内閣府男女共同参画局 GENDER INFORMATION SITE

内閣府ホーム > 内閣府男女共同参画局ホーム > 男女共同参画とは > 男女共同参画白書 > 男女共同参画白書 平成22年版 > 資料 女子差別撤廃委員会の最終見解(仮訳)

資料

施策 > 資料 女子差別撤廃委員会の最終見解(仮訳)

女子差別撤廃委員会の最終見解(仮訳)

(仮訳)

配布:一般

 2009年8月7日

 原文:英語

女子差別撤廃委員会

 第44会期

 2009年7月20日-8月7日


女子差別撤廃委員会の最終見解

日本

1.委員会は,7月23日の第890回,891回会合において,日本の第6回報告(CEDAW/C/JPN/6)を審議した(CEDAW/C/SR.890及び891を参照)。委員会からの質問事項はCEDAW/C/JPN/Q/6に,日本政府からの回答は,CEDAW/C/JPN/Q/6/Add.1に記載されている。

序論

2.委員会は,提出期限は過ぎたものの,委員会の報告書作成ガイドラインに従った第6回報告が提出されたことに関し,締約国に感謝の意を表する。また,会期前作業部会からの質問事項に対する書面の回答に対して締約国に感謝の意を表すとともに,さらに,締約国による口頭発表と追加説明についても感謝する。委員会は,締約国の報告が対象としている期間の終了後,法律,政策及びプログラムにおいて女性の権利に好ましい影響を与える多くの変化があったことに留意する。

3.委員会は,参議院議員を団長とする各省代表団の派遣について締約国を称賛する。また,本条約に基づく報告プロセスへの強い関心を持ち,同国の多くのNGOが同席したことを評価する。

4.委員会は,代表団と委員との間で率直で開かれた建設的な対話が交わされたことに感謝の意を表する。

5.委員会は,本条約の実施における人権及び女性NGOの前向きな貢献を締約国が認識していることを歓迎する。

肯定的側面

6.委員会は,2003年の第4回・第5回定期報告(CEDAW/C/JPN/4及びCEDAW/C/JPN/5)の審議以降,女性に対する差別撤廃,男女共同参画推進及び本条約に基づく締約国の義務の遵守のため,締約国が多くの法律と法規定を制定,改正してきたことに評価をもって留意する。特に,国籍法第3条1項に含まれる家父長制を廃止する民法改正を歓迎する。この改正により,日本人男性と外国人女性との間の嫡出でない子は,父子関係の認知が出生前であるか出生後であるかにかかわらず,日本国籍を取得できることになる。また,改正された規定により,男女が子の国籍に関して同等の権利を有することが保証される。

7.委員会は,2005年10月の少子化・男女共同参画担当大臣の任命,及び同年12月の包括的な男女共同参画基本計画(第2次)の決定について締約国を称賛する。同計画では,2020年までの長期的な施策の方向性が盛り込まれ,男女共同参画実現に向けた12の重点分野が掲げられた。

8.委員会は,2004年4月に,人身取引対策を進展させる「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」が設置され,2004年12月には「人身取引対策行動計画」が採択されたことを歓迎する。

9.委員会は,2006年の「障害者自立支援法」の制定や,障害者雇用対策の充実と強化を図る「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正(2008年)による締約国の障害のある女性への支援を歓迎する。

10.委員会は,締約国の妊産婦死亡率が継続的に低下し,締約国が世界で最も妊産婦死亡率が低い国家の一つとなっていることを歓迎する。

11.委員会は,高齢者虐待の防止及び養護者への支援提供に関する施策を促進するため,2006年に「高齢者虐待防止法」が制定されたことに評価をもって留意する。

12.委員会は,締約国が開発協力プログラムに社会的性別(ジェンダー)の視点を取り込み,その枠組の中で女性の人権を促進していることを評価する。

主要な関心事項及び勧告

13.委員会は,本条約のすべての規定を計画的かつ継続的に実施する締約国の義務を想起し,今回の最終見解において特定された関心事項及び勧告を,締約国の次回の報告提出までの優先課題と考える。従って,委員会は,締約国の実施活動においてこれらの分野を重点とすること,並びにとられた措置及び達成された成果を次回報告で報告することを締約国に要請する。委員会は,今回の最終見解の十分な実施が確保されるように,同最終見解を全ての関連省庁,国会,司法当局に提供することを締約国に要請する。

