男女共同参画影響調査研究会(第4回)議事要旨

  • 日 時 : 平成12年3月24日(金) 10:00~12:00
  • 場 所 : 総理府5階特別会議室
  • 出席者 :
    (研究会)
    山谷清志座長代理、片山泰輔、田中由美子、橋本ヒロ子、御船美智子の各研究協力者
    (総理府男女共同参画室)
    大西男女共同参画室長、武川参事官、田河企画官、大塚男女共同参画推進官、池永男女共同参画調整官
  • 議 題 :
    ・カナダ・国連調査報告(橋本研究協力者)
    ・JICA(国際協力事業団)におけるWID(Women in Development:途上国の女性支援)プロジェクトについて(田中研究協力者)
  • 会議経過

    (1) 橋本研究協力者からカナダ・国連調査について、以下のような報告があった。

    ○ カナダでは、連邦政府の女性の地位庁(Status of Women Canada-SWC)及び国際開発庁(Canadian International Development Agency-CIDA)、ブリティシュコロンビア州の女性平等省(Ministry of Women's Equality)等、ニューヨークでは、国連婦人開発基金(United Nations Development Fund for Women-UNIFEM)及び国連開発計画(United Nations Development Programme-UNDP)において調査・情報収集を行った。

    <連邦政府女性の地位庁について>

    ○ 国、州、準州のジェンダー平等大臣による会議が年1回開催されており、その他担当官会議を年2、3回開催している。

    ○ 女性の地位庁では、各省の職員を対象に、政府職員訓練所と協力して、政策形成、政策実施においてジェンダーの視点を取り入れるためのジェンダートレーニングが実施されている。また、1996年以降研究機関、NGOが行う政策研究に対して支援を行っており、これらの研究成果を活用している。

    ○ 統計庁との連携が緊密であり、「経済的ジェンダー平等指標」等ジェンダー統計がよく整備されている。無償労働の評価も行われている。

    ○ 厚生省(Health Canada)、人的資源省(Human Resource Development Canada)、法務省(Department of Justice)などの関連省庁において女性担当部局が設置されている。

    ○ 政策にジェンダーの視点を反映させるに当たっての限界の一例としては、女性問題担当大臣が閣外大臣であり、招かれないと閣議に出席することができないため、すべての閣議審議事項について意見を述べることができるわけではないことがある。

    <国際開発庁(CIDA)について>

    ○ ジェンダー平等はCIDAの6つの重要項目(インフラ、基本的人間ニーズ、人権、民間部門開発、環境、ジェンダー平等)の一つであるとともに、それ以外の5つの重要項目についても横断的にジェンダーの視点を取り入れることとしている。

    ○ CIDAにおけるジェンダー主流化の取組が進んだ理由としては、比較的新しい組織であるため、1970年に制定された雇用機会均等法に基づいて女性の積極的な登用が行われた結果、現在それらの女性が管理職としてジェンダー主流化の担い手となっていること、CIDAが国連の世界女性会議において先導的な役割を果たしてきたこと、事業の成功にはジェンダーの視点の取り込むことが重要であることが認識されたこと等が挙げられる。

    ○ CIDA内にはジェンダー平等課が置かれているほか、各局にジェンダー専門家もしくはジェンダー担当窓口(フォーカルポイント)を置いている。また、国外の事務所にも担当窓口等を設置している。

    <ブリティシュコロンビア州女性平等省について>

    ○ ブリティシュコロンビア州にはカナダの州としては唯一、女性のための平等の推進などを任務とする独立の省-女性平等省が設置されている。ここでは「ジェンダー・レンズ(Gender Lens)」というジェンダー分析のためのガイドを作成し、それに基づいてジェンダーの視点から様々な政策等の立案が行われている。

    ○ 同州では、1993年に閣議提出案件に対するガイドラインが制定され、その中に女性に対する影響の調査を行うべきであるという内容が盛り込まれている。女性平等大臣は閣議のメンバーの一員であり、閣議に出席し、意見を述べることができる。1999年の場合、約60の法案が提出され、このうち社会政策関係の35の法案について女性に対する影響の調査が行われた。

    ○ 政策のジェンダー分析が可能となっている背景としては、<1>高いレベルのサポートがあること(大臣、副大臣等管理職に女性が多いことが有利に働いている)、<2>「ジェンダー・レンズ」のような、ジェンダー分析実施のためのツールが開発されたこと、<3>政府の政策及びプログラム立案者等にトレーニングが適切に実施されていること、が挙げられる。

    ○ ジェンダー分析等に対する抵抗・反発の理由としては、担当者がジェンダー分析の必要性を感じていないこと、時間、財政、データ、専門性の不足などが挙げられる。また、同州のジェンダー分析の限界として、州予算に関与できないこと、閣議に提出されない案件については直接関与できないこと、などが挙げられる。

    <国連機関関係者からの聞き取り>

    ○ 男性の視点のみで計画されることが多い交通、建設などインフラ分野のジェンダー分析を実施している。この分析においては、<1>インフラ事業に関わる職員の女性割合、<2>インフラ事業の受益者として女性がどれくらいの割合を占めるか/女性に対する影響は何か、などが考慮されている。

