男女共同参画影響調査研究会(第2回)議事要旨

  • 日 時 : 平成11年12月17日(金) 13:00~15:00
  • 場 所 : 総理府3階特別会議室
  • 出席者 :
    (研究会)
    大澤眞理座長、山谷清志座長代理、片山泰輔、御船美智子の各研究協力者
    (総理府男女共同参画室)
    大西男女共同参画室長、田河企画官、大塚男女共同参画推進官、池永男女共同参画調整官
  • 議 題 :男女共同参画影響調査の方法論についての委員からの発表
    ・「性別による偏りのない社会システムの構築」について(大澤座長)
    ・「政策評価の理論的整理」について(山谷座長代理)
  • 会議経過

    (1) 大澤座長から「性別による偏りのない社会システムの構築」について、以下のような説明があった。

    ○ 「男女共同参画ビジョン」(平成8年男女共同参画審議会答申)及び「男女共同参画2000年プラン」(平成8年男女共同参画推進本部決定)にみられるように、我が国の政策体系において「性別による偏りのない社会システムの構築」、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革」が位置づけられている。この意義は、日本の女性政策が狭義の女性政策(女性問題解決、女性の地位向上)から広義の女性政策(ジェンダーの主流化)へとパラダイム(規範)が転換しつつあることを示したことである。

    ○ 女性政策は、(1)女性をターゲット・グループとする施策、(2)政策目標に男女平等の推進を明示的に含む施策、(3)政策手段にジェンダーへの含意を持つ施策、(4)アウトプット(資源の帰着)にジェンダーへの含意を持つ施策、(5)政策成果にジェンダーへの含意を持つ施策、と五つに分類でき、(1)及び(2)は従来の国内行動計画に盛り込まれてきたような狭義の女性政策、(3)から(5)は、広義の女性政策と言うことができるのではないか。

    ○ ジェンダーの主流化の具体的内容としては、狭義の女性政策については、実際的なニーズ(女性の多い職場への託児所付設など)の充足が、戦略的課題(男女平等の達成など)への対応の「導入点」となるよう政策設計すること、及び目標に対して整合的な手段とアウトプットを確保し、マイナスの副アウトプットを抑制することが考えられる。一方、広義の女性政策については、埋め込まれているジェンダー・バイアス(ジェンダーによる偏り)を洗い出し、政策の成果が少なくともジェンダーに対して中立となるよう(できればジェンダーの解消を促すよう)、政策を修正することが考えられる。

    (2) 大澤座長の発表について、以下のような意見交換が行われた。

    ○ 従来の役所のやり方というのは、予算が付きそうな事業を起案して、実際予算が付いたら手柄、執行したらおしまいということになっており、政策の評価に至らなかったのではないか。

    ○ 行政の運営の仕組み、考え方を、政策の目標、手段ということから整理し直す必要があるのではないか。ここでの議論の場合、これらに対し、さらにジェンダーの観点からの検討を加えることが必要となる。

    ○ 政策評価は、政策が決定するに至るまでの不合理な政治過程の影響をなるべく小さくするためのものともなるのではないか。

    ○ 政策目標に対して手段があり、そして、その手段を目的にしてさらに細かい具体的手段がある、という体系として捉えられるのではないか。

    ○ 概念的なところでは、「政策目標群」とし、利益・不利益が帰着する人に直接関わるものを「政策手段」とするような捉え方もあるのではないか。

    ○ 手段については多様であり、各省庁に所管が分かれている。一般に政策評価というと、各省ごとに政策があるとし、それについての評価を行うことが多いが、本来政策は省庁にまたがるものであり、省庁を超えて手段の選択を評価するといった視点が必要なのではないか。

    ○ 政策課題を、指標をもって認知することが重要。そうすると、成果の評価も容易である。

    ○ 政策手段の中には、現在の社会経済構造、性別分業のあり方などからそのアウトプット、成果が予想できるものがあり、政策課題にジェンダーが明示されていないものについても、その点から指摘をしていくことになるのではないか。

    ○ 予算など資源には制約があり、短期あるいは単年度で考えた場合、各種政策に男女共同参画の視点を組み込ませることは難しいかもしれないが、手段として男女共同参画を重視することが、男女共同参画を目標としていない政策においても、その政策の中長期的な効率性、有効性を高めることにもなるのではないか。

    ○ 政策手段を選択する基準、物差しとしてジェンダーというものがあるのではないか。

    (3) 山谷座長代理から「政策評価の理論的整理」について、以下のような説明があった。

    ○ 政策の評価を行政の内部で行うと甘くなるという意見があるかもしれないが、「グッド・ガバナンス」(good governance:成熟した自由民主主義統治システム)が確立されていれば、内部評価であろうと外部評価であろうと関係ない。評価を公表し、それに対して意見を言うことができればよい。

    ○ 政策評価と行政評価の関係については、自分の考えとしては、政策評価の中に行政評価が含まれるのではないかと思う。政策評価と業績評価については、人の数を減らす、予算を節約するなどということが、政策評価とは異なる業績評価と言えるのではないか。

    ○ 政策評価の方法の類型として、プロジェクト評価(事務事業評価)、プログラム評価(施策評価)、業績評価(目的達成度評価)等が考えられるが、我が国ではこれらが現段階ではうまく整理されていない。また、何(アウトプット(直接生産物)、アウトカム(直接的な成果)、インパクト(波及効果や副次効果))を評価の対象にするのかも難しい問題である。

    ○ アカウンタビリティ(説明責任)については、何が本来狙っている効果なのかという有効性についての議論がこれまでなかった。

    (4) 山谷座長代理の発表について、以下のような意見交換が行われた。

    ○ 行政機関が行う評価には限界があるのではないか(行政機関を設置するのか否かに関することなど)。行政機関が行う政策評価と、もっと大きな、政策の選択についての判断材料となる政策評価という二つの視点から議論する必要があるのではないか。業績評価については、情報公開の観点から重要。

    ○ 業績評価に馴染むのは監査の分野である。これは、いかに節約するか、効率的にするか、という物差しによるものであり、政策の選択には関係ないものである。

    ○ アメリカでは、政策評価が、担当省庁に対する非難などにつながるものであるという考え方というより、担当省庁にとっての自己PRのチャンスとして捉えられている。

    ○ 政策の有効性という場合、数値的、経済的な指標だけでなく、もっと社会的な広がりも併せて評価する必要があるのではないか。

    ○ 従来の評価では、政策目標と関連させて事業の必要性を問題にすることがなく、事業の結果のうち、よいものを積み上げて事業の有効性を訴える場合が多い。

    (5) 次回(第3回)研究会は、平成12年1月26日(水)10:00から開催することとされた。

以  上

(文責:総理府男女共同参画室)