国会

14.委員会は,政府には,本条約に基づく締約国の義務の十分な履行に対する一義的な責任が,特に説明責任があることを再確認する一方で,本条約が政府のすべての部門に対し拘束力を有することを強調するとともに,最終見解の実施及び本条約に基づく政府の次回報告プロセスについて,適切な場合には,手続に沿って必要な措置を講じるよう国会に働きかけることを締約国に勧告する。

前回の最終見解

15.締約国の第4回・第5回定期報告(CEDAW/C/JPN/4及びCEDAW/C/JPN/5)の審議後に委員会が表明した関心事項や勧告の一部への取組が不十分であることは遺憾である。委員会は,とりわけ,本条約に沿った差別の定義の欠如,民法における差別的規定,本条約の認知度,労働市場における女性の状況と女性が直面する賃金差別,及び選挙で選ばれるハイレベルの機関への女性の低調な参画への取組が行われていないことに留意する。

16.委員会は,今回の最終見解における関心事項及び未だ実施されていない前回の勧告に全力で取り組むこと,並びに次回報告においてその実施状況を報告することを締約国に要請する。

差別的な法規定

17.委員会は,前回の最終見解における勧告にもかかわらず,民法における婚姻適齢,離婚後の女性の再婚禁止期間,及び夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する。更に,委員会は,戸籍制度及び相続に関する規定によって嫡出でない子が依然として差別を受けていることについて懸念を有する。委員会は,締約国が,差別的法規定の撤廃が進んでいないことを説明するために世論調査を用いていることに懸念をもって留意する。

18.委員会は,男女共に婚姻適齢を18歳に設定すること,女性のみに課せられている6カ月の再婚禁止期間を廃止すること,及び選択的夫婦別氏制度を採用することを内容とする民法改正のために早急な対策を講じるよう締約国に要請する。さらに,嫡出でない子とその母親に対する民法及び戸籍法の差別的規定を撤廃するよう締約国に要請する。委員会は,本条約の批准による締約国の義務は,世論調査の結果のみに依存するのではなく,本条約は締約国の国内法体制の一部であることから,本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべきであることを指摘する。

本条約の法的地位と認知度

19.委員会は,本条約が,拘束力のある人権関連文書として,また締約国における女性に対するあらゆる形態の差別撤廃及び女性の地位向上の基盤として重視されていないことについて,懸念を有する。これに関して,委員会は,締約国の憲法第98条2項に,批准・公布された条約が締約国の国内法の一部として法的効力を有する旨が明記されていることに留意する一方,本条約の規定は自動執行性がなく,法的審理に直接適用されないことに懸念を有する。

20.委員会は,女性に対する差別撤廃の分野における最も適切かつ一般的で法的拘束力を有する国際文書として本条約を認識するよう締約国に要請する。委員会は,本条約が国内法体制において十分に適用可能となること,また,適切な場合には制裁措置の導入等も通じ本条約の規定が国内法に十分に取り入れられることを確保するために,早急な措置を講じることを締約国に要請する。委員会はまた,本条約の精神,目的及び規定が十分に認識され,裁判において活用されるように,本条約及び委員会の一般勧告に対する裁判官,検察官,弁護士の意識啓発の取組を締約国が強めることを勧告する。委員会は更に,本条約及び男女共同参画に関する公務員の認識をさらに向上させ,能力開発プログラムを提供するための措置を講じるよう締約国に勧告する。委員会は,選択議定書の批准を締約国が引き続き検討することへの勧告及び選択議定書に基づき利用可能なメカニズムは,司法による本条約の直接適用を強化し,女性に対する差別への理解を促すという委員会の強い確信を改めて表明する。

