5 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援

施策の基本的方向 具体的施策 担当府省

(1)多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

子育てについては、社会全体の取組として、国民的な理解と広がりをもって支援するべきものであり、仕事と子育ての両立に係る負担感や子育ての負担感を緩和・除去し、安心して子育てができるような様々な環境整備を進めることが重要である。このため、「少子化対策推進基本方針」(平成11年12月)及び「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(新エンゼルプラン)(平成11年12月)に基づき、多様な需要に対応した保育サービスの整備、子育ての孤立化や不安の解消を図るための相談・支援体制の充実等に努める。また、ひとり親家庭等は子どもの養育等で大きな不安を抱えているので、これらの家庭の経済的・社会的自立を促進するための施策の充実を図る。

ア 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

  • 保育サービスの整備

    多様な保育サービス需要に適切に対応し、仕事を始めとする他の活動と子育ての両立の負担感を軽減するため、保育所の設置主体制限の撤廃も踏まえて低年齢児を始めとする保育所受入枠の拡大を行うほか、延長保育、休日保育、夜間保育、病気回復期にある乳幼児保育の普及、事業所内託児施設の設置・運営に対する支援を行うとともに、一時保育や育児サークルの支援を行う。また、保育サービスの質の向上、効率化と情報提供を推進し、適切なサービスの選択が行われるようにする。

  • 放課後児童対策の充実

    学校の余裕教室を活用した放課後児童クラブの推進など、放課後に保護者がいない小学校低学年児童に対する放課後児童対策を充実する。

  • 幼稚園における子育て支援の充実

    幼稚園の施設や機能を地域に開放し、地域の実情に応じた子育て相談や保護者同士の交流の場の提供等を推進する。また、通常の教育時間終了後も引き続き希望する園児を預かるなど、幼稚園の運営の弾力化を図る。

  • 子育てに関する相談支援体制の整備

    子育ての孤立化や不安の解消を図るため、地域子育て支援センターにおける相談支援体制の整備、家庭教育に関する相談体制の整備、学習機会の提供、情報提供の実施、子育て支援ネットワークづくり等、子育てに関する支援体制の整備を図る。

  • 子育てのための資産形成の支援

    育英年金付学資保険、教育積立貯金を通じて自助努力による子育てのための資産形成の支援を行う。

  • 児童虐待への取組の推進

    近年増加している児童虐待に対しては、福祉、保健、教育、警察、司法等の関係機関の適切な連携の下、児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の適正な運用を図り、児童虐待の早期発見・早期対応、被害児童の迅速かつ適切な保護に努める。

  • 子育てを支援する良質な住宅、居住環境及び道路交通環境の整備

    子育て世帯向けの広くゆとりある住宅の確保を支援するとともに、職住近接で子育てのしやすい都心居住や、公共賃貸住宅等と保育所等の子育て支援に資する施設の一体的整備を推進する。

    また、交通規制の実施や交通安全施設の整備の推進、チャイルドシートを容易に入手し、正しく使用できる環境づくり等、安心して子育てができるように安全な道路交通環境の整備に努める。

イ ひとり親家庭等に対する支援の充実

  • ひとり親家庭の親等の就労と子育てへの支援

    母子家庭の母等の生活の安定と自立の促進を図るため、職業相談、指導の実施、職業訓練、職場適応訓練の実施、母子家庭の母等を雇用する事業主に対する賃金の助成などの就業援助対策を推進する。

    また、児童福祉施設等における児童の一時的な預かりを実施するなどにより、ひとり親家庭の自立と子育てを支援する施策の充実を図る。

厚生労働省、文部科学省、警察庁、総務省、法務省、経済産業省、国土交通省

(2)仕事と育児・介護の両立のための雇用環境の整備

少子・高齢化、核家族化等が進展する中で、労働者が仕事と育児・介護を容易に両立させ、生涯を通じて充実した職業生活を送ることができるようにすることは、大きな課題である。このため、仕事と育児・介護の両立に関する意識啓発の推進、育児・介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境の整備、及び育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備を進める。

ア 仕事と育児・介護の両立に関する意識啓発の推進

  • 仕事と育児・介護の両立に関する意識啓発の推進

    仕事と家庭を容易に両立できるよう、労使の理解を高めて、職場における労使一体となった取組を促進するとともに、固定的な性別役割分担意識の解消や職場優先の組織風土の是正に向けて、広く意識啓発のための広報活動、国民運動を実施する。

イ 仕事と子育ての両立のための制度の一層の定着促進・充実

  • 育児休業その他仕事と子育ての両立のための制度の一層の定着促進

    男女労働者共に、希望すれば育児休業を取得できるよう、制度の周知徹底及び企業における制度の定着に向けた指導を行うとともに、育児休業給付についても活用を促進する。また、育児のための勤務時間短縮等の措置や育児を行う労働者の深夜業を制限する制度等の周知、定着を図る。

  • 仕事と子育ての両立の促進に向けた制度の充実

    子育てを行う男女労働者の時間外労働が長時間にわたる場合に時間外労働の免除を請求することができる制度に関し検討を行うとともに、育児休業から復帰後の職務や処遇の在り方、短時間勤務制度等子育てに配慮した勤務時間に関する制度、子どもの看護のための休暇制度の在り方等について検討を行い、必要な施策を講じる。

ウ 仕事と介護の両立のための制度の定着促進等

  • 介護休業その他仕事と介護の両立のための制度の定着促進等

    介護休業制度や介護のための勤務時間短縮等の措置、介護を行う労働者の深夜業を制限する制度等についての周知徹底及び企業における介護休業制度等に係る規定の整備の徹底に向けた指導を行い、その定着を図るとともに、介護休業給付についても活用を促進する。

