平成23年版男女共同参画白書

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第3節 我が国におけるポジティブ・アクション

1 政府の取組

(1) 府省の取組

(内閣府)

第3次基本計画において「2020年30%」の目標の達成に向けて今後取り組むべき喫緊の課題として実効性のあるポジティブ・アクションの推進を掲げていることを踏まえ,各政党,都道府県,政令指定都市,地方六団体,各種機関・団体等にポジティブ・アクションの導入に向けた要請を行った。

(文部科学省)

科学技術振興調整費の公募プログラムの中に,女性研究者が研究と出産・育児等を両立しつつ研究活動を行える仕組みを支援するもの(女性研究者支援モデル育成)や,女性研究者の採用割合等が低い理学系・工学系・農学系における女性研究者の養成を目的としたもの(女性研究者養成システム改革加速)を設けている。

(厚生労働省)

女性の活躍推進協議会の開催,均等・両立推進企業表彰の実施,ポジティブ・アクションに関する総合的な情報提供,ポジティブ・アクション実践研修の実施,中小企業におけるポジティブ・アクション導入に対する支援など,企業におけるポジティブ・アクションの推進に向けた取組を行っている。

(農林水産省)

ある施策による補助金の支給等について,別の施策によって設けられた要件の達成を求めるクロスコンプライアンスにより,「強い農業づくり交付金」において男女共同参画社会の形成に向けた施策の推進に配慮することを採択に当たっての要件としている。また,農業委員会等における女性の参画促進に向けた働きかけを行っている。なお,農業委員全体に占める女性農業委員の割合は4.9%である(第9図)。

第9図 農業委員に占める女性の割合(都道府県別)
第9図 農業委員に占める女性の割合(都道府県別)

(経済産業省)

株式会社日本政策金融公庫を通じ,女性又は30歳未満か55歳以上であって新たに事業を始める者や事業開始後おおむね5年以内の者に対して,通常の借入者に適用される基準金利よりも低い優遇金利が適用される制度(女性,若者/シニア起業家支援資金)を実施している。

(2) 女性公務員の採用・登用に向けた取組

第3次基本計画において,女性国家公務員の採用及び登用につき平成27年度末までの政府全体の目標を設定している。また,各府省では平成27年度までの目標及び具体的取組を設定した5年間の計画である「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定することとしている。

その他,女性公務員の採用・登用に向けた独自の取組を行っている省庁もある。

外務省では,女性の勤務環境改善のための検討チームを設置し,平成22年6月に提言を取りまとめ,特に優先順位の高い改善策として,業務合理化,育児・介護との両立などに関する10項目をリスト化した。

財務省では,平成22年4月に,財務省改革の一環として省内プロジェクトチームがまとめた提言の中で,女性職員の採用から登用までを意識した育成の着実な推進が不可欠であるとして,女性の採用・登用やワーク・ライフ・バランスについて提言を行っている。

警察庁では,平成23年2月に各都道府県警察の長に対し,女性警察官の採用・登用の拡大に向けた各都道府県警察の計画を策定するよう求める通達を発出した。

(3) 公共調達におけるポジティブ・アクション

男女共同参画やワーク・ライフ・バランスに取り組む企業を国として積極的に評価・支援し,企業における自主的な取組を促進するため,平成22年度から,男女共同参画やワーク・ライフ・バランスに関連する調査等の事業の委託先の選定を一般競争入札の総合評価落札方式によって行う際,男女共同参画等に積極的に取り組む企業に対し加点する取組が行われている。平成22年度には,内閣府5事業,文部科学省1事業,厚生労働省4事業の計10事業について実施された。

2 地方公共団体の取組

(1) 女性公務員の採用・登用に向けた地方公共団体の取組

女性公務員の採用・登用のため都道府県において行われている措置としては,採用目標の設定,管理職登用目標の設定,採用・登用に関する計画の策定,採用・登用担当者の設置,庁内意見交換の実施等がある。平成22年度においては,47都道府県のうち管理職登用目標の設定を14団体で,計画策定を12団体で実施している。

都道府県の課長相当職以上に占める女性割合は6.0%(第10図),市区町村の課長相当職以上に占める女性割合は9.8%であるが,自治体による格差が大きい。

第10図 地方公務員の管理職に占める女性の割合(都道府県別)
第10図 地方公務員の管理職に占める女性の割合(都道府県別)

(2) 公共調達におけるポジティブ・アクション

公共調達に係る入札につき,男女共同参画やワーク・ライフ・バランス等の取組を評価項目の一つとするなどのポジティブ・アクションを実施している自治体の数は,都道府県27,政令指定都市3,市町村14である(平成19年8月時点。内閣府調べ。)。

3 政府・地方公共団体以外による取組

(1) 政治分野における女性の参画拡大に向けた政党の取組

【事例】
(1) A政党では,女性の政治参画を促進するため,党内に設けられた基金から女性の新人候補者に対する支援金の支給が行われている。
(2) B政党では,党則においてクオータ制の原則を明記し,党の役職や議決機関に最低1名は女性が含まれるよう努めている。

(2) 司法分野における女性の参画拡大に向けた取組

【事例】
全国の弁護士等によって構成される団体Cでは,団体Cの中における政策・方針決定過程への女性の参画のための計画を策定しており,計画において団体の運営に関する重要事項等を審議する理事会,会務を担う委員会における女性割合等に関する数値目標が設定されるとともに,「積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の実施」の検討が掲げられている。

(3) 民間企業における女性の参画拡大に向けた取組

【事例】
繊維等の素材事業や医薬医療等のサービス事業を主要業務とするFグループでは,役員等の企業トップ層が欧米企業との事業,取引を通して欧米企業で女性の役員・管理職が活躍している状況を目にし,グローバル企業に成長するためには女性の活躍が不可欠であるとして,新卒採用女性比率30%や,管理職における女性数を3倍に増やすという目標が設定された。また,この女性管理職3倍増計画の一環として,社内の管理職候補の女性を育成するため女性幹部育成強化プログラムが実施された。

(4) 科学技術・学術分野における女性の参画拡大に向けた取組

【事例】
国立大学法人Hでは,平成22年度の文部科学省科学技術振興調整費『女性研究者養成システム改革加速』事業に採択されたプログラムに基づき,理・工・農学分野における常勤女性教員を増加させるため,総長管理定員により,教授・准教授(Principal Investigator)採用のための女性枠を設定し,優秀な女性研究者の応募促進・採用加速に取り組んでいる。

(5) その他の分野における女性の参画拡大に向けた取組

【事例】
日本の労働組合のナショナル・センター(中央労働団体)である団体Lは,男女平等参画の推進のための計画を策定し,計画的に取組を進めている。現在の計画では,団体L本部・構成組織・単位組合・地方連合会のそれぞれが全体として取り組む統一目標として,(1)運動方針への男女平等参画の明記,(2)女性組合員比率と同じ比率の女性役員の配置,(3)女性役員がゼロの組織をなくすという3つを定めている。