差別の定義

21.委員会は,憲法では男女平等の原則が正式に定められていることに留意する一方,本条約が直接かつ明確に国内法に取り込まれていないこと,及び本条約第1条に従った女性に対する差別の具体的な定義が国内法に欠けていることに,依然として懸念を有する。2006年に改正された「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下,「男女雇用機会均等法」)にかかる定義が盛り込まれず,間接差別の狭い定義が採用されたことは,遺憾である。委員会は,官民両分野における直接・間接の差別を含む女性に対する差別を定義する具体的な規定の欠如は,締約国における本条約の十分な適用の障害となることを想起する。

22.委員会は,本条約及び本条約第1条に記載された女性に対する差別の定義を国内法に十分に取り入れるために早急な措置を講じ,次回報告においてこの点に関する進捗状況を報告することを締約国に要請する。

国内人権機構

23.前回の最終見解における勧告にもかかわらず,また他の条約体からも強調されているとおり,「国内人権機構の地位に関する原則」(国連総会決議48/134附属文書を参照のこと)に従った,女性の人権の保護及び促進を含む幅広い権限を有する独立した国内人権機構がいまだに設立されていないことは遺憾である。

24.委員会は,日本側が普遍的・定期的レビューの最後に人権理事会において提示した回答を踏まえ(A/HRC/8/44/Add.1,1(a)項参照),男女平等に関する問題についての権能を有し,上記「原則」に沿った独立の国内人権機構を明確な期限を定めて設置するよう締約国に勧告する。

女性の地位向上のための国内本部機構

25.委員会は,2005年10月に,少子化・男女共同参画担当大臣が任命されたことを歓迎する一方,男女共同参画のための国内本部機構の事務局たる内閣府男女共同参画局が,その機能を遂行するための権限と応分の財源を持たないことについて懸念を有する。また,男女共同参画基本計画(第2次)によって達成された成果について報告に情報が盛り込まれておらず遺憾である。

26.委員会は,様々な部門,特に少子化・男女共同参画担当大臣と男女共同参画局との間の権限や責務の明確化と連携の強化,及び財源や人材の充実によって,締約国が女性の地位向上のための国内本部機構をさらに強化することを勧告する。さらに,委員会は,男女共同参画基本計画(第3次)策定における法的枠組として本条約を活用すること,及び設定目標の達成に向けた進捗状況を定期的に評価するために監視制度を導入することを勧告する。

暫定的特別措置

27.委員会は,締約国において,特に職場における女性や政治的・公的活動への女性の参画に関して,実質的な男女平等を促進し,女性の権利の享受を向上させるための暫定的特別措置が講じられていないことに遺憾をもって留意する。

28.委員会は,本条約第4条1及び委員会の一般勧告第25号に従って,学界の女性を含め,女性の雇用及び政治的・公的活動への女性の参画に関する分野に重点を置き,かつあらゆるレベルでの意思決定過程への女性の参画を拡大するための数値目標とスケジュールを設定した暫定的特別措置を導入するよう締約国に要請する。

