平成15年版男女共同参画白書

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平成14年度 男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告

序説 国際比較でみた男女共同参画社会の状況

第1節 男女共同参画における各国の特徴と意識

1 各国の特徴

第1表 各国の男女の主な参画状況と制度の充実度別ウインドウで開きます
第1表 各国の男女の主な参画状況と制度の充実度

(スウェーデン)

スウェーデンは政治・行政分野及び労働分野への女性の参画が総合的にみて7か国中最も進んでいる。育児に対する多様な支援や女性の就労に対する環境整備が進んでおり,結婚・出産・育児期を含め女性の就労は当然であり,現在の女性全体の労働力率は突出して高く,1980年の時点で既にM字カーブは解消した。しかし,スウェーデンにおいても,意識面では男女の不平等感が強く,男女の賃金格差が問題となっている。


(ドイツ)

ドイツは各政党が競ってクォータ制を導入し,女性議員の増加に努めたことから,国政レベルではスウェーデンに次いで女性の政治・行政分野への進出が進んでいる。労働分野においては,仕事と家庭の両立のための施策として,保育施設は十分に整備されていないが,育児休業制度は3歳になるまで取得可能であるなど充実している。こうした制度の下で1990年代にそれまであった労働力率のM字カーブが解消した。


(イギリス)

イギリスでは労働条件は労使交渉による決定を基本に置くとの考え方が強いことから,女性が働くことに関しては,早くから制定された平等法制を除くと,スウェーデン,ドイツに比較して育児休業等制度面の支援は十分ではない。しかし,男女の役割分担意識の希薄化をベースに,サービス業を中心とする産業構造の変化に伴う職域の拡大や柔軟な雇用に対する企業のニーズの高まり,及び女性の高学歴化が女性の労働市場への参画・就労を加速し,ドイツと同様1990年代に労働力率のM字カーブが解消した。


(アメリカ)

アメリカでは男女平等,男女共同参画の推進については,男女平等のみならず,人種の平等を始めとする広範囲の差別を禁止する点に特徴がある。格差是正,平等実現のための積極的な措置として雇用や教育の分野でアファーマティブ・アクションを行ってきた。育児休業等仕事と家庭の両立支援策は十分ではないが,民間の保育サービスが利用し易い等私的マーケットは充実している。労働力率は1980年代に既にM字カーブが解消し,管理的職業従事者割合も高く,最近はさらに経営トップ層への登用も始まっている。女性の国会議員の割合は民間部門の女性の参画に比較して低い。


(韓国)

韓国は日本と同様に女性の参画は政治・行政分野,労働分野とも低調であるが,男女の役割分担意識は最近やや薄れつつあり,近年になって急速に欧米諸国にキャッチアップする体制が採られつつある。政府の取組として女性政策を企画し,総括する省として女性部が2001年に設置され,女性政策を強力に推進しており,政治・行政分野でのクォータ制の実施や労働分野での法的整備や制度の充実など,男女共同参画社会の形成に向けた施策が強化されている。


(フィリピン)

フィリピンは,経済発展途上国であり,先進国と状況を一概に比較することは出来ないが,政治・行政分野,労働分野とも,日本に比較して女性の参画が進展している。これは,育児休業等制度面の支援は十分ではないが,政治面ではクォータ制を導入していることや,意識面では,男女の役割分担意識は強いものの,男女の平等意識も強いことが影響していると考えられる。


(日本)

日本女性の参画は,国会議員や管理的職業従事者に占める女性割合はスウェーデン,ドイツ等に比較して著しく低く,労働力率も欧米諸国に比較してやや低くなっている等,政治・行政分野,労働分野とも低い水準にある(第1表)。

これらの背景としては,日本は男女共同参画に取り組む基本の法的枠組みにおいて欧米諸国と大きな違いはないが,仕事と子育ての両立支援策等女性の就労に対する環境条件整備がスウェーデン,ドイツに比較して十分ではない状況がある。さらに,固定的性別役割分担意識が社会,家庭で根強くあり,それに伴う慣行が多くの場で形成されているため,女性が高学歴をいかせない等能力を十分に発揮する機会に恵まれていないこともある。


2 基本的な意識の違い

(男女の地位の平等感)

男女の地位の平等感を「家庭生活」,「職場」,「学校教育」,「政治」,「法律や制度」,「社会通念・慣習・しきたり」の各分野についてみると,フィリピンを除き各国とも「職場」,「政治」,「社会通念・慣習・しきたり」で特に男性が優遇されているとする者が多くなっている。「職場」,「政治」での不平等感は女性の参画が進展している欧米諸国でも日本と同じように強くなっている。さらに日本,韓国では「家庭生活」で男性が優遇されているとする者の割合が高く,役割分担意識の根強さがうかがわれる。一方,日本を始め平等とする者が最も多いのは,男女の区別がなく機会の平等が保障され成績主義が一般的な「学校教育」となっている。また,フィリピン以外のすべての国のすべての分野で男性より女性の不平等感が強くなっている(第2図)。


第2図 各分野における平等感(男性が優遇されていると感じている割合)(男女計)別ウインドウで開きます
第2図 各分野における平等感(男性が優遇されていると感じている割合)(男女計)

(男女平等のために最も重要なこと)

次に男女平等のために最も重要なことは何かについてみると,欧米諸国と韓国ではドイツの男性を除き,男女とも「固定的な社会通念を改める」が最も多く,日本とフィリピンでも最も多いか2番目に多い回答となっている。日本の女性では「女性自身が力の向上を図る」が最も多くなっている。この結果は,女性の社会参画が進んでいる国も遅れている国も,男女共同参画社会が実現する最後の壁は社会通念であることを示唆している(第3図)。

また,欧米諸国や韓国では,「重要役職に一定割合の女性の登用」は男性に比較して女性の回答割合が高く,日本では逆に男性の回答割合が高い。日本の女性は直接的に女性の参画を強制するような政策よりも,女性自身が力をつけるとともに,それを支援する政策の充実を求めている者が多い。

こうした男女共同参画に関する国民の意識が,政治・行政分野,労働分野,家庭生活における男女の参画,及びそれらに対する施策の推進や制度の構築に大きな影響を及ぼしているといえる。

第3図 今後,男女が社会で平等になるために最も重要なこと別ウインドウで開きます
第3図 今後,男女が社会で平等になるために最も重要なこと

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