「共同参画」2020年8月号

巻頭言

災害対応力を強化する女性の視点
~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~

東日本大震災の発生をうけて策定された「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」(平成25年)は、阪神・淡路大震災、新潟中越地震での対応経験を持つ委員も参加し、多角的な視点から議論を深めて出来上がりました。政府の方針がしっかりと提示されたことから、男女共同参画に関心を持つ人だけでなく、徐々に防災関係者にもその重要性が認識されるようになり、国の「避難所運営ガイドライン」(平成28年)や、自治体の防災基本計画や避難所運営マニュアルにも反映されてきました。

しかし、いまだに防災・危機管理行政においては、男女共同参画部局や男女共同参画センターの関与が不十分な状況があること、災害が多発していることなどから、更に内容を徹底・充実させていく必要性が生じたため、改訂版として「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」が新たに策定されました。検討会委員の豊富な知見と、自治体や市民団体のみなさまのご協力によるヒアリングを踏まえたもので、多数の事例が盛り込まれ、現場で使えるチェックシート類も種類を増やすなど、実践性の高い内容となっております。

また、新型コロナウィルス感染症のリスクが世界を脅かしていますが、国際的にも女性の家族ケアの負担の増大、家庭内暴力の増加、医療職における女性割合が多いにもかかわらず感染症対策の意思決定の場に十分に参画できていない、といった問題が指摘されているだけに、本ガイドラインがこのタイミングで公表された意義も大きいと考えます。

とはいえ、平常時の男女共同参画の取り組みの基盤の充実がなければ、災害対策にも限界が生じてしまいます。また、ガイドラインも作っただけで終わることのないよう、活用の徹底が求められますが、それには幅広い層のみなさまのご関心・ご協力が不可欠です。みなさまの手で新ガイドラインにエネルギーが吹き込まれ、大きく育っていくことを願っています。

立教大学教授 萩原なつ子
減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表/
早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員
浅野幸子

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