固定的性別役割分担意識

29.委員会は,締約国において,男女間の不平等が存在しているにもかかわらず,女性の人権の認識と促進に対する「反動」が報告されていることに懸念を有する。委員会は,家父長制に基づく考え方や日本の家庭・社会における男女の役割と責任に関する深く根付いた固定的性別役割分担意識が残っていることを女性の人権の行使や享受を妨げる恐れがあるものとして引き続き懸念する。委員会は,こうした固定的性別役割分担意識の存続が,特にメディアや教科書,教材に反映されており,これらが教育に関する女性の伝統的な選択に影響を与え,家庭や家事の不平等な責任分担を助長し,ひいては,労働市場における女性の不利な立場や政治的・公的活動や意思決定過程への女性の低い参画をもたらしていることに留意する。さらに,委員会は,固定的性別役割分担意識にとらわれた姿勢が特にメディアに浸透しており,固定的性別役割分担意識に沿った男女の描写が頻繁に行われていることやポルノがメディアでますます浸透していることを懸念する。過剰な女性の性的描写は,女性を性的対象とみなす既存の固定観念を強化し,女児たちの自尊心を低下させ続けている。委員会は,公務員による性差別的な発言が頻繁に起きていること及び女性に対する言葉の暴力を防止し処罰する措置が講じられていないことに懸念を表明する。

30.委員会は,意識啓発及び教育キャンペーンを通して,男女の役割と責任に関する固定的性別役割分担意識にとらわれた態度を解消するための努力を一層強化し,積極的かつ持続的な対策を取ることを締約国に要請する。委員会は,条約第5条で求められているように,締約国がマスメディアに,男女それぞれにふさわしいとみなされている役割や任務について社会的な変化を促進させるよう働きかけることを勧告する。委員会は,男女共同参画に関する問題について,あらゆる教育機関のあらゆるレベルの教職,カウンセリングスタッフへの教育及び現職研修を強化すること,また,固定的性別役割分担意識を解消するために,あらゆる教科書及び教材の見直しを速やかに完了させることを締約国に求める。委員会は,政府の職員が,女性の品位を下げ,女性を差別する家父長的仕組みを助長させるような侮辱的な発言をしないことを確保するよう,言葉による暴力の犯罪化を含む対策を取ることを締約国に要請する。委員会はまた,メディアや広告におけるわいせつ文書等に立ち向かうための戦略を強化し,その実施状況の結果を次回報告に盛り込むことを締約国に要請する。委員会は,自主規制の実施や採用の奨励等を通して,メディアの作品や報道に差別がなく,女児や女性のポジティブなイメージを促進することを確保し,また,メディア界の経営者やその他の業界関係者の間での啓発を促進するための積極的な措置を取ることを締約国に要請する。

女性に対する暴力

31.委員会は,前回の報告の提出以降,女性に対する暴力及び性暴力と闘うために締約国が実施したさまざまな取組を歓迎する。この取組には,保護命令制度を拡充し,相談支援センターの設置を市町村に要請する「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(国内法)の改正が含まれている。委員会は,この法律が親密な関係におけるあらゆる形態の暴力を対象としていないことや保護命令の申立てから発令までに要する時間が被害者の生命を更に脅かす恐れがあることについて,引き続き懸念する。委員会はさらに,配偶者等からの暴力や性暴力の女性被害者が苦情申立てや保護請求の際に直面する障害について懸念する。委員会は,配偶者等からの暴力や性暴力の通報の断念につながるような,移民女性,マイノリティ女性,及び社会的弱者グループの女性の不安定な立場を特に懸念する。また,委員会は,女性に対するあらゆる形態の暴力の横行に関する情報やデータの提供が不十分であることにも懸念を表明する。

