平成14年版男女共同参画白書

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第3章 仕事と子育ての両立

(女性に偏る出産・子育てによる仕事への影響)

出産・子育ての仕事への影響を厚生労働省「地域児童福祉事業等調査」(平成12年)でみると,保育所などの保育施設に入所している子どもの親では,母の22.1%が一時仕事を辞め,14.0%が仕事(会社)を変え,22.3%が育児休業を取得しているのに対し,父では大半が(89.0%)変化なしとしており,出産・子育ての仕事への影響は母に大きく偏っていることがわかる(第16図)。

第16図  出産・子育てによる父母の仕事への影響(複数回答)

(子育て期にも高い妻の就業希望)

 末子の年齢別に妻の就業状態をみると,0~3歳で約3割と末子の年齢が低いほど労働力率は低い反面,末子の年齢が低いほど就業希望者の割合が高い。また,末子の年齢が7~17歳の妻では,就業を希望しない者は1割未満にとどまっており,子育て期の女性の就業希望が高いことがわかる。就業形態をみると,正規の職員・従業員として働く女性は末子の年齢による違いは小さいが,パート・アルバイトとして働く女性は末子の年齢15~17歳がピークとなっており,第2章でみたとおり,これは,出産・子育てのために就業を中断した女性がパートやアルバイトとして再就職することが多いことが反映されている。

(子育て期に長い男性の仕事時間)

一方,男性も,子育てなど家庭生活に目を向けることが難しい状況もある。年齢階級別の平均就業時間をみても,第2章で触れたように,男性では30歳代を中心に子育て期にむしろ長時間働いている状況にある。

(男性にも強い両立志向,職場の改革が不可欠)

しかし,男性のすべてが望んで長時間働いているわけではない。仕事や家庭における男性の望ましい生き方についてみると,「仕事と家庭を両立させる」とする者が女性の5割,男性の4割に上っており,特に若い世代で割合が多くなっている。また,「家庭を重視する」とする者は,全体の割合は高くないものの,女性よりも男性の方が多くなっており,男性でも家庭を重視する者は少なくない。

このように,仕事と子育ての両立を望む者は少なくないにもかかわらず,既に触れたように,仕事と子育てを両立している者は決して多くない。これは我が国の企業中心型とも呼ぶべき働き方,すなわち長時間労働や頻繁な配置転換・転勤などにより家庭生活が犠牲を強いられている面も無視できない。多様な雇用形態や処遇,弾力的な労働時間制の導入や,男性も育児休業が取りやすい職場環境づくりなど職場の改革は,仕事と子育てを両立できる社会を築いていく上で不可欠である。

(3歳以下の子の4分の3は父母が保育)

3歳以下の子について,日中の保育の状況をみると,父母が約75%,保育所や認可外保育施設などの施設が延べ約24%となっており,子の年齢が低いほど父母の割合が高い。親の就業状態別にみると,父のみ仕事がある世帯では約9割が父母であるのに対し,母に仕事がある世帯では約4割と低いなど,父母の就業状態によって相違がみられる。

(伸びる保育ニーズ)

保育所などの施設へのニーズは高まっている。

就学前児童数が減少する中で,保育所利用児童数は平成6年以降毎年増加しており,特に0歳から2歳までの児童数の増加傾向が著しい。就学前児童に占める保育所利用児童の割合は,昭和55年には17.4%であったが,平成12年には24.7%と大きく増加している。また,幼稚園についても,在園児童数は少しずつ減少してきているものの,就学前児童に占める割合は長期的にはやや増加している。

このようなことから,就学前児童に占める保育所・幼稚園利用児童数の割合は,昭和55年の38.4%から大きく上昇し,平成12年には47.7%と約半分に達している(第17図)。

第17図  保育所・幼稚園利用児童数及び就学前児童数

(減らない待機児童,開所時間が短いほど在所率は低い)

保育ニーズが高まる中で,待機児童(保育所に入所できず待機している児童)は都市部を中心に少なくない。待機児童数は平成9年をピークにやや減少しているものの,13年4月1日現在で21,031人となっている。

