「共同参画」2020年9月号

特集

「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス~個人は、家庭は、社会はどう向き合っていくか
-令和2年版男女共同参画白書から-
内閣府男女共同参画局調査課

「令和2年版男女共同参画白書」が7月31日に閣議決定、公表されました。この白書は、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)に基づいて毎年国会に報告されるもので、今回が21回目になります。

今回の白書では、特集として、「「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス~個人は、家庭は、社会はどう向き合っていくか」を取り上げました。ここではポイントをご紹介します。

1.「家事・育児・介護」と「仕事」のバランスをめぐる推移

「家事・育児・介護」に使う時間(以下、「家事・育児・介護時間」とします。)や「仕事」に使う時間(以下、通勤・通学や学業に使う時間を含み「仕事等時間」とします。)の一日あたりの配分が、過去数十年間にどのように推移してきたかを概観します。

~男女の年齢階級別に見た「家事・育児・介護時間」と「仕事等時間」の推移~

「家事・育児・介護時間」の推移を男女の年齢階級別に見ると、女性は30代が昭和56(1981)年以降一貫して最長で、大きく減少したのは25~29歳となります。40代、50代、60~64歳は横ばいですが、65歳以上のみ増加傾向にあります。男性はどの年齢も10~20分弱の範囲にあったものが、平成28(2016)年では21分(20~24歳)から65分(65歳以上)の範囲で分布しています。

「仕事等時間」の推移を男女の年齢階級別に見ると、女性は25~29歳の変化が特に大きく、昭和51(1976)年の3時間19分から平成28(2016)年には5時間37分と、1.7倍に増加しています。平成13(2001)年以降は、30代も大きく増加(3時間18分→平成28年は4時間9分)しています。一方、男性は30代及び40代が最も長く、期間を通じて8時間20分前後で横ばいとなっています(図1)。

図1 男女別に見た家事・育児・介護時間と仕事等時間の推移(週全体平均)(年齢階級別,昭和51年→平成28年)
図1 男女別に見た家事・育児・介護時間と仕事等時間の推移(週全体平均)(年齢階級別,昭和51年→平成28年)

~6歳未満の子供を持つ夫婦の状況~

6歳未満の子供を持つ夫婦の状況を見てみると、妻の「家事・育児・介護時間」は、共働き世帯、夫有業・妻無業世帯のいずれでも増加しています。また、共働き世帯の妻の「仕事等時間」は4時間~4時間20分で、夫の5割程度となります。一方、夫の「家事・育児・介護時間」は、妻の就業状況による差はありません。「仕事等時間」は、妻の就業状況にかかわらず、8時間40分~9時間前後となっています。以上から、妻は「家事・育児・介護」に、夫は「仕事」に多くの時間を使っている状況に変化はありません。

~世帯構造の変化~

世帯の家族類型別割合について、昭和55(1980)年から平成27(2015)年の変化を見ますと、「夫婦と子供」から成る世帯及び「3世代等」の世帯の割合が低下し、「単独」世帯及び「夫婦のみ」の世帯の割合が上昇しています。ひとり親と子供の世帯の割合も上昇し(「女親と子供」7.6%、「男親と子供」1.3%)、「3世代等」の世帯(8.6%)を上回っています。また、30~50代で、「夫婦と子供」世帯割合の低下や、「単独」世帯割合の上昇が顕著となっています。

~共働き世帯の増加~

昭和55(1980)年以降、夫婦ともに雇用者の共働き世帯は年々増加し、平成9(1997)年以降は男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回り、特に平成24(2012)年頃からその差は急速に拡大しています(図2)。共働き世帯数を妻の就業時間別に見てみますと、妻がフルタイム(週間就業時間35時間以上)の共働き世帯は、平成5(1993)年以降、緩やかに漸減傾向で推移したのち、平成27(2015)年以降は上昇傾向にあります。一方、妻がパート(週間就業時間35時間未満)の共働き世帯数は昭和60(1985)年以降、概ね一貫して上昇していて、令和元(2019)年の世帯数は昭和60(1985)年当時の約3倍に増加しています(図3)。以上から、増加の大部分は、妻がパートの共働き世帯によるものであるといえます。

 女性における「家事・育児・介護時間」の減少は、晩婚化や未婚化等によるものであり、結婚し子供を持つことで、共働き・専業主婦の、「家事・育児・介護時間」は大きく変わっていないか、むしろ増加しているといえます。

図2 共働き等世帯数の推移
図2 共働き等世帯数の推移

図3 妻の就業時間別共働き世帯数の推移
図3 妻の就業時間別共働き世帯数の推移

~家庭生活等についての意識の変化~

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方(性別役割分担意識)に反対する者は、男女とも長期的に増加傾向にあり、直近の令和元(2019)年の調査では、女性で63.4%、男性で55.7%となっています(図4)。しかし実際は妻が「家庭を守る」役割を果たしている夫婦がほとんどとなります。

図4 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方に関する意識の変化(男女別)
図4 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方に関する意識の変化(男女別)

