平成17年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第12章 > 第2節 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

1 国連の諸活動への協力

(1) 会議・委員会等への協力

ア ESCAPハイレベル政府間会合

2004(平成16)年9月,ESCAP(アジア太平洋地域経済社会委員会)ハイレベル政府間会合が開催され,アジア太平洋地域における北京行動綱領及び女性2000年会議成果文書の実施状況の評価・見直し等につき議論が行われた。同会合には,目黒依子上智大学教授が政府代表団長として出席した。最終日には,第49回婦人の地位委員会(通称「北京+10」)においてアジア太平洋地域としてのインプットとする報告書(「バンコク・コミュニケ」を含む。)が合意採択された。

イ 国連婦人の地位委員会

2005(平成17)年2~3月,1995(平成7年)年の第4回世界女性会議(北京会議)から10年という節目を迎え,第49回国連婦人の地位委員会(北京+10)が開催され,「北京行動綱領及び女性2000年会議成果文書に関する実施状況の評価」,「女性及び女児の地位向上及びエンパワーメントのための新たな課題及び将来戦略」等につき議論が行われた。我が国からは,西銘順志郎内閣府大臣政務官が首席政府代表として出席した。

ウ 国連総会第3委員会「女性の地位向上」審議

2004(平成16)年秋に開催された第59回国連総会において,「女性の地位向上」に関する議論が行われた。我が国よりは,平敷淳子埼玉医科大学主任教授等が出席した。

(2)国連機関・基金等への協力

平成16年度には,国連婦人開発基金(UNIFEM)に対して,81.44万ドルの拠出を行った。

また,我が国は,国連開発計画(UNDP)の下に設置したWID基金・人造り基金・IT基金を整理統合した「パートナーシップ基金」に327.9万ドルの拠出を行った。

さらに,我が国は,信託基金を国連教育科学文化機関(UNESCO)に拠出し,アジア・太平洋地域における識字教育や途上国における人材育成事業に協力しているほか,(財)ユネスコ・アジア文化センター等においても,成人非識字者の約3分の2を占める同地域の女性に対する教育の普及に積極的に協力している。

2 WID(Women In Development)/ジェンダー関連支援の推進

(1)基本的な考え方

世界の人口の約半分は女性であり,均衡のとれた持続的な経済・社会開発を実現するためには,女性が男性とともに経済・社会開発に参加し,同時に開発から受益することが可能でなくてはならない。

開発における男女の平等な参加と受益に向けて努力することは,一義的にはその国自身の課題である。しかし,先進国が開発における女性の参加と受益にも配慮した開発援助を実施することを通じて,開発途上国の努力を支援することができる。このようなWID/ジェンダーに配慮した開発援助は,均衡のとれた持続的な開発に貢献し,開発途上国の女性のエンパワーメントなどを促進することになる。

我が国は,これまで,北京宣言・行動綱領,国連ミレニアム宣言等,女性のエンパワーメントとジェンダー平等の達成を目指す国際的な誓約を支持してきた。政府開発援助(ODA)政策においては,1995(平成7)年に「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」を発表し,国際開発機関への拠出金や二国間援助を通じ,女性の教育,健康,経済・社会活動への参加の3分野を中心に支援を行うとともに女性の開発プロセスへの統合に努めてきた。また,平成15年8月には,ODA大綱を改定し,基本方針として公平性の確保を定め,「特に,男女共同参画の視点は重要であり,開発への積極的参加及び開発からの受益の確保について十分配慮し,女性の地位向上に一層取り組む」と明記し,ジェンダーの視点の重視をうたったところである。

(2)推進のための取組

具体的な取組としては,平成16年7月より,従来在外公館に配置されていた「WID担当官」を強化するべく,「ODAジェンダー担当官」に改称し,援助対象国公館(計87公館)について再配置した。ODAジェンダー担当官の役割は,当該国のジェンダー問題に取り組む関係者(女性問題担当当局,他ドナー,国際機関現地事務所,現地NGO等)とのネットワーク構築,女性を直接の裨益の対象としない案件においてもジェンダーの視点に立って策定されるように努めることとしており,取組状況につき年次報告を実施した。また,外務省・国際協力機構(JICA)・国際協力銀行(JBIC)はジェンダー主流化に向けた取組を一層強化するため,ODA担当部署にジェンダー担当者を配置し,三者間での密接な情報交換等を通じて,ジェンダー主流化の実施体制の充実を図っている。

