第3部 計画の推進

男女共同参画社会の形成に当たっては、国内本部機構が中心となって関係行政機関の緊密な連携の下、国際社会における取組の動向や我が国の経済社会の変化等を踏まえつつ、第2部(施策の基本的方向と具体的施策)に掲げた、広範かつ多岐にわたる取組を整合性をもって、総合的かつ効率的に推進する必要がある。このためには、基盤となる推進体制を整備・強化し、国民的な広がりをもって社会のあらゆる分野での取組を進めることが重要である。

平成13年1月6日に移行が開始される中央省庁等改革において、男女共同参画社会の実現の重要性にかんがみ、新たに設置される内閣府に、基本的な政策及び重要事項の調査審議や監視等を行う男女共同参画会議が設置されるなど、男女共同参画に向けた推進体制が充実・強化される。こうした体制の機能を最大限に有効に発揮するため、その的確な運用を図ることが今後の重要な課題である。

こうした国の取組はもとより、地方公共団体、女性団体、民間企業、経営者団体、労働団体、マスメディアその他の機関・団体、更には、老若男女を問わずすべての国民が、必要に応じて有機的な連携を保ちつつ、それぞれの立場で自主的に取組を展開することが期待される。

その際、国、地方公共団体とNGOとの対等な協調関係を確立するとの観点に立って、IT(情報通信技術)等の活用により、情報を相互に共有することができるよう、国内本部機構を軸としたネットワークの形成を図ることが重要である。

このため、以下の通り、本計画を総合的かつ効果的に推進するための方策を講ずるとともに、そのために必要な推進体制の整備・強化に努める。

1 国内本部機構の組織・機能強化
(1)男女共同参画会議の機能発揮

  • 国連の諸活動への協力

    内閣府に置かれ、内閣官房長官が議長である男女共同参画会議が、国内本部機構の重要な機関として、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な方針、基本的な政策及び重要事項の調査審議等に関して、専門調査会等を活用するなど、その機能を最大限に発揮するよう努める。その際、男女共同参画に識見の高い学識経験者や女性団体などの国民の幅広い意見が会議に十分反映されるよう努める。

  • 男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況の監視

    男女共同参画会議においては、新たに男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況の監視を行うことになっている。本計画を実効性あるものとして総合的に推進していくために、男女共同参画会議において、本計画に基づく施策についても、内閣府を含む関係府省の協力の下、男女共同参画に係る専門家及び各分野の専門家の知見も活用しつつ、効果的かつ的確に監視を行う。また、その監視の結果については広く公表し、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況について広く国民に明らかにする。

  • 政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査

    男女共同参画会議においては、広範多岐にわたる政府の施策が男女共同参画社会の形成に配慮して企画・立案、実施されることを目的として、政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査(以下「男女共同参画影響調査」という。)を行う。調査の実施に当たっては、その対象となる施策分野や男女共同参画に係る専門家の知見を活用しつつ、内閣府及び、施策の企画・立案、実施の主体である各府省との緊密な連携の下に、男女共同参画影響調査を行う。実効性ある調査を実施するために、事例研究を行い効果的な調査手法を開発する。男女共同参画影響調査の結果については、今後の施策の企画・立案、実施の参考として活用する。また、調査結果は広く国民に公表する。

    男女共同参画影響調査の基礎となる性別の統計情報について、内閣府を含む関係府省が連携して、男女共同参画の視点に立って企画、設計、収集、提示されるよう努めるとともに、定性的情報を含めどのような情報が必要か等を検討する。さらに、男女共同参画影響調査に対する理解を深めるために、施策の企画・立案、実施の主体である各府省職員の幅広い参加を得た研修・訓練に関する取組を行う。

(2)総合的な推進体制の整備・強化等

  • 施策の総合的推進、フォローアップ等

    本計画に基づき、第2部に掲げた重点目標の達成に向けて、関係行政機関が緊密な連携を保ちつつ、総合的見地から整合性のある諸施策を推進する。

    我が国の男女共同参画の現状、課題について常時把握し、施策への反映を図る。本計画は、国際社会における取組の動向、我が国の経済・社会情勢の変化等に対応するため、必要に応じ見直す。

  • 年次報告等の作成

    男女共同参画社会の形成の状況及び政府が講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての報告及び男女共同参画社会の形成の状況を考慮して講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を明らかにした文書を毎年作成し、国会に提出する。

