第3節 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

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第3節 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

1 男女平等を推進する教育・学習

文部科学省では,学校教育において,児童生徒の発達の段階に応じ,社会科,公民科,家庭科,道徳,特別活動等の関係の深い教科等を中心に,学校教育全体を通じて,人権の尊重や男女の平等,男女が共同して社会に参画することや男女が協力して家庭を築くことの重要性についての指導が充実するよう,学習指導要領の一層の周知・徹底を図った。

また,初任者研修や10年経験者研修等各都道府県等が実施する研修において,人権教育や男女共同参画に係る内容が取り扱われることを通じて,学校教育関係者に対して意識啓発を図っている。

社会教育関係者に対し,研修等の機会を通じ男女共同参画の視点に立った取組がなされるよう促すとともに,家庭教育に関する学習講座等において,夫婦共同で子育てをすることの大切さについての意識啓発がなされるよう促している。

国立女性教育会館では,高等教育機関における男女共同参画が推進されるよう,大学等の教職員を対象とした「大学等における男女共同参画推進セミナー」を行った。また,情報提供と情報共有の場として,会館ホームページ上に「大学等における男女共同参画イベント情報」ページ10を開設している。

また,地域での男女共同参画社会の実現を目指し,女性関連施設管理職,地方公共団体職員及び女性団体リーダーを対象に,地域の男女共同参画を積極的に推進するリーダーとして必要な専門知識,マネジメント能力,ネットワークの活用等について学ぶ「地域における男女共同参画推進リーダー研修〈女性関連施設・地方自治体・団体〉」を実施した。また,地域の男女共同参画センター等での事業の企画・運営等に携わる職員を対象に「学習オーガナイザー養成研修」を開催した。

さらに,男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査研究や男女共同参画統計に関する調査研究を実施している。

2 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

子供たちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,文部科学省では,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年1月中央教育審議会答申)を踏まえ,後期中等教育修了までに,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育を推進している。「学校側が望む支援」と「地域・社会や産業界等が提供できる支援」をそれぞれ書き込むことができる機能を持つポータルサイト11の運営を行っているほか,地元企業等と連携した職場体験やインターンシップ及び地元への愛着を深めるキャリア教育を推進する「地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業」,他者と協働しながら新しい価値を創造する力など,これからの時代を生きていくために必要な力を小学校段階から育成する「小・中学校等における起業体験推進事業」を実施している。

また,若者のライフプランニングを支援するため,高校生が進路選択に当たって,就職のみならず結婚,出産,育児などのライフイベントを踏まえた生活の在り方についても総合的に考えることができるよう,調査研究を踏まえ教材を作成し,ライフデザイン構築のための学びを推進している。

さらに,女性が長期的な視点で自らの人生設計(ライフプランニング)を行い,能力を発揮しつつ,主体的に生き方を選択することを支援するため,文部科学省のホームページ12で情報提供を行っている。

あわせて,大学等における編入学の受入れ,社会人入試の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,履修証明プログラムや公開講座の実施等により,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入れ体制の整備を図っている。また,社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会の拡大を目的として,大学等における社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを「職業実践力育成プログラム」(BP)として認定する制度を創設し,平成27年度123課程,28年度に60課程を認定した。

文部科学省では,放送大学の学習環境の整備・充実や学習機会の拡大のための支援をしており,放送大学において平成27年度からオンライン授業の配信を開始し,そのうち男女共同参画の教育・学習を促進するために,国立女性教育会館と連携した講座を作成し,実施するなど,社会人のニーズに対応したキャリアアップ支援の充実に一層努めた。

専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育機関として着実に発展してきており,平成28年5月現在,3,183校に約66万人の生徒が学んでいる。そのうち,約5万5千人が社会人であり,社会人への学習機会の提供において大きな役割を果たしている。また,産業界等と協働し,社会人等が学びやすい教育プログラムの開発・実証を行っている。

そのほか,文部科学省では,学校や一般社団法人,一般財団法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。

また,文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう促している。

中学校及び高等学校においては,性別に捉われることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。高等学校では,進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,求人企業の開拓等を行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細かな就職指導を展開している。

また,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,全ての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

平成23年度からは,社会全体でキャリア教育を推進していこうとする気運を高め,キャリア教育の意義の普及・啓発と推進に資することを目的として,文部科学省,厚生労働省,経済産業省は合同で,「キャリア教育推進連携シンポジウム」の開催も行っている。

経済産業省では,先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」,及び文部科学省と共同で教育関係者と地域・社会や産業界等の関係者の連携・協働によるキャリア教育に関するベストプラクティスを表彰する「キャリア教育推進連携表彰」を実施することで,キャリア教育の普及・推進を図っている。

また,平成17年度に,職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」として整理し,大学教育を通した育成の普及を図っている。19年度より「社会人基礎力」の育成事例を学生自身がプレゼンテーションする「社会人基礎力育成グランプリ」,22年度より大学教職員や企業人事担当者を対象に社会人基礎力の教育手法等について発信・意見交換を行う研修会を実施している。

国立女性教育会館は,女子大学生を対象に,将来,社会や組織を支える女性リーダーの育成を目的として,「女子大学生キャリア形成セミナー」を実施した。

さらに,職員の専門性を生かし男女共同参画や女性教育等に関する積極的な情報提供を行っている。

同会館の女性アーカイブセンターでは,女性教育の振興や男女共同参画社会の形成に向けて顕著な業績を残した女性や女性教育・男女共同参画の行政施策に関する史・資料を収集し,展示や閲覧,所蔵資料データベースである女性デジタルアーカイブシステム13等を通じて提供している。女性教育情報センターでは,「女性情報ポータル“Winet(ウィネット)”」において,事業企画や施策の実施の参考となる人材の情報提供を目的とした「男女共同参画人材情報データベース」を公開し,その充実に努めている。また,女性が様々な新しい分野へチャレンジし,キャリアを形成していくために有用な事例(ロールモデル)や学習支援情報「女性のキャリア形成支援サイト」を提供している。

厚生労働省では,女子学生等が的確な職業選択を行うことができるよう,啓発資料を周知することにより,意識啓発を図っている。また,学生に対して,就職先を選択する際には,「女性の活躍・両立支援総合サイト」等を参考にしながら,企業の女性の活躍状況や女性活躍推進のための取組も考慮するよう,大学等を通じて啓発を図っている。

10国立女性教育会館「大学等における男女共同参画イベント情報」 https://www.nwec.jp/event/college/index.html

11文部科学省 子どもと社会の懸け橋となるポータルサイト http://kakehashi.mext.go.jp/

12文部科学省 男女共同参画の推進のために http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/kyoudou/index.htm

13国立女性教育会館 女性デジタルアーカイブシステム http://w-archive.nwec.jp/il/meta_pub/G0000337warchive