また,平成17年1月に改定されたODA中期政策においても,重点課題に取り組むに当たって踏まえるべき基本方針の一つとして「ジェンダーの視点を含めた公平性の確保」を明記し,特に貧困削減や平和の構築などにおいて言及し,ジェンダーについて重視している。さらに,新しいODA大綱及び中期政策の下で,開発におけるジェンダー平等推進に対して一層効果的に取り組むために,「WIDイニシアティブ」を抜本的に見直し,新たに「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」を策定した。新しいイニシアティブでは,開発途上国のオーナーシップを尊重しつつ,当該国におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントを目的とする取組に対して,我が国ODAを通じた支援を一層強化するためジェンダー主流化に基づく取組を示した。

実施機関の取組としては,国際協力機構(JICA)では,平成16年4月から環境・女性課を改組し,企画・調整部内に「ジェンダー平等推進グループ」を設置したことに加え,課題としてのジェンダーに取り組む部署として社会開発部内にガバナンス・ジェンダーチームを設置した。6月に国際協力機構(JICA)で開催されたジェンダー主流化推進のためのセミナーに外務省・国際協力銀行(JBIC)の関係者も参画し連携の下,ジェンダーに対する一層の意識の向上を図った。また,国際協力銀行(JBIC)では,好事例の収集や他の援助機関との積極的な連携・意見交換を通じ,大型インフラ案件等におけるジェンダーの視点強化のための事例研究・手法研究を行うとともに,「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」等に基づいて,個別の円借款事業におけるジェンダーの視点の導入・強化を図っている。

政府としては,今後とも男女共同参画の視点を重視し,公平で効果的な経済協力を目指すとともに,女性の地位向上に一層取り組んでいく考えである。

(3)様々な枠組みを活用した援助案件の実施

我が国としては,無償資金協力事業(草の根・人間の安全保障無償資金協力及び日本NGO支援無償資金協力を含む。),NGO事業補助金,有償資金協力事業,専門家等の派遣等の技術協力事業を通じて,WID/ジェンダー分野における支援を継続している。さらに,これら事業の評価を行うことで,より効果的な事業の実施を図っている(第2-12-1表)。

第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助案件の実施別ウインドウで開きます
第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助案件の実施

3 女性の平和への貢献

我が国は,平和を推進する国際機関の役割の重要性を認識し,また,紛争時において最も支援を必要とする人々は女性や子どもであることを考慮し,これら女性や子どもを含む人間一人一人の保護・能力を強化することにより人づくり・社会づくりを通じて国づくりを進める「人間の安全保障」の考え方を推進している。この観点より,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連児童基金(UNICEF)等の人道支援国際機関に対し積極的な協力を行っているほか,我が国が国連に設置した人間の安全保障基金を通じて国連婦人開発基金(UNIFEM)がアフガニスタンにおいて実施する国内避難民及び難民女性の社会参加を推進するプロジェクトを支援している。

4 国際分野における政策・方針決定過程への女性の参画の促進

我が国では,近年,国際会議への政府代表団の女性のメンバーが漸次増加しており,2005(平成17)年の第49回国連婦人の地位委員会及び2004(平成16)年秋の第58回国連総会においても,民間女性を「政府代表代理」等の資格で派遣したほか,女子差別撤廃委員(女性)も2006(平成18)年までその任期を務めることとなっている。

また,日本人女性の国際機関への参画も進んでおり,国連を含む国際機関における日本人の女性職員数(専門職以上)は,1975(昭和50)年の19人から2004(平成16)年には416人と大幅に増加している。

