平成21年版男女共同参画白書

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第3章 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)

(仕事と生活の調和に関する希望と現実)

全国20歳以上の者に,「仕事」,「家庭生活」,「地域・個人の生活」の優先度についての希望と現実を聞いたところ,全体としては,男女ともに「仕事と家庭生活をともに優先したい」といった複数の活動をバランスよく行いたいとする人の割合が高くなっているが,現実には,「仕事」あるいは「家庭生活」など,単一の活動を優先している人の割合が高い傾向がみられる。とりわけ,男性の20~40歳代では,現実に仕事を優先している人の割合が5割程度と高く,30歳代の女性では家庭生活を現実に優先している人の割合が5割程度となっている。また,60歳代以上では,「家庭生活を優先したい」人の割合が高いが,現実に優先している人の割合はそれ以上に高く,希望と現実の乖離がみられる(第17図)。


第17図 仕事と生活の調和に関する希望と現実
第17図 仕事と生活の調和に関する希望と現実

(女性のライフステージに応じた働き方の希望と現実)

女性の働き方の希望は,結婚・出産や子どもの年齢とともに変化している。子どもが小さな時期は,働きたくないという人もいるが,子どもが中学生以上では9割以上の人が働くことを希望している。働き方も子どもの年齢が上がるとともにフルタイムで働くことを希望する人が増えるなど変化がみられる。一方,現状をみると,働いていない人が希望よりも多く,働き方も多くがパート・アルバイトに集中しており,希望と現実の間にギャップがみられる(第18図)。


第18図 女性のライフステージに応じた働き方の希望と現実
第18図 女性のライフステージに応じた働き方の希望と現実

(男性の育児参画の希望と現実)

厚生労働省「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査結果」(平成20年)によると,育児休業制度を「利用したいと思う」男性の割合は31.8%,育児のための短時間勤務制度を利用したい男性の割合は34.6%となっている。しかし,男性の育児休業取得率をみると,平成19年は1.56%と低く,制度を利用したいと思っているものの実際には利用していない男性が少なからずいることが分かる。

(長時間労働と心身の状況)

20歳代から40歳代の男性が希望に反して仕事優先となっている現状がうかがえるが,総務省「労働力調査」により実際の就業時間の状況をみると,週35時間以上働く者のうち週60時間以上働く者の割合は,30歳代,40歳代が最も高く,約2割の就業者が週60時間以上働いていることになる。

こうした長時間労働は,心身の状況にも影響を与えている。労働者に対する意識調査(労働政策研究・研修機構「日本の長時間労働・不払い労働時間の実態と実証分析」)をみると,「一日の仕事で疲れ退社後何もやる気になれない」と感じることが「いつも」あるいは「しばしば」ある人の割合は,月間の超過労働時間が50時間を超えると約6割から7割となっている。残業が多いほど,仕事で疲れて退社後何もやる気になれないと感じている割合が高いということが分かる。

(企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット)

男女共同参画会議 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会において公表した「企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット」(平成20年)によると,企業が仕事と生活の調和に取り組むことにより,次のように多様なメリットがもたらされるとしている(第19図)。


第19図 企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット
第19図 企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット