平成19年版男女共同参画白書

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第2節 多様な選択を可能にする教育・学習機会の充実

1 生涯学習の推進

(1)リカレント教育の推進

大学等における,編入学の受入れ,社会人特別選抜の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,公開講座の実施等や,大学・大学院や専修学校等の高等教育機関における,産官学の連携による先導的なプログラム開発や講座提供等の推進などにより,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入体制の整備を図っている。

(2)放送大学の整備等

放送大学では,学習センターの充実・整備に取り組み,学生サービスの充実に努めている。また,女性の再チャレンジを支援するリーフレットを作成・配布している。

専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育,専門的な技術教育等を行う教育機関として着実に発展しており,女性の再チャレンジ支援においても大きな役割を果たしている。

また,多様な学習歴や生活環境を持つ者が高等学校教育を受けられるよう,単位制高等学校の充実を図っている。

文部科学省では,学校や民法法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。

(3)学校施設の開放促進等

文部科学省では,地域住民の学習機会や子どもたちの活動拠点(居場所)づくりを推進するため,学校施設を,子どもたちの安全確保に十分配慮しつつ,放課後や週末に開放し,多様な活動の場として提供する取組を支援している。また,地域コミュニティの拠点としての学校施設,クラブハウス,屋外運動場照明,屋内水泳プール,屋外水泳プール,武道場など,学校開放諸施設の整備を行っている。

(4)青少年の体験活動等の充実

青少年が自立した人間として成長することを支援するため,青少年の主体性・社会性をはぐくむ社会体験や自然体験等の体験活動を実施した。また,関係省庁と連携した体験型環境学習等を実施した。さらに,独立行政法人国立青少年教育振興機構に設置されている「子どもゆめ基金」により,民間団体の行う体験活動等に対する助成を行った。

(5)民間教育事業との連携

文部科学省を始めとした府省庁等が連携して実施している「子ども見学デー」においては,平成18年度は,8月23日,24日を中心に,各参加機関の業務説明や職場見学などを行うとともに,民間教育事業者等の協力を得ながら,子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会を提供した。

また,生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供する「全国生涯学習フェスティバル」を開催しており,平成18年度は,10月5日から9日にかけて茨城県において実施した。この事業は,国民一人ひとりの生涯学習への意欲を高めるとともに,学習活動への参加を促進するため地方自治体や民間教育事業者との連携の下に実施されている。

(6)高度情報通信ネットワーク社会に対応した教育の推進

文部科学省では,「エル・ネット」(教育情報衛星通信ネットワーク)を活用し,全国の社会教育施設等に対して,多様な教育・学習情報の提供に努めるとともに,地域の特色あるコンテンツを全国に配信し,地域における学び・交流の場の拡大に努めている。

(7)現代的課題に関する学習機会の充実

文部科学省では,社会教育施設が中核となり,地域における課題を総合的に把握し,課題解決のための企画立案,事業の実施・評価を一体的に行う先駆的な社会教育事業を地域・自治体からの提案を受け実施し,全国的に普及啓発することによって社会教育の全国的な活性化を図った。

(8)学習成果の適切な評価

文部科学省では,様々な学習活動の成果が適切に評価されるような社会の実現に向け,生涯学習施策に関する各種調査研究を行うとともに,大学等において,各大学等の判断により,専修学校での学修などの成果を単位として認定することを促している。

2 エンパワーメント1のための女性教育・学習活動の充実

(1)女性の生涯にわたる学習機会の充実

文部科学省では,女性が学習の成果や様々な経験等をいかして地域社会等において活躍し,多様なキャリアを形成するため,個人個人のニーズに応じた学習相談等を行う相談者の養成,学習や活動に関する情報の一元的・体系的な提供,学習等の成果を活動に橋渡しするための評価の在り方など,女性の多様なキャリアの形成を支援するための方策について実践的な調査研究を行った。

(2)女性の能力開発の促進

文部科学省では,女性が地域社会の方針決定過程へ参画するための資質能力の向上を図るための実践的な研修等を行う事業を推進することにより,女性が社会のあらゆる分野に参画する力をつけるための学習活動の支援を行っている。

また,専修学校における女性の再チャレンジのためのプログラム開発を支援し,学習・能力再開発の機会の充実を図っている。

(3)女性の学習グループの支援

文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう,女性教育指導者の養成に努めている。

(4)独立行政法人国立女性教育会館の事業の充実等

独立行政法人国立女性教育会館は,国内外の女性教育のナショナルセンターとして,基幹的女性教育指導者の育成,女性のチャレンジ支援や配偶者等からの暴力に関する問題の研修,女性の科学技術分野への参画支援など喫緊の課題への対応,アジア太平洋地域等の女性のエンパワーメント支援,男女共同参画社会形成に資する多様なニーズに応じた情報提供サービス等を行っている。

平成18年度からは,女性情報の総合窓口として「女性情報ポータル“Winet(ウィネット)”」(http://winet.nwec.jp/)を公開し,女性のエンパワーメントのため情報提供の一層の充実を図っている。

3 進路・就職指導の充実

中学校及び高等学校においては,性別にとらわれることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。

特に,高校生の就職状況については,ここ数年回復傾向にあるものの,依然として未内定者も存在することから,教師は進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,また求人企業の開拓などを行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細かな就職指導を展開している。

一方,高校生を始めとする若者を取り巻く厳しい就職環境は,学校を卒業しても就職も進学もしない者の増加やフリーター志向の高まり,就職しても早期に離転職する者の増加など,若者の勤労観,職業観の希薄化を指摘する声も少なくない。このことから,文部科学省では「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」を設置し,児童生徒の発達段階に応じたキャリア教育の在り方及びその推進方策等について検討を行い,平成16年1月に報告書を取りまとめた。また,16年度から,児童生徒の勤労観,職業観の育成を図るために,小・中・高等学校を通じ組織的・系統的なキャリア教育を行うための方法・内容の開発等について地域ぐるみで実践研究を行う「キャリア教育推進地域指定事業」を行っている。また,17年度からは,「キャリア教育実践プロジェクト」を実施しており,具体的には,中学校を中心に5日間以上の職場体験を「キャリア・スタート・ウィーク」として実施するとともに,地域の協力体制を構築するなど,キャリア教育の一層の推進を図っている。

また,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や,女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,すべての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

厚生労働省では,女子学生,女子高校生等に対して,意識啓発セミナーの開催や就職ガイドブックの配布により,的確な職業選択を行えるよう啓発を行っている。

総合科学技術会議では,「科学技術関係人材の育成と活用について」(平成16年7月決定・関係府省に意見具申)の中で,人材の活用に関する改革の方向として,女子の生徒・学生が自然科学系の分野に進む意欲をかき立てるように進路指導の充実を図るとともに,身近なロールモデルを整備すること,大学等において進路選択等の悩みに関する相談体制を整備することを奨励している。