32.委員会は,女性の人権侵害として女性に対する暴力に対処することや,女性に対するあらゆる形態の暴力に対処する取組において委員会の一般勧告第19号を十分に活用することを締約国に要請する。委員会は,配偶者等からの暴力を含めあらゆる暴力は容認されないという意識啓発の取組を強化するよう締約国に要請する。委員会は,女性に対する暴力に関する取組を強化すること,保護命令の発令を迅速化すること,女性に対する暴力の被害者が相談できる24時間無料のホットラインを開設することを締約国に勧告する。また,委員会は,女性が苦情を申立てたり保護や救済を求めたりすることができるように,移民女性や社会的弱者グループの女性を含む女性に質の高い支援サービスを提供し,それにより,女性が暴力または虐待を受ける関係に甘んじる必要がないことを保証するよう締約国に勧告する。こうした観点から,締約国は,配偶者等からの暴力や性暴力の通報を促すために必要な措置を講じるべきである。委員会は,社会的弱者グループの女性を対象とした包括的な意識啓発プログラムを全国的に実施することを締約国に勧告する。委員会は,警察官,裁判官,医療従事者,ソーシャルワーカーをはじめとする公務員が,関連法規について熟知し,女性に対するあらゆる形態の暴力に敏感であることや被害者に適切な支援を提供できることを確保させるよう締約国に要請する。委員会は,配偶者等からの暴力を含め女性に対するあらゆる形態の暴力の発生率,原因及び結果に関するデータを収集し,調査を実施し,更に包括的な施策やターゲットを絞った介入の基礎としてこれらのデータを活用することを締約国に要請する。委員会は,次回報告に,統計データ及び実行した措置の結果を盛り込むことを締約国に求める。

33.委員会は,刑法において,性暴力犯罪は被害者が告訴した場合に限り起訴され,依然としてモラルに対する罪とみなされていることを懸念する。委員会はさらに,強姦罪の罰則が依然として軽いこと及び刑法では近親姦及び配偶者強姦が明示的に犯罪として定義されていないことを引き続き懸念する。

34.委員会は,被害者の告訴を性暴力犯罪の訴追要件とすることを刑法から撤廃すること,身体の安全及び尊厳に関する女性の権利の侵害を含む犯罪として性犯罪を定義すること,強姦罪の罰則を引き上げること及び近親姦を個別の犯罪として規定することを締約国に要請する。

35.委員会は,「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正によって,この法に規定する犯罪の懲役刑の最長期間が延長されたことなど児童買春に対する法的措置が講じられたことを歓迎する一方,女性や女児への強姦,集団暴行,ストーカー行為,性的暴行などを内容とするわいせつなテレビゲームや漫画の増加に表れている締約国における性暴力の常態化に懸念を有する。委員会は,これらのテレビゲームや漫画が「児童買春・児童ポルノ禁止法」の児童ポルノの法的定義に該当しないことに懸念をもって留意する。

36.委員会は,女性や女児に対する性暴力を常態化させ促進させるような,女性に対する強姦や性暴力を内容とするテレビゲームや漫画の販売を禁止することを締約国に強く要請する。建設的な対話の中での代表団による口頭の請け合いで示されたように,締約国が児童ポルノ法の改正にこの問題を取り入れることを勧告する。

37.委員会は,「慰安婦」の状況に対処するために締約国がいくつかの措置を講じたことに留意するが,第二次世界大戦中に被害者となった「慰安婦」の状況の恒久的な解決策が締約国において見出されていないことを遺憾に思い,学校の教科書からこの問題への言及が削除されていることに懸念を表明する。

38.委員会は,締約国が「慰安婦」の状況の恒久的な解決のための方策を見出す努力を早急に行うことへの勧告を改めて表明する。この取組には,被害者への補償,加害者の訴追,及びこれらの犯罪に関する一般国民に対する教育が含まれる。

人身取引及び売春による性的搾取

39.委員会は,「匿名通報モデル事業」の導入など,人身取引と闘うために締約国が実施した取組を歓迎する一方,女性や女児の人身取引が続いていること,売春による性的搾取,並びに人身取引の被害女性の回復を図る施策が導入されていないことについて引き続き懸念する。委員会は,興行査証の交付件数が大幅に減少したことに満足をもって留意する一方,強制労働や性的搾取の目的でインターンシップや研修プログラムが利用される可能性を示唆する情報について懸念する。委員会はさらに,「売春防止法」において売春をした者が起訴の対象となる一方で,顧客が処罰を受けないことを懸念する。