~ワーク・ライフ・バランスや家族・世帯等の状況と「家事・育児・介護時間」・「仕事等時間」の変化との関係~

女性の「仕事等時間」は、過去20年間で男性の5割程度から、6割程度にまで増加していますが、20代以外は、男性の40~50%前後に留まり大きな変化はありません。一方、「共働き」の妻の「仕事等時間」は減少しています。男性の「仕事等時間」は、全体では減少していますが、30~40代は横ばい。6歳未満の子を持つ共働き世帯では、妻の約2倍の時間となっています。

以上から、夫も妻も「外で働く」ようになりましたが、働く時間は夫の方が圧倒的に長く、特に子育て期の男性の仕事負担が重いということが分かります。また、稼得役割の多くを夫が担うという分担については、変わっていません。

2.家族類型から見た「家事・育児・介護」と「仕事」の現状

次に、「単独世帯」「夫婦のみ世帯」「夫婦と子供世帯」といった家族類型ごと、さらには子供の年齢層別に、「家事・育児・介護」と「仕事」のバランスが現状ではどのようになっているかを見ます。

また、「見えない家事」ともいわれる家庭のマネジメントの夫婦間の負担状況を見たうえで、小さな子供のいる夫婦、介護が必要な者のいる家族に焦点を絞り、「家事・育児・介護時間」の長短のみならず、実施している内容や頻度に着目して、バランスや分担についても掘り下げていきます。

併せて、家族内の分担にとどまらず、外部サービスの利用についても現状を紹介します。

~「家事等と仕事のバランスに関する調査」について~

家事等と仕事のバランスや家族内の分担について、「時間」以外の実態(実際に担っている内容や頻度など)の詳細を把握するため、「家事等と仕事のバランスに関する調査」(令和元年度内閣府委託調査・株式会社リベルタス・コンサルティング)の調査結果を紹介します。

~家族類型ごとに見た家事・育児・介護時間と仕事等時間~

仕事をしている人の「仕事のある日」を見ると、女性の「家事時間」は家族類型により大きく異なりますが、男性の場合は家族類型により異ならないという傾向があります。単独世帯では男女差がほぼありませんが、夫婦になると女性は男性の2倍以上になります。

「夫婦+子供世帯」で仕事をしている人の「仕事のある日」を見ると、「育児時間」は、女性が男性の2.1~2.7倍程度になります。

仕事をしている人の「仕事のある日」の「仕事等時間」を見ると、女性の「仕事等時間」が短い順に、「夫婦+子供世帯(末子が小・中学生)」、「夫婦のみ世帯」と「夫婦+子供世帯(末子が就学前)」、「単独世帯」となります。一方、男性は、「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」、「夫婦+子供世帯(末子が小・中学生)」、「夫婦+子供世帯(末子が就学前)」となり、ほぼ反対の傾向を示しています。

また、「仕事等時間」「家事時間」「育児時間」「介護時間」の合計時間を見ると、子が就学前の男女が長いことが分かります(図5)。

図5 1日当たりの家事等時間と仕事等時間(有業者:仕事のある日)
図5 1日当たりの家事等時間と仕事等時間(有業者:仕事のある日)

~介護をしている人の状況~

介護をしている人の状況として、女性は、育児に加えて介護も担う状況が生じたとしても、介護負担がただ増加することにはならず、家族のケア全体の一部となるため、ワーク・ライフ・バランスは大幅に変わりません。一方、男性は、育児と介護両方を担う状況が生じた場合には「仕事等時間」を短縮し、家事・育児・介護に振り向けています。

~家事・家庭のマネジメントの分担~

家事・育児・介護には、作業に要する時間・実際の作業負担以外に、日々の家事をマネジメントする責任や日々の家庭生活を滞りなく送ることが出来るようにする責任に伴う負担もあります。こうした責任の所在を把握するために、夫婦の間での、「食材や日用品の在庫の把握」「食事の献立を考える」「家族の予定を調整する」といった家事のマネジメント、家庭生活のマネジメントを誰がしているかを見てみます。

主だった家事・家庭のマネジメント項目について、夫婦に分担状況を聞くと、「妻」「どちらかというと妻」との合計が、おおむね5割以上(「食材や日用品の在庫の把握」「食事の献立を考える」は8割超)です。

日々の家事をマネジメントする責任や日々の家庭生活を滞りなく送ることが出来るようにする責任は妻が多くを担っています(図6)。

図6 家事・家庭のマネジメントの分担(夫婦回答計)
図6 家事・家庭のマネジメントの分担(夫婦回答計)

~小さな子供がいる夫婦~

子供の年齢を「0歳~2歳」「3歳~就学前」「小学校1年生~3年生」に区分して、各区分の年齢の子がいる夫婦について、育児の分担を見ると、概ね妻7割、夫3割となります。子供の年齢が低いほど、わずかに夫の分担割合が上昇しますが、妻の育児負担は子供の成長により軽くなるとはいえません。

