第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

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第2節 非正規雇用における雇用環境の整備

1 同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の取組の推進

(1) パートタイム労働法に基づく均等・均衡待遇の推進と事業主の取組への支援

厚生労働省では,パートタイム労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム労働法」という。)に基づく是正指導や専門家による相談・援助のほか,事業主に対する職務分析・職務評価の導入支援,パートタイム労働者等の雇用管理の改善に取り組む事業主に対して「均衡待遇・正社員化推進奨励金」を支給するなどにより,正社員との均等・均衡待遇の確保,正社員転換の実現のための取組を推進している。


(2) 有期契約労働者,派遣労働者の待遇の均衡等の検討

有期労働契約については,有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めの不安の解消や,有期労働契約であることを理由とする不合理な労働条件といった課題に対処し,働く人が安心して働き続けることができる社会を実現するために,有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に,労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みの導入等を内容とする,労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)が第180回国会で成立した。同改正法は,平成24年8月から一部施行され,25年4月の全面施行に向けて,その内容について周知・啓発を行った。

また,派遣労働者の賃金等の決定に当たり,同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮する旨の規定等が盛り込まれた「労働者派遣法改正法案」が,第180回国会において一部修正の上,成立し,平成24年10月から施行された。同改正法が円滑に実施されるよう,法の趣旨や内容について周知・徹底を図っている。


2 公正な処遇が図られた多様な働き方の普及・促進

有期契約,パート,派遣労働者等の非正規雇用には,企業側の人材ニーズや労働者に様々な働き方の選択肢が提供されるなどの面もあるが,雇用が不安定,賃金が低い,能力開発機会が乏しいなどの課題がある。

こうした課題に対応するため,厚生労働省では,非正規雇用の態様ごとに法制面での必要な施策を講じるとともに,非正規雇用労働者を「人財」として社会全体で育成するため,「非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会」において,その能力開発の強化策を検討し,報告書を取りまとめた(平成24年12月)。

今後,この報告書の方向性を踏まえ,企業内でのキャリアアップの取組に対する総合的な支援を行うなど,具体的な取組を推進することとしている。


3 パートタイム労働対策の総合的な推進

(1) パートタイム労働者の適正な労働条件の確保

厚生労働省では,パートタイム労働法に基づく是正指導や事業主を支援するための「均衡待遇・正社員化推進奨励金」の活用等,正社員との均等・均衡待遇の確保,正社員転換の実現のための取組を推進している。さらに,パートタイム労働法の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)施行3年後の見直しに向け,平成23年9月から,今後のパートタイム労働対策の在り方について労働政策審議会雇用均等分科会で検討を行い,24年6月に建議がなされた。


(2) パートタイム労働者への年金制度の適用

現行の制度では,所定労働時間が正社員の4分の3未満(週30時間未満)の者は,被用者であっても社会保険(厚生年金・健康保険)の適用を受けていない。

被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用することで社会保険における「格差」を是正するとともに,社会保険制度における,働かない方が有利になるような「壁」を除去することで女性の就業意欲の促進を目指す,という観点から「短時間労働者への社会保険の適用拡大」を盛り込んだ「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を第180回国会に提出し,平成24年8月に成立した。

具体的な適用基準は,(ア)週20時間以上(イ)月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)(ウ)勤務期間1年以上(エ)学生は適用除外(オ)従業員501人以上としており,平成28年10月の法律施行後3年以内に,検討を行うこととしている。


4 労働者派遣事業に係る対策の推進

厚生労働省では,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)に基づき,適正な事業運営が確保されるよう派遣元事業主,派遣先等に対し,制度の周知及び丁寧,適切な助言・指導を行うとともに,派遣労働者等からの相談に対応している。