40.委員会は,人身取引の被害者を保護,支援するため,また,女性の経済状況を改善するための取組を拡充し,搾取や人身取引業者に対する女性の脆弱性を解消することによって人身取引の根本的原因の解決を図るためのさらなる措置を講じること,及び売春による性的搾取や人身取引の被害者である女性や女児の回復及び社会復帰のための施策を講じることを締約国に要請する。委員会は,売春の需要の抑止等によって女性の売春による性的搾取を防止する適切な措置を講じるよう締約国に要請する。委員会はまた,売春をした者の社会復帰促進策を実施し,売春による性的搾取の被害を受けた女性や女児のために回復プログラム及び経済力強化プログラムを提供するよう締約国に要請する。委員会は,インターンシップ及び研修プログラム用の査証発給の厳格な監視を継続するよう締約国に要請する。委員会は,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」の批准を締約国に要請する。

政治的・公的活動への平等な参画

41.委員会は,政府,国会,地方議会,司法,学界,外交の上層部に女性が占める割合が低いことを懸念する。委員会は,政治的・公的活動へのマイノリティ女性の参画に関する統計データが欠如していることに留意する。

42.委員会は,事実上の男女平等の実現を加速させるため,特に本条約第4条1及び委員会の一般勧告第25号に基づく特別措置の実施を通して,政治的・公的活動への女性の参画を拡大するための取組を強化するよう締約国に要請する。委員会は,政治的・公的機関への女性の参画が国民の多様性を全面的に反映することを確保することを締約国に奨励する。委員会は,移民女性やマイノリティ女性を含む女性の政治的・公的活動,学界及び外交への参画に関するデータ及び情報を次回報告の際に提供するよう締約国に要請する。委員会は,特に本条約の第7条,第8条,第10条,第11条,第12条,第14条の実施を推進する観点から,クォータ制,ベンチマーク,目標,インセンティブなど,さまざまな手段の活用を検討するよう締約国に要請する。

教育

43.委員会は,教育分野における男女同権を保証するために実施された多くの取組に留意する一方,強い反対にもかかわらず,教育基本法が改正され男女共同参画の推進に言及した同法第5条が削除されたことを懸念する。委員会はまた,女性が引き続き伝統的な学問分野に集中していること,及び学生や教職員として,特に教授レベルで学界における女性の参画が低調であることに懸念をもって留意する。

44.委員会は,教育分野における女性の十分な権利の保護に関する,本条約に基づく締約国の義務が国内法に取り入れられるように,男女共同参画の推進を教育基本法に再度取り入れることを真剣に検討するよう締約国に勧告する。委員会はまた,女児や女性が伝統的に進出してこなかった分野における教育や研修を受けることを奨励する対策を教育政策に盛り込むことを確保し,それにより報酬が高い経済分野での就職の機会及びキャリア形成の機会を拡充するよう締約国に要請する。委員会は,男女共同参画基本計画(第3次)において大学・短大における女性教員の割合の達成目標を20パーセントから引き上げ,最終的に,こうした機関における男女比率が同等になるよう促進することを勧告する。

雇用

45.委員会は,明白な男女間の水平的・垂直的職務分離に反映されている,労働市場における女性の不利な状況について依然として懸念を有する。委員会は,とりわけ,男女雇用機会均等法に基づく行政ガイドラインの「雇用管理区分」が,女性を差別するコース別制度を導入する余地を雇用主に与えているかもしれないと懸念している。委員会はまた,性別に基づく賃金格差が,フルタイムの労働者の間では時間当たり賃金で32.2パーセントと非常に大きく,パートタイム労働者の間ではこの性別に基づく賃金格差がさらに大きいという現状が根強く続いていること,有期雇用及びパートタイム雇用の多数を女性労働者が占めていること,並びに妊娠・出産を理由に女性が違法に解雇されていることについて懸念する。委員会はまた,現行の労働法における不十分な保護及び制裁措置についても,懸念を表明する。委員会は特に,本条約及びILO100号条約に沿った同一労働及び同一価値の労働に対する同一報酬の原則と認識できる条項が,労働基準法にないことを懸念する。委員会はまた,職場でのセクシュアル・ハラスメントが横行していること,及びセクシュアル・ハラスメントを防止できなかった企業を特定する措置が法律に盛り込まれているものの,違反企業名の公開以外に法令遵守を強化するための制裁措置が設けられていないことに懸念を表明する。さらに,委員会は,雇用問題に関する法的手続きが長期にわたることを懸念する。これは,女性にとって受け入れがたく,また,本条約第2条\u0000249eに規定されている法廷における救済を妨げるものである。