5 国際交流・協力の推進

(1)あらゆるレベルにおける国際交流・協力の推進

外務省では,平成7年度より日本・ヨルダン・エジプト・パレスチナ自治区女性交流プログラムを実施しており,16年度は,「女性と環境」をテーマとして,ヨルダン,エジプト,パレスチナ自治区より環境分野で活躍する女性を我が国に招へいするとともに,我が国よりは,ヨルダン,エジプトを訪問し,関係者と意見交換を行った。

また,開発援助委員会(DAC)ジェンダー平等ネットワーク会合(2004(平成16)年8月),ESCAP/北京行動計画の実施に係るハイレベル地域間会合(2004(平成16)年9月),国連婦人の地位委員会(2005(平成17)年2月)などの国際会議においてジェンダーと開発に関わる討議に積極的に参加し,国際社会の知見を共有するとともに,我が国がODAにおいてジェンダーの視点を重視して取り組む姿勢をアピールした。

内閣府では,全国的視野に立った男女共同参画社会の形成の促進を図るとともに,国際的協調をより深めるべく,我が国と共通の課題を持つ諸外国の男女共同参画分野における有識者を東京都及び福島県に招へいして「男女共同参画グローバル政策対話」を開催した。

厚生労働省では,「女性と仕事の未来館」において,我が国の女性労働関係者と開発途上国の女性労働関係者との相互交流を行い,我が国のこれまでの女性労働の経験,就労支援策に関する情報提供と技術的支援を実施する等,「開発と女性」の視点を踏まえて,開発途上国への援助を推進した。

また,2000(平成12)年の国連特別総会(女性2000年会議)のフォローアップ活動の一環として,国際労働機関(ILO)に任意拠出を行うことにより実施しているマルチ・バイ・プログラムの「女性のための雇用とエンパワーメントプロジェクト」では,平成13年度から5年計画でカンボジアとベトナムにおける地方の低所得女性を対象にして,ジェンダーの意識啓発に係るワークショップの実施,起業訓練等による女性の社会経済的地位の向上を図る取組を行っている。

(2)持続可能な開発問題に関する国際協力等の取組の推進

国連は,2005(平成17)年1月,兵庫県神戸市において,国連防災世界会議を開催した。このとき採択した今後10年の国際防災に関する行動指針である「兵庫行動枠組2005-2015」は,災害によるコミュニティ・国の人命及び社会的・経済的・環境的資産の損失を大幅に軽減するため,リスク評価,早期警戒,情報管理,教育・トレーニングに関連したあらゆる災害リスク管理政策,計画,意思決定過程にジェンダーに基づいた考え方を取り入れることが必要である旨うたい,女性などの脆弱な人々に対し,適切なトレーニングや教育機会への平等なアクセスを確保することを優先事項として挙げている。

(3)女性の教育分野における国際交流・協力の支援

文部科学省では,女性教育団体が行う指導者の海外派遣事業等に対して助成するとともに,女性団体等が実施する地域の国際化・国際理解に関する学習や国際交流・協力活動の促進に努めている。

また,独立行政法人国立女性教育会館では,国際的な視野からの課題分析を行うとともに,参加者間の国際的情報ネットワーク形成の推進,国際レベルでの女性のエンパワーメントを実現するための情報処理技術の研修,途上国における女性教育の推進支援等を実施している。このほか,各種団体等の国際交流機会の確保を図るとともに,同会館の活動や最新の日本女性の現状について,英文で海外に紹介する「NWEC Newsletter」を年2回発行している。

(4)経済分野における国際協力

APEC(アジア太平洋経済協力)においては,2002(平成14)年に行われた第2回APEC女性問題担当大臣会合での合意に基づき設置されたAPEC女性問題担当組織ネットワーク(GFPN)の第2回会合が2004(平成16)年9月にチリ共和国のサンティアゴで開催された。この会合ではAPECにおいて持続的かつ効率的にジェンダー主流化を進めるための今後の活動方針や課題について議論され,本ネットワークの連携を強化することが決定された。なお,次回会合は2005(平成17)年に大韓民国で開催される予定となった。

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