートメントが行われます。また、経済社会理事会の協議資格を有するNGOについては、互選され且つ準備委員会による承認を得たNGOがステートメントを行うことができます。
  • アド・ホック全体会合(Ad Hoc Committee of the Whole)
    採択文書「更なる行動と発議(イニシアティブ)に関する文書」について協議を行うほか、上記以外のNGOのステートメントが行われます。

*準備委員会ビューローは、サイド・イベントとしてパネル・ディスカッションの開催を準備中


(6)女性2000年会議における採択文書案の検討

女性2000年会議では2つの文書(1) 政治宣言、2) 更なる行動と発議(イニシアティブ)に関する文書)が採択される予定です。準備委員会では、これらの文書の案について検討しました。

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1) 政 治 宣 言 (案)

(Political Declaration)

女性2000年会議に参加の政府による、北京宣言及び北京行動綱領並びにナイロビ将来戦略の完全実施を確認する簡潔な宣言。

文書の内容としては、先進諸国によるODAの国際目標の達成、女子差別撤廃条約の完全批准、2005年の北京行動綱領及びナイロビ将来戦略の実施状況を評価する会合の開催等が求められています。また、市民社会、とりわけNGOや女性団体の役割及び貢献について言及されるとともに、男女平等を推進するため、ジェンダーの視点の主流化や男性の役割の必要性が強調されています。

今回の準備委員会において、文書案の合意が得られました。6月の女性2000年会議で正式に採択される予定です。

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2) 更なる行動と発議(イニシアティブ)に関する文書(案)

(Further actions and initiatives to implement the Beijing Declaration and the Platform for Action)

北京行動綱領の実施状況を分析するとともに、北京会議以降に出現した新たな問題を踏まえ、行動綱領の更なる実施にむけて各国政府、国連を含む国際機関、市民社会が行うべき行動と発議(イニシアティブ)を提言した、各国の行動指針の参考となるべき文書。各国政府から国連に提出された北京行動綱領実施状況に関する質問状への回答や、世界の5つの地域における準備会議、NGO等からの意見を取り入れ、女性2000年会議の事務局を務める国連婦人の地位向上部(DAW)が案文を作成したものです。その構成及び概要は以下の通りです。

第1章(前文)

北京行動綱領の実施の再確認等

第2章(北京行動綱領12の重大問題領域実施に関する達成及び障害)

北京行動綱領の重大問題領域毎の実施状況の分析。

<成果>ジェンダーの主流化の促進、国内本部機構の強化、関連法令の整備、女性の経済参加の促進等

<障害>紛争、固定的性別役割意識の残存、モニタリング手法の不足、資源不足等

第3章(北京宣言及び北京行動綱領の完全実施に際して直面する障 害や新たな問題)

北京会議以降、新たに台頭してきた問題及びそれらがもたらす影響について分析。例えば、HIV/AIDSが女性に及ぼす影響、高齢化が女性に及ぼす影響、貧困の女性化、グローバリゼーションが女性に及ぼす影響、平和構築における女性の役割(平和の構築・創造・再建)、女性の人身売買、女性の政治参加、政府/NGOのパートナーシップ、男女平等における男性の役割、女性と健康~「女性」に関する健康問題・健康に関する研究とジェンダー、情報技術が女性に与える利点、人口移動等

第4章(北京行動綱領の完全かつ更なる実施と障害克服のための行動と発議(イニシアティブ))

北京行動綱領の完全かつ更なる実施のために、各国政府レベル、国連システム等の国際機関レベル、民間部門及びNGO等の市民社会レベルで講ずべき新たな施策。例えば、全てのレベルにおける女性の参画(達成目標の設定等)、人権保護のための差別的な法律・慣習の撤廃、女性に対するあらゆる形態の暴力への取組(国内法、国際法の実施等)、あらゆる施策へのジェンダーの視点の導入、保健サービスの提供、HIV/AIDSによる女性への影響調査、女性の教育・職業訓練、農村女性の地位向上、平和構築における女性の役割の拡大、ジェンダーに関連した影響調査及び統計の開発、固定的性別役割意識の是正、政府・国際機関・NGOのパートナーシップ等

この更なる行動と発議(イニシアティブ)に関する文書案の検討に準備委員会の大半の時間が費やされましたが、協議は遅々として進まず、合意をみたのはごく一部で、殆どは協議もされないまま時間切れとなりました。

CSWでは協議する際に、大半の参加国が他の国とグループを構成し、そのグループ毎に協議の上、その代表国が全体会議で発言・交渉するのが通例となっています。このようなグループには、日本が属する「JUSCANZ」(加・米・豪・NZ・ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス)、「EU」、百数ヶ国の途上国が名を連ねる「G77・中国」があり、その他、ロシア、トルコ、メキシコ、ヴァチカン市国等がどのグループにも属さず個別で交渉に臨んでいます。今回の準備委員会では大半の時間が各グループ内の協議に終始し、全体での協議は殆ど進みませんでした。これは、たたき台となった案の柱立ての構成が十分に整理されたものではなかったこと、また「G77・中国」内の国々も多様化してきており、グループ内で意見の一致をみることが難しく、会議が「G77・中国」内での意見調整のために頻繁に中断されたこと等の要因も作用したと言えます。

