第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

本編 > 2 > 第1部 > II > 第5分野 > 第3節 子供、若年層に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

第3節 子供、若年層に対する性的な暴力の根絶に向けた対策の推進

1 子供、若年層に対する性犯罪・性暴力の対策については、「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」や「子供の性被害防止プラン2022」(令和4年5月20日犯罪対策閣僚会議決定)に基づいて、各般の対策に取り組んできたが、依然、弱い立場に置かれた子供・若者が、性犯罪・性暴力の被害に遭う事案が後を絶たない状況を踏まえ、令和5(2023)年7月、「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」(令和5年7月26日「性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議」・「こどもの性的搾取等に係る対策に関する関係府省連絡会議」合同会議)を取りまとめ、対策の強化を図っている。また、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月2日閣議決定)において、教育・保育業界における先進事例の周知や業界のガイドライン(指針)の作成支援など、同パッケージに基づく対策を加速することとし、その実施を進めている。【内閣府、警察庁、こども家庭庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、観光庁】

2 文部科学省では、内閣府と共同で作成した「生命(いのち)の安全教育」の教材等を活用したモデル事業を36校(園)で実施した。また、教員向け研修動画や児童生徒向け動画教材の活用等の周知、指導モデルを基にした実践事例集の作成・公表、全国フォーラムの開催等、全国の教育現場において「生命(いのち)の安全教育」に取り組むことができる環境を整備している。【文部科学省、関係府省】

3 学校、児童福祉施設等の子供と直接接する業務を行う施設において、子供が相談しやすい環境を整備し、性的虐待の兆候を把握して児童相談所等と的確に連携するための研修・広報啓発を実施している。あわせて、二次被害の防止及び円滑な専門機関への相談のために、最初に性的虐待の被害を打ち明けられる可能性がある保護者、保育士、教師など子供に関わる大人に対して、初動対応に関する啓発を推進している。【こども家庭庁、法務省、文部科学省】

4 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者の児童相談所等への通告義務を周知徹底するとともに、児童相談所、警察等においては、性的虐待の認知・把握に努め、被害児童の保護、被害児童に配慮した聴取(代表者聴取)、加害者の検挙と適切な処罰等に向けた必要な施策を実施している。【警察庁、こども家庭庁、法務省、文部科学省】

5 若年女性を対象に、婦人相談所(女性支援新法における女性相談支援センター)等の公的機関と民間支援団体とが密接に連携し、夜間の見回り・声かけ、インターネット上での相談などのアウトリーチ支援や居場所の確保、相談対応、自立支援等の支援を行っている。【厚生労働省】

6 児童相談所やワンストップ支援センター等において、性的な暴力被害を受けた子供に対する被害直後及びその後の継続的な専門的ケアや支援が実施されるよう取組を進めている。あわせて、専門的知識を備えた人材の育成を推進している。

内閣府では、性的な暴力被害を受けた子供に対する被害直後及びその後の継続的な専門的ケアや支援が実施されるよう、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を提供した。【内閣府、警察庁、こども家庭庁、法務省、文部科学省】

7 内閣府では、被害児童の負担を軽減しつつ、適正な診断・治療等ができるよう、医療関係者等を対象としたオンライン研修教材を提供するとともに、研修を実施した。【内閣府、こども家庭庁】

8 被害児童の学習や通学など社会生活が妨げられないよう、学校で教職員が相談に乗ったり、関係機関と連携したりするなどの適切な措置を講じている。【文部科学省】

9 通学路や公園等における防犯・安全対策を強化し、性犯罪の前兆となり得るつきまとい等の行為に対する捜査・警告を的確に実施している。【警察庁】

10 文部科学省では、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年法律第57号)に基づき、児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状が失効又は取上げとなった「特定免許状失効者等」に関する情報を記録したデータベースを構築し、国公私の別や常勤・非常勤等の任用形態等によらず、教育職員等を任命又は雇用しようとするときは、必ず当該データベースを活用する義務があること等について周知を行っている。

こども家庭庁では、児童生徒等に対してわいせつ行為を行った保育士について、児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の適切な運用がなされるよう、法改正の趣旨や基本的な指針等について、各都道府県等への周知を行った。【こども家庭庁、文部科学省】

11 令和6(2024)年3月、第213回通常国会に「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案」を提出した。【こども家庭庁、法務省、文部科学省、経済産業省、関係府省】

12 「子供の性被害防止プラン20224」に基づき、政府全体で児童買春・児童ポルノ等の対策を推進している。【内閣府、警察庁、こども家庭庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、観光庁】

13 アダルトビデオ出演被害を含め、若年層の性暴力被害に関し、実態把握や取締り等の強化、教育・啓発の強化、相談体制の充実、保護・自立支援の取組強化等の施策を総合的に推進している。【内閣府、警察庁、関係省庁】

14 4月の「若年層の性暴力被害予防月間」においてSNS等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を展開した。(再掲)【内閣府、関係省庁】

15 子供に対する性的な暴力根絶に向けて教育・学習、積極的な広報啓発を実施している。特に、コミュニティサイトやSNS等を通じた性犯罪・性暴力の当事者にならないための教育・学習、啓発活動、子供及びその保護者のメディア・リテラシーの向上等の充実を図っている。

こども家庭庁では、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号)及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第5次)」(令和3年6月7日子ども・若者育成支援推進本部決定。以下「第5次青少年インターネット環境整備基本計画」という。)に基づき、子供がインターネットを上手に、安全に使うスキルを習得するため、青少年の保護者向けのリーフレットを作成し、都道府県等の関係機関に配布するとともに、こども家庭庁ホームページに掲載するなど、子供及びその保護者のメディア・リテラシーの向上に努めた。

また、7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」において、「インターネット利用におけるこどもの犯罪被害等の防止」を最重点課題に掲げ、関係省庁、地方公共団体、関係団体等の協力を得て、青少年の非行・被害防止のための国民運動を展開した。

警察庁と文部科学省の共同により、具体的な犯罪被害事例や犯罪手口を盛り込んだリーフレット「守りたい 大切な自分 大切な誰か」を作成し、両省庁のウェブサイトにおいて公開した。また、教育委員会等と連携して児童生徒や保護者へ周知するとともに、各都道府県警察に対し各種広報啓発活動における活用を依頼した。

総務省は、関係省庁と連携の下、性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護し、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、フィルタリングの普及促進やインターネットの適切な利用等に関する啓発活動等を行っている。具体的には、子供たちのインターネットの安全な利用に係る普及啓発を目的に、児童・生徒、保護者・教職員等に対する学校等の現場での出前講座(e-ネットキャラバン)や保護者及び教職員向けの上位講座(e-ネットキャラバンPlus)を、情報通信分野等の企業・団体や文部科学省と協力して全国で開催した(令和5(2023)年度は全国2,166か所で開催)。

また、専門家からのヒアリングを通じて、インターネットに係る実際に起きた最新のトラブル事例を踏まえ、その予防法等をまとめた「インターネットトラブル事例集」を平成21(2009)年度より毎年内容を更新して公表し、普及を図っている。

文部科学省では、ネットモラルキャラバン隊を全国3か所で開催し、保護者等を対象に情報モラルやネットとの関わり方、家庭でのルール作り等の啓発を行った。【 内閣府、警察庁、こども家庭庁、総務省、文部科学省、経済産業省】

16 法務省の人権擁護機関では、SNS(LINE)を活用した人権相談を推進している。【法務省】

4 「子供の性被害防止プラン(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)2022」(令和4年5月20日犯罪対策閣僚会議決定)