46.委員会は,本条約第11条の十分な遵守を達成するため,労働市場における事実上の男女平等の実現を優先することを締約国に要請する。委員会は,妊娠・出産による女性の違法解雇の実施を防止する措置と,垂直的・水平的職務分離を撤廃し,性別に基づく男女間の賃金格差を是正するために,本条約第4条1及び委員会の一般勧告第25号に従った暫定的特別措置を含め,具体的措置を講じるよう締約国に勧告する。委員会は,有効な実施と監視体制を整備し,法的支援や迅速な事案処理を含めて女性の救済手段へのアクセスを確立するために,締約国が,官民双方の雇用の分野における,セクシュアル・ハラスメントを含む女性差別に対して,制裁措置を設けることを奨励する。

家庭と仕事の両立

47.委員会は,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」,「仕事と生活の調和推進のための行動指針」,「子どもと家族を応援する日本」重点戦略,並びに家庭と仕事の両立を推進するその他の施策の策定等の締約国による法律面及び政策面の取組を歓迎する一方,依然として家庭や家族に関する責任を女性が中心となって担っていること,そのために,男性の育児休業取得率が著しく低いこと,並びに家庭での責務を果たすために女性がキャリアを中断する,またはパートタイム労働に従事するという実態が生じていることを懸念する。

48.委員会は,特に,子育てや家事の適切な分担に関する男女双方のさらなる意識啓発や教育のための取組を通して,また,パートタイム労働者の雇用の大部分を女性が占めることがないように図ることによって,男女の家庭及び職場での責務の両立を支援する取組を拡充するよう,締約国に奨励する。委員会は,さまざまな年齢層の子供たちのための保育施設の提供と手頃な料金設定を拡充し,男性の育児休業取得を奨励する取組を強化するよう締約国に要請する。

健康

49.委員会は,締約国の質の高い医療サービスを称賛する一方,近年,HIV/エイズを含む性感染症の日本女性への感染が拡大していることを懸念する。委員会はまた,十代の女児や若い女性の人工妊娠中絶率が高いこと,また,人工妊娠中絶を選択する女性が刑法に基づく処罰の対象となり得ることを懸念する。委員会は,女性の精神的・心理的健康に関する情報が不十分であることを遺憾に思う。

50.委員会は,思春期の男女を対象とした性の健康に関する教育を推進すること,及び妊娠中絶に関するものを含め,性の健康に関する情報やあらゆるサービスに対してすべての女性や女児のアクセスを確保することを締約国に勧告する。委員会はまた,健康や医療サービス提供に関する性別データ,並びにHIV/エイズを含む性感染症の女性への拡大と対策に関するさらなる情報やデータを次回の報告に盛り込むよう締約国に要請する。委員会は,女性と健康に関する委員会の一般勧告第24号や「北京宣言及び行動綱領」に沿って,人工妊娠中絶を受ける女性に罰則を科す規定を削除するため,可能であれば人工妊娠中絶を犯罪とする法令を改正するよう締約国に勧告する。委員会は,女性の精神的・心理的健康に関する情報を次回報告に盛り込むことを締約国に要請する。

マイノリティ女性

51.委員会は,社会全体及びコミュニティ内において,締約国のマイノリティ女性は性別や民族的出自に基づく複合差別に苦しんでおり,こうした状況について情報や統計データが不十分であることを遺憾に思う。委員会はさらに,マイノリティ女性の権利推進を図るために,各マイノリティ・グループに対する政策的枠組を含む積極的な施策が策定されていないことは遺憾である。