このため、女性2000年会議までに、非公式協議を行い、さらに内容を検討することが予定されています。

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これらの原文(英文)が国連のホームページに掲載されています。ご参照下さい。

1) 政治宣言(案)

http://www.un.org/womenwatch/daw/csw/pd.htm

2) 更なる行動と発議(イニシアティブ)に関する文書(案)

http://www.un.org/womenwatch/daw/csw/outcome.htm


(7)NGOの会議参加資格が拡大される

女性2000年会議に参加できるNGOの資格要件が拡大されました。第54回国連総会(1999年12月)の決議で、同会議へのNGOの参加については経済社会理事会の協議資格を有するNGOか、北京会議(NGOフォーラムではなく政府間会議)に参加を認証されたNGOのみとすると決定されていました。しかし、これら以外のNGOにも参加資格を広げるべきとの主張が出てきたため、準備委員会において再度協議されました。その結果、上記以外のNGOについても、準備委員会ビューロー及び国連事務局で構成される委員会に申請を提出し、認証を得た場合は、同会議への参加が可能となりました。

なお、このNGOの参加資格の問題については、資格要件の拡大を望む先進諸国と拡大に反対する途上国とに深い対立があったところを、準備委員会ビューローのメンバーである我が国国連代表部担当者の粘り強い調整努力の末に、合意が成立したものであり、これに対し各国政府及びNGOから各場面で謝意が表されました。

(NGOの参加形態 )

NGOの参加形態については以下の通りとなりました。

(1)本会議(Plenary)

時間的制約があるため、経済社会理事会の協議資格を有するNGOの代表がステートメントを行う。発言者はNGOより互選され、国連加盟国に承認された者。

(2)アド・ホック全体会合(Ad Hoc Committee of the Whole) 女性2000年会議に参加が認証されたNGOはステートメントを行うことができる。

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“北京プラス5ホスト委員会”設立

女性2000年会議に参加できないNGOや個人の要望に応えるため、ホスト国であるアメリカが“北京プラス5ホスト委員会(The Beijing+5 Host Committee)”を設立しました。同委員会は40以上のNGOや財団から構成されており、公的機関との協力のもと、同会議に参加できないNGOや個人への便宜供与や各種イベントを行う予定です。わずか数ヶ月前に設立したばかりで目下準備中のところ、詳細は未定ですが、準備委員会の席上でアメリカ政府代表団から、主なイベントの計画案について以下の通り紹介がありました。(3月3日現在)

  • 6月5日(月)開会式(場所未定/一般公開)
  • 6月8日(木)サテライト(衛星中継)会議
  • 6月8日(木)祝賀の夕べ(於NYエリス島/入場券要)

* 女性2000年会議開催中、NY市内のUSカスタムズハウス(マンハッタン南部)が会議に参加できないNGOに開放されるとともに、そこで本会議の模様が放映される予定(350席)

準備状況は刻一刻と変わっています。最新情報及び詳細については、同委員会のホームページに掲載されています。ご関心のある方は、直接同委員会までお問い合わせください(連絡先も近日中にホームページに掲載予定)。なお、会期中にNYで開催されるその他のイベントの情報についても、ホームページに掲載されていますので、ご参照下さい(主催するNGOのサイトにリンクしています)。

NGOオルタナティブ・レポートの統合

各国政府の北京行動綱領実施状況に関する質問状への回答に対し、世界中のNGOが組織単位、国単位、地域単位でオルタナティブ・レポートを作成してきました。CONGOは、それら様々なオルタナティブ・レポートを取り纏め、各国政府による報告を補足するものとして女性2000年会議に提出することを目指し、現在世界中のオルタナティブ・レポートを収集しています。

また、女性2000年会議に先立ち、NGOワーキング・セッションが6月2日、3日に行われます(6月3、4日から変更されました)。ワーキング・セッションでは、NGOオルタナティブ・レポートの地域別の発表及び世界的な傾向の取り纏めが行われます。なお、参加は女性2000 年会議に参加できるNGOに限定しています。

*詳細な情報はCONGO(Conference Of Non-Governmental Organizations in consultative relationship with United Nations:経済社会理事会の協議資格を有するNGOの連合)のホームページをご参照下さい。


(8)北京行動綱領の実施状況の見直しと評価に関する事務総長報告(草案)

