「共同参画」2020年10月号

巻頭言

家事にどのような姿勢で関わるか

私たちの生活に身近な家事には、一見異なる2つの側面があります。

一方で、家事にはアンペイドワーク(無償労働)の側面があります。衣・食・住を支えるのに欠かせない仕事でありながら、家庭の外での仕事とは異なり、賃金が支払われません。

それなのに、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業規範のもとで、家事は女性の責任とされてきました。そのため女性は、家庭の外で働いて経済的に自立し、社会的に活躍するチャンスが制限されてきました。近年、男性に家事参加が求められていますが、それは、女性の経済的自立と社会的活躍のためには、女性だけに家事を押しつけず、男性もその責任を分かち合うことが不可欠だからです。

他方で、家事には趣味的な側面もあります。そこまでしなくても生活できるのに、好きだから、こだわりがあるから、とことんやってしまう場合があります。週1回掃除機をかけて夕食は総菜でOKという人もいれば、毎日床磨きをして夕食に3品以上手料理が並ばなければ気が済まない人もいます。家事をどのように、どれだけやればよいのかの基準は人それぞれです。

夫婦の働き方や家族のライフスタイルが多様化してくると、家事を誰がどれだけすべきかの絶対的な正解はなく、双方にとってより不満が少ないやり方を模索するしかありません。ただし、「家事は女性の役割」というアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)によって、男性はうっかりすると女性に家事を押しつけてしまいがちな点には注意が必要でしょう。

仕事と家事の両立を図るには、家事の分担の仕方を話し合うのに加えて、少し手を抜いて家事の総量を減らすことも検討してみてはどうでしょうか。もちろん、逆に余裕があるときに、生活の潤いを求めて、あえて家事に手間暇掛けることがあってもよいでしょう。

性別に関わりなく仕事でも家庭でも生き生きと過ごせるよう、こうした家事の二面性を理解しながら、家事にうまく関わっていきたいものです。

関西大学文学部教授 多賀太
関西大学文学部教授
多賀太

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