このような中で,定員の弾力化や延長保育の実施などの取組が進んできており,開所時間が11時間を超える保育所の割合は,平成7年の13.9%から12年には40.3%と大きく増加している。しかし,保育所の6割弱を占める公営保育所では22.0%と,民営保育所(64.7%)に比べ取組が遅れている状況にある。また,開所時間別に在所率(定員に対する在所者数の割合)をみると,開所時間が長い施設ほどニーズが高い傾向がみられる。

保育所の受入れ拡大については,定員の弾力化や設置主体制限の撤廃など規制緩和が進められているところであるが,こうした保育サービスの充実により,待機児童を解消していくことが必要である。

(安心して子育てができる社会が望まれる)

仕事と子育ての両立を容易にするためには,このような就学前児童に対する保育サービスだけでなく,放課後児童対策や家族支援サービス等の充実も重要である。

仕事と子育ての両立を進める上で,職場の改革と子育て支援は車の両輪である。こうした取組を通じて,子育てを社会全体で支援し,安心して子育てができる社会を築いていくことが望まれる。

(更に進む少子高齢化)

医療技術の進展等による平均余命の延伸により,65歳以上の高齢者人口は年々増加しており,平成12年には50年前(昭和25年)の約5倍の2,200万人となっている(第18図)。

第18図  年齢3区分別人口及び高齢化率の推移

(進む未婚化,晩婚化)

少子化の要因としては,未婚化や晩婚化などが挙げられている。

平均初婚年齢をみると,昭和50年には女性で24.7歳,男性で27.0歳であったが,平成12年には女性で27.0歳,男性で28.8歳と,特に女性で晩婚化が進んでいる。初婚者の年齢別分布の推移をみると,男女とも20歳代後半を山とする逆U字カーブを描くが,次第にカーブが緩やかになり,より高い年齢に分散化してきている。特に,女性ではピークの年齢も上昇しており,晩婚化が進展していることがうかがえる(第19図)。

第19図  年齢別にみた初婚者割合の推移(各届出年に結婚生活に入ったもの)

(大きく増加する夫婦のみの世帯や単独世帯,母子世帯も増加傾向)

我が国の一般世帯数は,平成12年には4,678万2千世帯と昭和50年(3,359万6千世帯)から大きく増加している。50年と比べると,夫婦と子どもからなる世帯には大きな変化がない一方,夫婦のみの世帯が2.3倍,単独世帯,片親と子どもからなる世帯及び夫婦と親からなる世帯がそれぞれ2倍近くに増加している。特に,20歳代の男女,高齢女性を中心に単独世帯は大きく増加しており,昭和50年には夫婦と子どもからなる世帯の数の半分以下だったものが,平成12年には87%になっており,25(西暦2013)年には夫婦と子どもからなる世帯を上回ると推計されている。

このように世帯員の少ない家族の増加の結果,1世帯当たりの世帯人員は3.28人から2.67人へと大幅に減少しており,平成32(西暦2020)年には2.5人を切ると推計されている。

また,世帯人員別の世帯数の構成割合をみても,昭和35年には4人以上の世帯が全体の約6割を占めていたが,平成12年には,1人世帯27.6%,2人世帯25.1%と,2人以下の世帯が過半数に達するなど,小世帯化が進んでいる。

(仕事と子育てを両立できる社会を築くことは少子化への対応という観点からも重要)

このように未婚化,晩婚化が進む一因として,子育てなどの家事と仕事の両立は容易でなく,また家事負担は女性に集中しがちであるため,結婚・出産等が結果的に就業中断につながりやすいことがあると考えられる。再就職はパートを始めとする非正規雇用となる場合が多いが,第2章でみたように,パート労働者の賃金は正規労働者と格差があり,就業中断は,生涯収入を大きく減少させる可能性が高い。このことは,女性が出産,そして結婚しようとする障害の一つとなっている。

また,離婚の増加等に伴い増えつつあるひとり親家庭では,仕事と家庭の両立は容易でないことが,経済的自立を妨げているという指摘もある。

子育てを社会全体で支援し,安心して仕事と子育てを両立できる社会を築いていくことは,個人が望む結婚・出産を妨げている要因を除去することにつながるものであり,少子化への対応という観点からも重要である。

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