平成16年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第6章 > 第1節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

第1節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

1 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

総合的な少子化対策の指針として策定された「少子化対策推進基本方針」(平成11年12月少子化対策推進関係閣僚会議決定)及びこの基本方針を受け,具体的な実施計画として策定された「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」(11年12月大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6大臣合意)に基づき,総合的な少子化対策の推進を図っている。

平成13年7月,男女共同参画会議の意見を踏まえ,閣議決定された「仕事と子育ての両立支援策について」に基づき,政府として取組を推進している。14年7月,男女共同参画会議は,本閣議決定に係る施策について,その実施状況を監視し,今後の取組に向けて留意することが重要とされる事項について,内閣総理大臣及び関係各大臣に対し,意見を述べた。

平成14年1月に公表された「日本の将来推計人口」において,少子化は今後一層進行するとの予測結果を受けて,14年5月には,内閣総理大臣から厚生労働大臣に対し,これまでの少子化対策について改めて点検し,少子化の流れを変えるための実効性のある対策について,改めて検討するよう指示がなされた。

これを受けて,厚生労働省では,従来の取組に加え,もう一段の少子化対策として,平成14年9月に「少子化対策プラスワン」をとりまとめ,これを踏まえ,15年3月に「次世代育成支援に関する当面の取組方針」(15年3月少子化対策推進関係閣僚会議決定)を決定し(第2-6-1図),政府・地方公共団体・企業等が一体となって,「国の基本政策」として,次世代育成支援対策を進めることとし,都市化・核家族化の進行等により脆弱化してきた家庭や地域社会における「子育て機能の再生」の実現が目的として位置づけられている。また,従来の取組は保育を始めとする「仕事と子育ての両立支援」が中心であったが,これに加え,新たに「男性を含めた働き方の見直し」,「地域における子育て支援」,「社会保障における次世代支援」,「子どもの社会性の向上や自立の促進」といった4つの柱を掲げて,取組を推進することとしたところである。

さらに,今後の推進方策として,平成15年及び16年の2年間を次世代育成支援対策の基盤整備期間と位置付け,一連の立法措置を講じることとし,15年には,地方公共団体及び企業等における10年間の集中的・計画的な取組を促進するための「次世代育成支援対策推進法」及び「児童福祉法改正法」が成立した。また,少子化社会において講ぜられる施策の基本理念を明らかにするとともに,国及び地方公共団体の責務,少子化に対処するために講ずべき施策の基本となる事項などを定めた「少子化社会対策基本法」が成立した。

(1)保育サービスの整備

厚生労働省では,平成15年度において,待機児童の解消に向け,保育所を中心に,約5万人の保育所受入児童数の増を図るため,学校の余裕教室を活用した保育所整備への施設整備補助,特定保育事業の創設,保育ママの拡充などを実施した。また,新エンゼルプランに基づき,多様な需要に応える保育サービスの提供を実施した。

また,国庫補助対象の放課後児童クラブを800か所増の1万1,600か所とし,障害児を受け入れているクラブに対する国庫補助要件を現行の4人以上受け入れから2人以上受け入れに緩和した。このほか,年長児童等が赤ちゃんと出会い,触れ合う場づくり,中・高校生の交流の場づくり,絵本の読み聞かせ,親と子の食事セミナーを開催するなどの「児童ふれあい交流促進事業」を新たに創設した。

経済産業省では,商店街の空き店舗を活用して,保育所等を設置・運営する際の改装費や賃借料など立ち上げに係る費用の一部を補助し,待機児童問題の解消や女性の社会進出といった少子化社会等への対応を図っている。

(2)幼稚園における子育て支援の充実

文部科学省では,平成13年3月に策定された「幼児教育振興プログラム」に基づき,幼稚園の教育機能や施設を開放して,子育て相談を実施するなどの子育て支援に係る実践的な調査研究(子育て支援総合推進事業)を実施するとともに,幼稚園の通常の教育時間の前後などに行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行うなど,幼稚園における子育て支援を推進している。