52.委員会は,マイノリティ女性に対する差別を撤廃するため,政策的枠組の策定及び暫定的特別措置の導入を含む有効な措置を講じるよう締約国に要請する。委員会は,このためにこうした観点から,マイノリティ女性の代表を意思決定主体の一員として指名することを締約国に要請する。委員会は,日本におけるマイノリティ女性の状況に関する情報,特に教育,雇用,健康,社会福祉,暴力被害に関する情報を,次回報告に盛り込むことを求めた前回の要請(A/58/38,パラ366)を改めて表明する。この観点から,委員会は,アイヌの人々,同和地区の人々,在日韓国・朝鮮人,沖縄女性を含むマイノリティ女性の現状に関する包括的な調査を実施するよう締約国に求める。

社会的弱者グループの女性

53.委員会は,農山漁村女性,母子家庭の母,障害のある女性,難民及び移民女性など,特に雇用,健康管理,教育,社会福祉へのアクセスに関して複合的な形態の差別を受けやすい,社会的弱者グループの女性に関する情報や統計データが不十分であることに留意する。

54.委員会は,本条約の対象となるすべての分野における社会的弱者グループの女性の実態の全体像,及び具体的なプログラムや成果に関する情報を次回報告において提供するよう締約国に要請する。また,委員会は,社会的弱者グループの女性に特有のニーズに対応する性別に配慮した政策やプログラムを導入するよう締約国に要請する。


北京宣言及び行動綱領

55.委員会は,本条約に基づく締約国の義務を履行するにあたり,本条約の規定を補強する「北京宣言及び行動綱領」を引き続き活用し,次回報告にその情報を盛り込むよう締約国に要請する。

ミレニアム開発目標

56.委員会は,ミレニアム開発目標の達成には,本条約の十分かつ効果的な実施が不可欠であることを強調する。委員会は,ミレニアム開発目標達成を目指すあらゆる取組において,社会的性別(ジェンダー)の視点を取り込み,本条約の規定を明確に反映すること,及び次回報告にその情報を盛り込むことを締約国に要請する。

その他の条約の批准

57.委員会は,9つの主要な国際人権条約1国家が遵守することによって,生活のあらゆる面における女性の人権及び基本的な自由の享受が推進されることに留意する。従って,委員会は,まだ日本が締約国でない条約,すなわち,「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」及び「障害者の権利に関する条約」の批准を検討するよう日本国政府に奨励する。


1 「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」,「市民的及び政治的権利に関する国際規約」,「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」,「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」,「拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」,「児童の権利に関する条約」,「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」,「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」,「障害者の権利に関する条約」

周知

58.委員会は,法律上及び事実上の女性の平等を保証するために講じられた措置,及びその関連で必要な今後の措置を,政府の職員,政治家,国会議員,女性団体及び人権団体を含む一般国民に認識させるため,今回の最終見解を日本国内で広く周知させることを要請する。委員会は,本条約,本条約の選択議定書,委員会の一般勧告,「北京宣言及び行動綱領」並びに「女性2000年会議-21世紀に向けての男女平等,開発・平和」と題する第23回国連特別総会の成果についての周知を,特に女性団体及び人権団体に対し強化するよう締約国に要請する。

最終見解のフォローアップ

59.委員会は,上記第18及び第28パラグラフに含まれる勧告の実施に関する書面での詳細な情報を,2年以内に提出するよう締約国に要請する。

次回の報告期日

60.委員会は,本条約第18条に基づき,今回の最終見解において表明された関心事項に対して次回報告で回答することを締約国に要請する。委員会は,第7回・第8回定期報告を2014年7月に提出するよう締約国に求める。

男女共同参画週間キャッチフレーズ

内閣府男女共同参画局  Gender Equality Bureau Cabinet Office
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)