男女共同参画影響調査研究会(第5回)議事要旨

  • 日 時 : 平成12年4月20日(木) 10:00~12:00
  • 場 所 : 総理府5階特別会議室
  • 出席者 :
    (研究会)
    大澤眞理座長、山谷清志座長代理、城山英明、田中由美子、橋本ヒロ子、御船美智子の各研究協力者
    (総理府男女共同参画室)
    大西男女共同参画室長、田河企画官、池永男女共同参画調整官
  • 議 題 :
    ・オーストラリア調査報告(大澤座長)
    ・海外調査のまとめについて
    ・男女共同参画影響調査に関する論点等
  • 会議経過

    (1) 大澤座長からオーストラリア調査について、以下のような報告があった。

    <連邦政府首相・内閣府の女性の地位局(Office of the Status of Women-OSW)について>

    ○ オーストラリアでは、OSWを中心に11の省の女性担当部局が作業グループ形式でつながれると同時に各省もお互いに結ばれているという車輪型の女性政策の機構となっている。また、1976年以降、首相を補佐する大臣(兼務)が任命されている。OSWは首相及び補佐大臣に対する政策助言機能をもち、調査・研究、調整、モニタリング等の任務を遂行してきた。

    ○ オーストラリアでは1984年から各省の施策の女性への影響の報告を求める「女性予算プログラム」を導入しており、1987年からは「女性予算声明(Women's Budget Statement)」と名称を改め1993年まで続いた。その後ページ数を圧縮し、1996年以降は「大臣声明」に変わった。これは、政府が行おうとする女性への施策の焦点を略述するものである。

    ○ 「大臣声明」は、毎年OSWが各省の女性政策部局に報告を依頼して取りまとめている。施策の選定、施策の女性への影響に関する見方などは各省に任されており、体系的な調査様式、チェックリストなどはないが、長年の女性予算声明の経験、OSWと各省女性政策部との公式・非公式の連携により、特に障害なく実施されている。

    <ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州女性省について>

    ○ NSW州においては女性予算声明は現在行われておらず、これに代わって、「イニシアティブ・フィードバック・フォーム」という様式を全省に送って、各省の新規の女性関係施策ごとにこれに対する回答を求めている。

    ○ NSW州では、分野別に影響調査のためのガイドライン、チェックリストを作成しているが、全分野にわたってあるわけではなく、対象を絞って深く調査を行うという考え方になっている。

    ○ 影響調査の実施については、首相の理解、協力は得られているが、連携を得やすい省とそうでない省が存在している。後者については、問題の提起を行い、調査の必要性を訴えるなどしている。こうして実施されることになった調査を関連省庁と共に行い、調査結果を施策の改善につなげている。

    <人権・機会均等委員会について>

    ○ 性差別禁止法の監視・救済機関である人権・機会均等委員会がメディア、立法、行政のモニタリングを行っている。この委員会は行政府から独立した機関であるため、政府が設定した政策の優先順位に介入することも可能である。

    (2) 大澤座長からの報告について、主な発言は以下のとおり。

    ○ OSWから各省への報告の依頼文は各省の女性政策部局あてではなく各省の次官、次官補あてに出されており、省全体として責任をもって報告するという形になっている。

    ○ 日本の政府では、女性政策担当部局を置いている省庁が限られている。

    (3) 事務局から海外調査のまとめについて説明し、これらについて以下のよう意見交換が行われた。

    ○ 政府部内で経済効率が優先されるということに関して言えば、アメリカでは家庭内暴力が経済に与えるダメージが試算されている。このように、男女平等に配慮しないことにより経済が被る影響が評価できないか。

    ○ アメリカではまた、企業が育児休業を保証したり、企業内託児所を設けるなどすることによって、高いレベルの女性熟練労働者が辞めないことによる採用費用の節約といった、プラスの面も試算されている。

    ○ 環境の面では、エコ・エフィシェンシー(eco-efficiency:環境効率性)という考えに基づき、環境上もいいけれど、経済上もいいという取組を示すことがなされている。影響調査もこのようなプラスの影響を引き出せるような事例を示すことができればよいのではないか。

    ○ 女性予算声明は、現在では機械的に行われる恒例の業務となっているが、導入当初は各担当者に自分の担当している施策と女性との関係を考えさせた点で効果があった。

    ○ 女性予算声明については、導入後の時間経過により効果が異なるのではないか。オーストラリアでは女性予算声明が長年実施された後で現在やめてしまった州もあるが、一度は実施してみる意味はあるのではないか。

    ○ プロジェクトを選別し、それが女性にどのような影響を与えたかという事例を示す必要がある。

    ○ 広範に施策を調査して、施策の担当者にジェンダーへの影響を考えてもらうことは必要。一方、対象とする施策や事業を絞って深い調査を行い、その結果を示し、この事例を以て各担当者に自分の扱っている施策について意識してもらうということも考えられるのではないか。

    ○ 社会の意識の高まりにより、政策担当者も関心を持つようになるのではないか。

    (4) 事務局からに男女共同参画影響調査に関する論点等ついて説明し、これらについて以下のよう意見交換が行われた。

    ○ 対象とする施策・政策については、海外調査からの示唆を参考に、協力的な省庁を対象として、試験的に始めるのがよいのではないか。

    ○ 研究者が独自に行っている研究結果を取り上げる仕組み、また、一般から寄せられた意見に基づいて影響調査を行う仕組みについても議論する必要があるのではないか。

    ○ 影響調査の影響をどのように捉えるかが難しい。さらに、ジェンダー・ニーズをどう考えるかも議論する必要があるのではないか。

    (5) 次回(第6回)研究会は、平成12年5月下旬に開催することとされた。

以  上

(文責:総理府男女共同参画室)