また,平成15年度から新たに,多様な教育・保育ニーズにこたえる観点から,幼稚園,保育所と小学校で,幼児・児童の合同活動や教員の合同研修,保護者の交流などを推進するための調査研究(就学前と小学校の連携に関する総合的調査研究)を実施している。

(3)子育てに関する相談支援体制の整備

文部科学省では,子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親に対し,気軽に相談やアドバイスを行う「子育てサポーター」の配置等を行う市町村に補助を行うことにより,子育てに関する相談体制の整備の充実を図っている。

また,就学時健診等の多くの親が集まる機会を活用し,家庭教育に関する講座を開設する市町村に補助を行うなど,家庭教育に関する学習機会の充実を図るとともに,家庭における子育てやしつけの在り方について分かりやすく解説した子育てのヒント集としての「家庭教育手帳」,「家庭教育ノート」について,思春期の子どもに関する内容等について充実を図るなど,子どもの発達段階に応じた内容で新たに「新家庭教育手帳」として作成し,配布した。

(4)児童虐待への取組の推進

児童虐待の防止については,関係府省庁,関係団体(24団体)等による児童虐待対策協議会において,国レベルのネットワークの構築を図っている。

また,児童虐待の発生予防,早期発見・早期対応,児童の保護と自立に向けた支援,アフターケアという一連の取組全般にわたり,関係府省庁や地方自治体,関係団体等の連携・協力により,その取組の推進を図っている。

厚生労働省では,児童相談所を中心として福祉事務所,保健所等において相談・指導等を行うとともに,児童養護施設等において児童の保護・指導等を行うなど,予防から社会的自立に至るまでの切れ目のない総合的な支援体制の確保を図るとともに,医療,保健,教育,警察など地域の関係機関の協力体制の構築が不可欠であることから,住民に最も身近な市町村における虐待防止ネットワークの設置を促進している。

警察では,児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)の趣旨を踏まえ,児童虐待事案の早期発見と通告,児童相談所長等による立入調査等に対する適切な援助,適切な事件化と児童の支援等の点に留意し,被害児童の迅速かつ適切な保護に努めている。

法務省の人権擁護機関においては,子どもの人権問題に関する専用の電話相談窓口である「子どもの人権110番」を設置するなどして相談体制の充実を図っている。また,児童虐待を含む虐待をテーマとした啓発冊子の作成,講演会・研修会等の実施などの啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,児童虐待への適切な対応等について,学校教育及び社会教育関係者に対し引き続き周知を図り,学校教育・社会教育関係者と児童相談所等の関係機関との緊密な連携を図っている。

(5)子育てを支援する良質な住宅,居住環境及び道路交通環境の整備

国土交通省では,子育てを支援する良質な住宅,居住環境の整備として,公共賃貸住宅の整備等において保育所等の子育て支援に資する施設等の一体的整備を推進している。加えて平成14年度より,大規模公営住宅団地の建替えに際し,保育所等の施設との併設を原則化し,生活拠点の形成を図っている。さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自転車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備等,交通安全施設等の整備を推進している。

警察では,子ども連れでも自宅周辺や通学路を安全に安心して歩くことができるよう,交通事故が多発している住居系地区や商業系地区を「あんしん歩行エリア」として指定の上,信号機,光ビーコン等の交通安全施設等を重点的に整備し,生活道路における通過交通の進入抑制や速度抑制,幹線道路における交通流円滑化等の道路交通環境の整備に努めている。

また,交通安全の観点からの子育て支援策として,関係機関・団体とも連携しながら,チャイルドシートに関する講習会の開催,レンタル・リサイクルの充実のための支援等を実施し,チャイルドシートの普及促進に積極的に取り組んでいる。

2 ひとり親家庭等に対する支援の充実

母子家庭の母等については,平成15年4月に施行した改正母子寡婦福祉法に基づき,子育て短期支援事業,日常生活支援事業の拡充等の子育てや生活支援策,母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭自立支援給付金等の就業支援策,養育費の確保策,児童扶養手当の支給,母子寡婦福祉貸付金の拡充等の経済的支援策といった自立支援策を総合的に展開している。

また,平成15年7月に成立し,同年8月に施行された「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」に基づき,より一層の就業支援策を講じている。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019