「共同参画」2020年9月号

巻頭言

男女共同参画に向けて「変わるべきもの」はなにか

世界各国で「ジェンダーの主流化」が提唱されて30年ほど経ちます。しかし日本では、いまだに「男性稼ぎ手」家庭が多く、家事・育児・介護の大半を女性が担っています。令和2年版「男女共同参画白書」でも、非常に根強い性別分業の実態が描かれています。女性の労働力参加が増えたといいますが、未婚化による女性の継続雇用の影響を除くと大筋では変化していません。「共働き世帯が増えた」とはいいますが、その多くは妻がパートタイマーの世帯です。2018年「労働力調査」によれば、「夫婦と子どもからなる、妻年齢25-34歳の世帯」に限ったとき、夫婦ともに週労働35時間以上であるフルタイム共働き世帯は17.9%で、専業主婦世帯はその倍以上、38.3%です。こういった数字だけ見れば、「この30年、未婚化が進んだ以外に何が変わったのか?」と思ってしまうほどです。

原因の一つは、変えるべきターゲットを外してきてしまったことにあります。変わるべきは女性ではなく、男性あるいは社会(特に有償労働の仕組み)です。男性は慢性的長時間労働で疲弊し、家庭参画が大幅に遅れています。介護分野では参画が目立ちますが、これは少子化で親のケアの際に自分以外にあてにできるきょうだいが減ってしまったことと、「自分の親の面倒は(配偶者ではなく)自分で見る」という成人親子関係の「個別化」の影響です。

新型コロナの影響で特に男性の在宅勤務が増え、これからも少しずつ男性の在宅時間は増えていく可能性があります。ケアワークやサービス職に就くことが多い女性よりも、男性の方がリモートワークに向いている仕事をしていることが多いからです。ピンチをチャンスに変え、家で「仕事」(有償労働も無償労働も)ができる男性が増えていくことを願っています。

立教大学教授 萩原なつ子
立命館大学産業社会学部教授
筒井淳也

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