    ○ 評価を始めるための戦略としては、協力的で政治的支援の得られる省庁におけるパイロットプロジェクトから始めることが有効である。

    (2) 橋本研究協力者からの報告について、主な発言は以下のとおり。

    ○ 女性の地位庁では組織の中の地位の高い、影響力のある人に対し、ジェンダーの視点を取り入れるためのトレーニングが行われている。

    ○ 女性の地位庁のように、各省庁における政策分析の専門家及び担当者に対してトレーニングを行うというのは、かなり戦略的である。

    ○ CIDAにおいては、事業の実施の際には必ず専門家のチェックを受けることになっている。

    ○ カナダは国内のみならず海外援助をする場合もジェンダー政策アドバイザーを派遣して、被援助国の政策立案者などにトレーニングを行って、ジェンダー意識を高めるようにしている。

    ○ ブリティシュコロンビア州では、閣議提出案件については、実際には閣議提出前に女性平等省と各省との間でのやり取りの過程で男女に与える影響が調査されている。また、影響調査が行われているのは主として社会政策関係の案件である。

    ○ 連邦政府では、各省でジェンダーの視点の配慮がなされるよう、各省の女性部局、あるいは担当窓口が独自のガイドラインを作るなどしている。女性の地位庁はこれを支援するためジェンダー・ベイスド・アナリシス(GBA)担当官(Director of Gender-Based Analysis Directorate)を置いている。

    (3) 田中研究協力者からJICA(国際協力事業団)におけるWIDプロジェクトについて、以下のような説明があった。

    ○ 政府の援助政策では、平成4年の政府開発援助大綱において「開発への女性の参加」等若干の女性への言及があったが、平成11年の「政府開発援助に関する中期政策」においてはジェンダーが重点課題として挙げられている。

    ○ JICAでは特にプロジェクト評価を中心に行っている。このうち、事前、中間、終了時評価の大部分はプロジェクト関係者などによる内部評価であるが、3年から5年後に行われる事後評価は研究者等有識者も参加した形での第三者評価を取り入れている。

    ○ JICAではプロジェクトの計画内容として必要な要素(上位目標、プロジェクト目標、成果等)を整理したプロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)を事前に作成することとしており、これらの要素に基づいてOECD(経済協力開発機構)のDAC(開発援助委員会)において採択されている評価5項目(効率性、目標達成度、効果、妥当性、自立発展性)について評価を行っている。

    ○ プロジェクトがWID配慮を行っているかどうかが業績の取りまとめにおいて重要となってきていることから、「WID配慮5要件」(住民女性の現状分析、女性からの意見聴取、女性の参加を促進する方策、女性の実施段階での参加、WID専門性の活用)を設定し、これらがプロジェクトの計画、実施、評価段階すべてにおいて充たされていればWID配慮案件として分類している。

    ○ 具体的なジェンダー評価のチェック項目としては、<1>ジェンダー役割やニーズ調査などに基づくプロジェクトへの公平/平等な参画・参加、<2>プロジェクトからの公平な利益/恩恵、<3>マイナスのインパクトの回避、削減、<4>既存の社会、経済的格差の拡大の回避、<5>プラスのインパクトの奨励/拡大/継続性の確保、<6>エンパワーメント、個人の資質と選択を伸ばすような工夫、自立発展性、<7>プロジェクト関係者、関係組織内部のジェンダー・メインストリーミング、<8>当該の女性、男性自身によるプロジェクトの効果判定、<9>地域社会、国などのマクロレベルの目標との整合性のみならず、政策提言、法制度などの改善へのインパクト、などが考えられる。

    (4) 田中研究協力者の発表について、主な発言は以下のとおり。

    ○ 従来我が国では、人員、資金、機材等の投入やそれを基に行われる活動だけ見ていればよく、プロジェクト目標や上位目標は被援助国の責任であるという考え方であったような気がするが、我が国が関わった部分だけ成功しても全体が成功していなければ、それは成功したとは言えない。上位目標を達成するよう協議等を通じて支援していくことが本当の支援ではないかという議論もある。そのようにするためにはプロジェクト実施前の事前調査が重要である。しかし、現状は事後評価で問題点を明らかにし、フィードバックをしている面がある。

    ○ 基本的にはすべての案件についてWID/ジェンダー配慮を行う必要があるが、一方で予算、人員の制約の下でWID/ジェンダー配慮に関する優先程度の差が出ざるを得ない。

    ○ プロジェクトの採択に当たって裨益住民の質と量をチェックするが、その項目の中で、ジェンダー平等が推進されるような措置がプロジェクトの中で行われているかどうかというようなことについて得点を記入するようになっている。

    ○ すべてのプロジェクトにWID/ジェンダー配慮を行うのが難しいということであれば、男性に利益がもたらされることの多い大規模プロジェクトにWID/ジェンダー配慮を行うようにするのが有意義ではないか。

    (5) 次回(第5回)研究会は、平成12年4月20(木)10:00から開催することとされた。

以  上

(文責:総理府男女共同参画室)