第7節 人身取引対策の推進

本編 > II > 第1部 > 第8章 > 第7節 人身取引対策の推進

第7節 人身取引対策の推進

「人身取引対策行動計画2014」(平成26年12月犯罪対策閣僚会議決定)に基づき,関係閣僚から成る「人身取引対策推進会議」を随時開催するなどして,関係行政機関が緊密な連携を図りつつ,人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を政府全体で推進している。平成29年5月,人身取引対策推進会議の第3回会合を開催し,我が国における人身取引による被害の状況や,関係省庁による人身取引対策の取組状況等をまとめた年次報告「人身取引対策に関する取組について」を決定・公表するとともに,引き続き,人身取引の根絶を目指し,「人身取引対策行動計画2014」に基づく取組を着実に進めていくことを確認した。また,同年6月の「外国人労働者問題啓発月間」に合わせて政府広報テレビ番組及びインターネットテキスト広告により,7月30日の「人身取引反対世界デー」及び11月の「女性に対する暴力をなくす運動」期間に合わせてSNSにより,我が国における人身取引の実態,人身取引の防止・撲滅,被害者の保護に係る取組に関する広報を実施し,被害に遭っていると思われる者を把握した際の通報を呼びかけた。

内閣府では,人身取引対策の啓発用ポスター及びリーフレットを作成し,地方公共団体,空港・港湾,大学・高等専門学校等,日本旅行業協会,国際移住機関(IOM),その他関係機関に配布し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律においては,人身売買の罪等を犯した者を風俗営業の許可の欠格事由とするとともに,接待飲食等営業を営む者等に接客従業者の生年月日,国籍,就労資格等の確認を義務付けている。警察では,同法を適切に運用するとともに,様々な法令を適用して人身取引事犯の取締りを推進している。また,被害女性の保護等の総合的な対策を,関係省庁,関係団体と連携して推進する一方で,外国捜査機関等との情報交換の緊密化や連携強化に取り組んでいる。

警察庁では,毎年,人身取引被害者の発見を目的として,警察等に被害申告するように多言語で呼び掛けるリーフレットを作成し,関係省庁や在京大使館,NGO等に配布するとともに,被害者の目に触れやすい場所に備え付けている。また,平成29年3月からホームページ上でも同リーフレットを周知し,警察へ通報を呼び掛けている。さらに,在京大使館,関係NGO等との間で,コンタクトポイントを設置して人身取引に関する情報交換を行っている。また,警察庁の委託を受けた民間団体が,市民から匿名による事件情報等の通報を電話又はインターネットで受け付け,これを警察に提供して捜査等に役立てようとする匿名通報ダイヤルを運用し,少年の福祉を害する犯罪や人身取引事犯の被害者となっている子供や女性の早期保護等を図っている。

法務省入国管理局では,人身取引が重大な人権侵害であり犯罪であるとの認識の下,被害者の法的地位の安定を図っている。

厚生労働省では,婦人相談所が実施する人身取引被害女性の保護において,通訳雇上げのほか,他の法律・制度が利用できない場合には,被害女性の医療に係る支援も行っている。また,平成22年度から,通訳・ケースワーカー(外国人専門生活支援者)の派遣を民間団体等に依頼し,婦人保護施設に入所する人身取引被害女性に対する支援の強化を図っている。

国立女性教育会館では,独立行政法人国際協力機構からの委託を受けて,人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携,日本及び各国の人身取引対策について理解を深めることを目的とした課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」を実施した。また,人身取引に関するパネルやブックレットの貸出を行うとともに,ホームページにおいて広く情報提供を行っている。

我が国は,人身取引に関連した国際的な取組に積極的に参画している。「人身取引対策行動計画2014」に基づき,人身取引被害の発生状況の把握・分析及び諸外国政府等との情報交換を行うことを目的として,人身取引対策に関する政府協議調査団を各国に派遣している。

外務省では,人身取引被害者の安全な帰国及び社会復帰のため,国際移住機関の「人身取引被害者帰国・社会復帰支援事業」への拠出を平成17年度から開始し,被害者の帰国(平成30年2月1日までに総数314人)や帰国後の社会復帰を支援している。

法務省の人権擁護機関では,平成29年度から「外国語人権相談ダイヤル」の対応言語を拡大し,「外国人のための人権相談所」を50か所の全法務局・地方法務局に拡充している。また,法務省の人権擁護機関が実施する調査救済において,緊急避難措置として人身取引被害者に対する宿泊施設の提供を行う制度を運用している。