第1節 防災分野における女性の参画拡大など男女共同参画の推進

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第12章 男女共同参画の視点に立った防災・復興体制の確立

第1節 防災分野における女性の参画拡大など男女共同参画の推進

1 防災に関する政策・方針決定過程への女性の参画拡大

平成24年6月の災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の改正では,地域防災計画の策定等に当たり,多様な主体の意見を反映できるよう,地方防災会議の委員として,充て職となっている防災機関の職員のほか,自主防災組織を構成する者又は学識経験のある者を追加することとされた。内閣府では,地方防災会議における女性委員の割合を高めるために工夫している地方公共団体の事例を紹介するなどして,地方公共団体に対し,地方防災会議への女性の参画拡大や地域防災計画等への男女共同参画の視点の反映を働きかけている。

2 防災の現場における女性の参画拡大

消防庁では,女性消防団員のいない市町村に対して積極的な取組を求めるとともに,様々な媒体を通じて,消防団への加入を呼びかける広報を行った。また,女性消防団員の加入促進に係る好事例を周知し,女性消防団員が活動しやすい環境整備に努めるよう働きかけた。

3 防災施策への男女共同参画の視点の導入

内閣府では,平成25年5月に作成した「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」を踏まえ,防災における女性のリーダーシップを推進するため,防災に関する男女共同参画の視点からの防災研修プログラムを開発し,28年7月に公表した。公表に当たり,各都道府県及び政令指定都市の男女共同参画担当及び防災危機管理担当を対象とした2回の説明会を実施するとともに,本プログラムを活用して全国11地方公共団体において,防災研修を試行的に実施した。こうしたことを通じて,地方公共団体において広く防災に携わる職員が,男女共同参画の視点をもって防災施策を企画立案及び実施できるよう知識の普及等に努めた。平成28年4月に発生した「平成28年(2016年)熊本地震」においては,発災直後に熊本県及び熊本市に対し,「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」等を活用し,避難所運営等において男女共同参画の視点に配慮した措置が講じられるよう通知を発出した。熊本市では,内閣府が作成したチェックシートを用いた避難所スタッフへのヒアリングや,更衣室や授乳室等の表示配布を行うなど,男女共同参画の視点から避難所の環境改善活動等を実施する「避難所キャラバン」を28年4月から同年7月まで実施した。

また,災害対応に当たった地方公共団体や民間団体の,災害に対する事前の備えや発災時の対応,これまでの復旧・復興の対応状況の把握や各種事例の集積を男女共同参画の視点から実施するとともに,男女共同参画の視点から,今後取組むべき課題等を明らかにするため,「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査」を実施した。同調査では,約半数の被災市町村の避難所において男女別トイレや更衣室,授乳室の設置等,男女共同参画の視点からの取組が発災1か月以内に実施されていた一方,「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の被災自治体での認知・活用状況が低かったことなどが明らかとなり,これらを踏まえ,「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の活用や応援・受援体制等における男女共同参画の視点の導入等の提言を含む報告書を取りまとめた。なお,被災地には,乳児用液体ミルクがフィンランドから支援物資として届けられており,被災者からは調乳せずに使用できるため役に立ったなどの声があった。