  • 行政職員の研修機会等の充実

    行政に携わるすべての国の職員が女性の人権に対する認識を高め男女平等の視点を養うことができるように、男女共同参画に関する手引書等の作成・活用を図るとともに、研修機会や情報提供の充実を図る。

  • 国際機関、諸外国の国内本部機構との連携・協力の強化等

    男女共同参画社会の形成に関する各種国際会議への出席、相互交流、インターネット等を活用した情報交換などを通じて、国際機関、諸外国の国内本部機構との連携・協力に努める。その際、地域的な近接性や文化的背景の共通性などから、アジア太平洋地域との連携に留意して相互交流の機会を充実させる。具体的には、国連アジア太平洋地域経済社会委員会(ESCAP)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が主催する各種会合への積極的な貢献に努める。また、国際的な動向に関連して、欧州評議会等の地域機関における活動に積極的に参画する。

    また、我が国と共通の課題を持つ、世界各国の男女共同参画分野における有識者との交流を図る。

  • 内閣府男女共同参画局の機能発揮

    内閣府に置かれる男女共同参画局が、男女共同参画社会の形成の促進に関する企画立案及び総合調整、男女共同参画基本計画の作成及び推進等に関して、その機能を的確かつ効果的に発揮するよう努める。

  • 男女共同参画担当大臣の補佐体制の充実

    男女共同参画社会の形成を強力に促進するために、男女共同参画担当大臣が多岐にわたる関連施策の総合調整を効果的に行えるよう補佐体制の一層の充実を図る。

  • 男女共同参画推進本部及び男女共同参画担当官会議の機動的開催等

    男女共同参画に関する関係府省の施策の一体的な推進を期すため、男女共同参画推進本部及び男女共同参画担当官会議を機動的に開催する。各府省においてその所管に係る施策について所要の調整を行う男女共同参画担当官については、あらゆる機会をとらえて相互の情報交換に努め、その活動の一層の活性化を図る。

  • 男女共同参画推進本部担当部署の充実等

    国内本部機構が全体として有効に機能するよう、中央省庁等改革後の各府省における男女共同参画推進本部担当部署の明確化やその機能の充実を図るとともに、関係府省による連絡会議の定期的な開催などにより、これら行政機関相互の緊密な連携を確保する。

    また、これらの男女共同参画推進本部担当部署が各府省の施策の企画・立案に積極的に関与することにより、男女共同参画社会の形成に直接・間接に影響を及ぼすあらゆる施策へ男女平等の視点を反映させるように努めるとともに、政府の策定する各種の計画に男女共同参画社会の形成に関する施策を適切に位置付け、国の行政全体を通じた男女共同参画社会の形成の促進を図る。

  • 苦情の処理等のための、行政相談委員、人権擁護委員等の積極的活用

    政府の施策についての苦情の処理及び人権が侵害された場合における被害者の救済(以下「苦情の処理等」という。)については、行政相談委員を含む行政相談制度、人権擁護委員を含む人権擁護機関等既存の制度の積極的な活用により、その機能の充実を図る。その際、行政相談委員、人権擁護委員について女性への積極的な委嘱に配慮するとともに、男女共同参画に関する認識を高めるための研修、情報提供等の充実を図る。また、苦情の処理等に当たっては、国は、地方公共団体の男女共同参画担当部署等との緊密な連携を図る。

    また、諸外国における苦情の処理等の状況について調査・研究を進め、諸外国の取組の現状を把握する。 こうした取組を踏まえつつ、必要に応じて我が国の実情に適したオンブズパーソン的機能を果たす新しい体制について調査・研究を行う。

2 調査研究、情報の収集・整備・提供

  • 男女共同参画社会の形成に関する調査研究

    男女共同参画社会の形成に関する総合的・基本的な課題について、先進的な取組を行っている諸外国の事例、我が国への導入可能性等に関する調査研究を行う。また、個人のライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つ制度は相互に関連しており、総合的な視点からの検討も必要であることから、諸外国における社会制度について総合的な視点から調査研究を行う。

    男女共同参画をめぐる現状や国民の意識、苦情の処理等について、統計調査、意識調査等を活用して、定期的に実態を把握する。

    調査研究に当たっては、男女共同参画分野の専門家、NGO、一般国民からの情報収集や意見交換を幅広く行う。また、調査研究の成果は、各種の情報ネットワーク等を通じて、迅速かつ広範に公表し、国、地方公共団体、NGO等が相互に活用できるように努める。