また、実施内容・頻度から、妻は日常的な育児(毎日、毎回)を担い、夫が限定的な場面(週に1~2回、月に1~2回等)で関わる傾向があります。「育児に関する予定の管理」「育児に関する情報収集」「保護者会活動」などは、妻の就業状況にかかわらず、夫の関わりが薄いです。また、夫の週間就業時間が長いほど、育児時間が短くなり、育児分担割合も低くなります。

~介護が必要な者がいる家族~

15歳以上でふだん家族を介護している人(以下、「介護者」とします。)は、近年、男女ともに増加していて、平成28(2016)年では男性介護者は277万6千人、女性介護者は421万1千人です。男性の介護している人の割合は39.7%となります。

同居の主な介護者を続柄別に見ると、「子の配偶者(女性)」が大きく減少し(平成10(1998)年は27.4%なのが平成28(2016)年は16.3%)、「息子」(同6.4%が17.2%)及び「夫」(同11.3%が15.6%)が増加しています(図7)。

図7 同居の主な介護者の推移(続柄別,平成10(1998)年→平成28(2016)年)
図7 同居の主な介護者の推移(続柄別,平成10(1998)年→平成28(2016)年)

家族の介護の担い手が近年多様化していて、男性が家族の介護を担うことが決して珍しくはなくなってきていることが分かります。

男女ともに働きながら介護をしている人は多く、平成28(2016)年において、女性介護者の50.7%、男性介護者の66.0%が仕事を持っています。特に、介護者のボリュームゾーンである50~60代において、男性介護者は50代で90.8%、60代で65.3%が、女性介護者はそれぞれ68.5%、40.1%が仕事を持っています。

 また、30歳未満の男性介護者は、最近5年間で仕事を持つ割合やフルタイム勤務の割合が大きく低下しています。この年代の男性介護者における仕事と介護の在り方が、短期間で大きく様変わりしている可能性があるといえます。(女性の30歳未満では仕事を持つ割合やフルタイム勤務の割合が上昇し、男性の30歳未満と割合が逆転しています)

また、家族が実施している介護の内容や頻度を見てみると、育児と比較して男女差が大変少ないです。

~外部サービスの利用~

外部サービス(家事・育児・介護支援サービス)の実際の利用率は低いですが、「外部サービスを利用しながら行いたい」とする回答は、「介護」が62.9%、「育児」が33.5%、「育児・介護以外の家事」が26.3%となり、潜在的な利用意向は、利用率より高くなっています。

3.よりよいバランス・分担に向けて

~「家事・育児・介護」における「働き過ぎ」~

有業者の仕事がある日の育児時間や介護時間が長いと、生活満足度の低下や、ディストレス(抑うつ・不安)が強い傾向が見られ、生活の質を下げることにつながる可能性があります。

~就業継続や両立等の難しさ~

第1子の妊娠・出産を機に仕事を辞めた理由として、「子育てをしながら仕事を続けるのは大変だったから」が最も高く過半数となります(図8)。

図8 第1子の妊娠・出産を機に仕事を辞めた理由(子供がいる25~44歳の既婚女性)
図8 第1子の妊娠・出産を機に仕事を辞めた理由(子供がいる25~44歳の既婚女性)

また、ライフステージに応じてどのような働き方が理想的だと思うかをたずねたところ、「正社員でフルタイム勤務」を希望する女性は、末子が未就園児の時は約1割であるのに対し、中学生以降になると4~5割程度まで回復しています。しかし、実際には「正社員でフルタイム勤務」をしている人は、末子が中学生以降でも2割弱にとどまっています。

介護・看護を理由として過去1年以内に離職した者の状況を見ると、平成29(2017)年には9.9万人となっていて、その内訳は、女性7.5万人、男性2.4万人で、女性が76%を占めています。離職者総数は減少しており、その主たる要因は、女性の離職者数が平成14(2002)年から平成29(2017)年までに約3割減少している点にあると考えられますが、依然として介護・看護を理由に離職する者の多くは女性です(図9)。

図9 介護・看護を理由とした離職者数の推移(男女別)
図9 介護・看護を理由とした離職者数の推移(男女別)

介護と仕事との両立については、介護が必要な親の有無に関わらず、40~50代の就労者では男女ともに7割以上が不安を感じています。不安の内容としては、「自分の仕事を代わってくれる人がいないこと」「介護休業制度等の両立支援制度を利用すると収入が減ること」等が多いです。

~より良いバランス・分担に向けた視点~

以上のように、「家事・育児・介護」の負担が女性に偏っている現状があり、生活満足度等への影響、就業継続や仕事との両立の難しさにつながっている状況にあります。その改善には、男性に期待されている「仕事」の在り方や男性自身の「仕事」への向き合い方の変革と併せて、男性の「家事・育児・介護」への参画を進めていくことが必要です。

また、女性の「仕事」による稼得役割を確保し、男性が家族ケアを担えるようにしておくことは、家庭単位で見た場合のリスクヘッジという側面もあります。

それに加え、「家事・育児・介護」を家庭内で分担するのみならず、担い手の多様化や多様な外部サービスの活用等が重要です。

本白書では、ここで紹介した以外にも、様々なデータや取組事例を紹介しています。詳しくは、内閣府ホームページを御覧ください。

http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/index.html


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