1999年12月、国連総会は2000年に行われる女性2000年準備委員会までに、北京行動綱領の実施状況の見直しと評価に関する総合的な報告書を作成するよう国連事務総長に要請しました(総会決議54/142)。この要請を受け、国連事務総長は、国内行動計画、女子差別撤廃条約への各国政府の報告書、北京行動綱領の実施状況に関する質問状への各国回答、国連の関連するフォーラム等における政府代表団のステートメント、地域委員会のレポート、その他、最近の大きな国連の会議等の全ての関連情報を参考にし、「北京行動綱領の実施状況の見直しと評価に関する事務総長報告(Report of the Secretary General on review and appraisal of the Implementation of the Beijing Platform for Action)」の草案を作成し、今回の準備委員会に会議資料(E/CN.6/2000/PC/2)として提出しました。

この報告書は3部からなり、約200ページの大部となっています。第1部では北京会議の背景及び北京行動綱領の実施状況の傾向の概観が説明されています。第2部では北京行動綱領の12重大問題領域別の達成状況及び北京行動綱領で要請されていた制度的・財政的措置の取組状況の分析が、第3部では、北京行動綱領の完全実施に影響を与える、北京女性会議以降に台頭した新たな問題や世界的傾向の分析が記載されています。ここでは、北京行動綱領の実施状況の傾向の概観について、その結論部分を抜粋して以下にご紹介します。なお、原文(英語)は国連のホームページ(http://www.un.org/womenwatch/daw/csw/ecn6-2000-pc2.pdf)に掲載されておりますので、ご参照下さい。

北京行動綱領の実施状況の傾向の概観

  1. 各国政府から寄せられた北京行動綱領の実施状況に関する質問状への回答からは、グローバリゼーションの多面的な影響による課題が主要な問題として浮かび上がる。世界の経済関係の再編、国境を越えた経済の意思決定構造および国際金融の新しい構造、そしてその結果生じる金融危機などは、「後発開発途上国をはじめとする政府が北京行動綱領実施のコミットメント(誓約)に財源や人材を充当できるか否か」という深刻な課題を突きつけている。引き続き国家予算の多くを債務返済に充てなければならないという大きな問題を抱え、公共サービスへの支出削減を余儀なくされている加盟国も多い。こうした状況は、北京会議その他男女平等の促進に向けた国連会議で採択されたコミットメント(誓約)を各国が実施するための財源を確保しなければならないという、新しい課題を国際社会に突きつけている。
  2. 北京行動綱領のコミットメント(誓約)を実施するための国家財源の不足や開発支援の減少に言及した例が多かったことから、政府のみならず、NGOや民間部門、国際社会のパートナーが既存の資源に関して革新的な配分法を採用することが急務である。予算支出が男女それぞれに及ぼす影響を明らかにするには、国家安全保障や国防などの国家予算に関するジェンダー分析を実施する必要がある。男女平等を視野に入れた予算決定と、ジェンダーに敏感な資源活用を確実なものにするためには、こうした分析が欠かせない。
  3. あらゆる地域の政府が、女性の公への進出を促す取組が、家庭責任によって妨げられたことを報告していた。男女による家庭責任の分担の欠落は、公の世界での女性の地位向上を妨げる深刻な要因として解決していく必要がある。公営の託児所といった、家事や家族支援サービスを提供するだけの資源がない国では、男性にもっと家事や育児の責任を持たせるような優遇策を設ける必要がある。男性の役割、女性の役割を取り巻く根強い固定概念については、北京行動綱領実施の障害であると加盟国から再三指摘されており、これもまた優先事項である。
  4. 報告書では、多面的なアプローチの重要性、開発を可能にする政策環境の重要性、男女平等の具体的プログラムがあらためて強調されていた。一つの問題領域の進退が他の問題分野の状況に影響を及ぼす様子は、もっと全体的なアプローチが必要であることをものがたっている。例えば、「貧困の悪化につれて子供の労働に対する家計の依存度が増す」という事実は、法律や政策が就学に効果があるということに他ならないだろう。
  5. 教育、保健、貧困、人権以外の全ての分野で明確な期限目標が設定されていないということは、政府とNGOが協力し、重大問題領域全てについて現実的な目標および進捗状況を測る方法を考える必要があることを示している。例えば、「貧困の女性化」を考察しているにもかかわらず、男性と比較した女性の貧困の程度を測定する方法論がまだ十分ではない。無償の家事労働の測定・定量について調べ始めたという報告も数多くあった。得られた知識を官民両部門の政策に生かしていくのが次の重要な一歩である。
  6. HIV/AIDS のジェンダー的側面にはさらに注目を要する。女性の罹患率の増加は世界的に重要な問題となっており、女性がコントロールする感染防止法を開発する必要がある。政策や戦略を立てる際、世界的に看護の責任が女性の肩にかかっているという現実も考慮する必要がある。
  7. 全体として、北京行動綱領実施の分析を見る限り、国内レベルでも国際レベルでも、政治構造における意思決定への平等な参画に関しては目立った進展はなかったようである。大半の国では、依然として意思決定層に女性代表者は少ない。公共部門の意思決定層に「必要十分な人数の女性」が加わった国でも、大手企業の取締役会に女性の姿はほとんどない。経済界のこうした地位に女性が平等に参加できるように、進捗状況をさらに慎重に監視していく必要がある。
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