  • 国際社会及び諸外国における取組の動向に関する情報の提供

    「国連婦人の地位委員会」、「女子差別撤廃委員会」、次期世界女性会議及びこれに向けた準備会合等における国際的な取組や各種地域機関、諸外国における先進的な取組の動向について、情報の収集・整備に努め、各種の会議の場、広報刊行物、インターネット等を通じて地方公共団体、NGO等に対して情報を提供する。

  • 我が国の取組の海外への発信

    男女共同参画社会の実現に向けた我が国の取組やその成果について、国際レベルでの広報施策の充実を図る必要があることから、インターネットなどを活用して積極的に海外へ発信し、国際機関や諸外国の国内本部機構との連携・協力を強化する。

3 国の地方公共団体、NGOに対する支援、国民の理解を深めるための取組の強化

  • 地方公共団体に対する支援の強化

    都道府県に対しては、関連施策の着実な一層の推進、市町村への働きかけ等のために、情報提供、研修機会の提供を行うとともに、広報・啓発等について一層の連携強化を図る。

    市町村に対しては、推進体制の整備充実、関連施策の着実な一層の推進のため、情報提供、研修機会の提供、広報・啓発等について一層の連携強化を図る。

    地方公共団体に対して、男女共同参画社会基本法に基づく都道府県男女共同参画計画及び市町村男女共同参画計画の策定に当たって、情報提供を行う。とりわけ、市町村に対しては、計画の策定に資するよう、参考となる資料を作成、提供し、その支援を図る。

    また、地方分権が推進される中、地方公共団体において、地域の特色をいかした先進的な取組を行っている例も多いことから、これらについて積極的な情報収集・提供を行う。

    都道府県・政令指定都市の自主的な取組を支援するため、各界・各層の国民、民間団体、行政機関関係者が一堂に会する連携の場を設け、地域における男女共同参画社会の形成に向けての気運を広く醸成する。

    男女共同参画宣言都市奨励事業の実施などを通じて、「男女共同参画宣言都市」となることを宣言する市町村に対する支援を行うとともに、全国男女共同参画宣言都市サミットなどの開催を通じて、男女共同参画に係る宣言を独自に行った市町村を含め、男女共同参画宣言都市等との連携を一層深める。

    地方公共団体が男女共同参画社会の形成の促進に関する条例を制定しようとする場合、必要に応じ、他の地方公共団体の状況を含め、適切な情報提供を行う。

    地方公共団体の首長に対して、全国知事会、全国市長会、全国町村会等を通じて、男女共同参画社会への理解が深まるような働きかけを行う。

  • 男女共同参画社会の実現に向けた活動の拠点施設の充実

    公私立の女性センター・男女共同参画センター等は、男女共同参画社会の実現に向けた活動の拠点施設として、男女共同参画に関する情報提供、女性グループ、団体の自主的活動の場の提供、相談、調査研究等多様な機能を果たしており、人材の育成や効果的な事業の展開を通じ、これらの拠点が一層充実し、有機的な連携が図られるよう支援する。

  • NGOとの連携の強化

    男女共同参画社会の実現に向けて、様々な分野で独自の視点に立って自主的な活動を展開するNGOの果たす役割は極めて大きい。このため、NGOの自主性を重んじつつ、国際会議の動向に関する情報を始め、情報通信技術等も活用しながら、両者の間の情報の共有を一層推進する。その際、こうした取組にNGOの意見を反映させ、また、市町村や地域で活動する小規模なNGOであっても情報を入手し発信できるように配慮する。

    また、男女共同参画推進連携会議(えがりてネットワーク)など、NGO間相互の交流や情報交換等のネットワークづくりを引き続き支援する。

  • 男女共同参画社会の実現に向けた気運醸成

    国・地方公共団体・NGO等が有機的に連携して、「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」の開催などを通じて、男女共同参画社会の実現に向けて、国民各界・各層で様々な取組が行われるよう気運醸成を図る。

    国民が男女共同参画社会基本法の目的や基本理念に関する理解を深めることができるように、「男女共同参画週間(仮称)」を男女共同参画社会基本法の公布・施行日(平成11年6月23日)を踏まえて定め、広報活動、顕彰、会議等を実施する。

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