    さらに、育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行状況や介護の実態等の的確な把握、分析に努め、制度について総合的な検討を行う。

エ 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

  • 企業の子育て・介護支援の取組に対する評価

    仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業を目指す企業の取組を支援するなど、企業における自主的な取組の促進を図る。

  • 地域の子育て・介護支援体制の整備

    急な残業や子どもの急病等に対応し、臨時的、突発的な保育や軽易な介護を地域における相互援助活動として行うファミリー・サポート・センター事業の拡充を進める。

  • 育児・介護を行う労働者に対する相談・情報提供

    育児・介護をしながら働き続ける労働者等に対し、電話等により育児、介護、家事等に関する各種サービスについての地域の具体的情報を提供するフレーフレー・テレフォン事業を拡充するとともに、インターネット等を活用し、保育・育児に関する情報を始め、仕事と育児・介護の両立のための相談、情報提供等の充実を図る。

厚生労働省

(3)家庭生活、地域社会への男女の共同参画の促進

男女が共に職業生活と家庭生活との両立を図ることができ、また、地域社会にも参加することができるようにするという観点に立って、その基礎的条件である労働時間の短縮を図るとともに、特にこれまで家庭や地域への参画の少なかった男性の家庭・地域生活への積極的な参画の促進を図る。

また、平成10年に特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法が施行されたが、今後、我が国の社会にとって特に重要な意味を持つ、教育、消費、環境などの課題に対応するため、ボランティア、NPO(*)などによる活動を通じて、各種の地域活動へ男女が共に積極的に参画できる方策の充実を図る。

ア 家庭生活への男女の共同参画の促進

  • 男女の固定的役割分担意識の是正のための広報・啓発

    男女の固定的役割分担意識を是正するため、「人権週間」等を通じた広報・啓発活動や、学習機会の提供を通じて、家庭生活における男女の共同参画を促進する。また、家庭等における、男女共同参画に関する取組の事例を収集し、国民に提供する。

  • 家庭教育に関する学習機会の充実

    これから親になる青年や子育て中の親を対象に、子育てに関する学習機会を提供する。

  • 父親の家庭教育参加の支援・促進

    父親の家庭教育への参加を促すため、企業等との連携により、子どもの職場参観や職場内での家庭教育に関する講座等の事業を実施する。

イ 地域社会への男女の共同参画の促進

  • 地域社会活動への参画促進

    暮らしやすい活力ある地域社会をつくっていくためには、地域社会への住民参加が重要であり、男性の職場中心の意識・ライフサイクルを見直し、多様なライフサイクルを持つ男女の地域活動への参加を促進するため、あらゆる機会を通じて広報・啓発を行う。また、地域振興やまちづくり計画などに生活者の視点やニーズの取り入れを図る。

  • 地域の教育力の再生

    学校の余裕教室等を活用して子どもや高齢者を含めた地域の人々の交流の場を提供することにより、地域の人々の連携の強化を図りつつ、豊かな人間性を育む環境を醸成する。

  • 消費者教育の推進・支援

    地方公共団体の行う社会教育の一環として、消費者生活に関する学習を奨励するとともに、国立大学等において公開講座を開設するなど、消費者問題に関する各種の学習機会を提供する。また、学校教育・社会教育向けの副教材等の作成や情報等の体系的・総合的な提供、及び、調査研究、研究事業等の支援を行う。

  • 環境保全活動への参画の支援

    内外の環境問題の解決において女性の果たす役割がきわめて大きいことに配慮しつつ、社会を構成するあらゆる主体のパートナーシップによる環境保全に向けた取組を支援、促進するため、環境問題に関する情報の提供や交流の場の提供等の事業を推進するとともに、地域における環境学習の推進やNGO活動の支援等を図る。

  • ボランティア活動等の参加促進のための環境整備

    ボランティア活動に関する調査研究を行い、情報提供・相談事業を実施する。また、都道府県のボランティア登録制度の整備の支援等を通じ、人々のボランティア活動への参加促進を図る。

    退職者を含む勤労者等の人々が、その希望に応じてボランティア活動等に参加することができるよう、事業主団体、ボランティア関係団体と連携しつつ、情報提供、相談活動等を実施する。

  • NPO等の活動への参画促進のための環境整備

    行政・企業とは別に社会的活動をする非営利の民間組織である、NPO等の活動に、男女が共に参加でき、また、その中で日ごろの学習活動の成果や知識・技能をいかせるような環境整備の推進を図る。また、NPO等に対する社会的に支援する仕組みについて検討する。

ウ 労働時間の短縮等就業条件の整備

  • 労働時間の短縮

    男女労働者が職業生活と家庭生活との両立を図りつつ、地域社会にも参加することを可能にするための環境整備として、労働時間の短縮を推進する。具体的には、年間総実労働時間1,800時間の早期達成・定着を図るため、週40時間労働制の遵守の徹底、年次有給休暇の取得の促進、所定外労働の削減を図る。

    また、年次有給休暇と週休日等の組み合わせによる2週間程度連続する長期休暇(L休暇)の普及に向けて、労使を始めとする関係者の理解と協力の下、その普及促進に取り組む。

  • フレックスタイム制等の普及促進

    自律的・創造的かつ効率的な働き方を実現するためフレックスタイム制等の普及促進を図る。

  • 勤労者リフレッシュ対策

    職場、家庭、地域社会でのバランスのとれた生活を実現するため、リフレッシュ休暇制度の普及促進等勤労者リフレッシュ対策を推進する。

内閣府、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省

(*)NPO(Nonprofit Organization):行政・企業とは別に社会的活動をする非営利の民間組織。福祉、まちづくり、男女共同参画、環境など様々な分野で活動を行っている。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019