「共同参画」2020年7月号

特集2

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター支援状況等調査の概要
内閣府男女共同参画局推進課 暴力対策推進室

1. ワンストップ支援センターとは

「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」(以下、「センター」という)1は、性犯罪・性暴力の被害に遭われた方に対し、被害直後からの総合的な支援を可能な限り1か所で提供することで、被害者の心身の負担を軽減し、その健康の回復を図ること等を目的としたものであり、各都道府県に置かれています。

2. 調査の概要

センターへの相談件数は伸び続けており、令和元年度は、約4万件に到達しました。性犯罪・性暴力の被害者支援の重要性が高まる中、今後の施策の検討に役立てるため、内閣府では、センターにおける支援実態等に関する調査研究を実施しました。

本調査は、内閣府として初めての調査であり、令和元年6月1日から8月31日までに全国のセンターにおいて対応した全ての相談を対象としています。

〇相談件数

電話相談は延べ7,606件、実人員2,755人、面談は延べ1,600件、実人員818人でした2。また、メール相談を実施しており、かつ調査期間中にメールでの相談があったセンターは12か所ありました。

〇相談受付時間帯

電話相談を受け付けた時間帯は、「12~17時」(42.1%)が最も多かったですが、「22時~9時」という夜間の時間帯も13.2%、24時間対応のセンター(20か所)に限ると17.9%であり、夜間の相談対応に対するニーズも一定数あることがうかがえます(図表1)。また、17時から翌朝9時までの相談件数は、全相談件数の3分の1になります。なお、24時間対応のセンターに限れば、相談件数の38.4%と約4割を占めます。

図表1 電話相談受付時間帯(n=7,493)
図表1 電話相談受付時間帯(n=7,493)

〇電話相談・面談までの時間

電話相談では、過去の被害(1年以上前)についての相談が26.3%を占めていました。そのうち、「概ね10年以上」も11.1%であり、長期にわたって性暴力の被害に苦しんでいる被害者も多いことがわかります(図表2)。

また、面談で最も多かったのは「72時間以内」(23.9%)であり、緊急避妊ピルの処方など、急性期における医療支援に対する被害者のニーズがうかがわれます。

図表2 電話相談・面談までの時間
図表2 電話相談・面談までの時間

〇被害者の性別―男性被害者も約1割

センターに寄せられた電話相談のうち、女性被害者は87.7%、男性被害者は10.4%でした。通常、電話相談から面談に移行しますが、面談のうち、男性被害者が2.2%であったことから、男性はより面談につながりにくいことがうかがえます。

〇被害者の年齢―10代以下が約4割

面談では、「20歳台」が31.3%、次いで「中学卒業以上19歳以下」の22.3%、「30歳台」の15.2%となっています。19歳以下の被害者が40.6%と、約4割を10代以下の被害者が占めており、若年層の比率が高いことが確認されました。さらに、中学生以下に限っても、約2割に上っています(図表3)。

図表3 被害者の年齢
図表3 被害者の年齢

〇被害の内容

電話相談、面談ともに「強制性交等・準強制性交等」が最も多くなっており、面談では半数以上を占めました(図表4)。また、面談では、「監護者からの強制性交等・強制わいせつ」が約1割(9.6%)に上りました。

図表4 被害の類型
図表4 被害の類型

〇加害者との関係

―親や家族からの性被害が約2割

電話相談、面談ともに「友人・知人」(電話相談:20.8%、面談:21.8%)が最も多く、次に「職場・バイト先関係者」(同12.2%、14.7%)となっています。

次いで、面談では、「親」3からの被害が13.2%であり、「その他家族・親族」(6.1%)と合わせると約2割に上りました(図表5)。

また、「SNS・ネットで知り合った人」は11.4%でした。「監護者からの継続的な暴力によりSNSで居場所を求め、そこでつながった人から被害に遭っている」といった意見もありました。

「知らない人」との回答は12.0%であり、顔見知りによる性暴力被害の割合が高いことが示されています。

図表5 加害者との関係
図表5 加害者との関係

〇協力病院の数

センターと連携して支援に当たる協力病院は、回答のあった35のセンターで1,244か所、1センターあたり平均で約36か所となっています。多くのセンターが、拠点となる病院あるいは複数の協力病院と連携しながら医療支援にあたっています。

一方で、自由記述欄には、「夜間・休日に受け入れてもらえる病院が少ない」「複数の協力病院が中心部に集中していることで、地理的に医療機関へのアクセスが難しい被害者もいる」といった意見も挙げられており、拠点となる病院を確保すること、加えて地理的なバランスやアクセスを考慮しながら協力病院を増やすことも課題です。

〇支援体制の課題

支援員の確保については、30か所のセンターが「支援員のなり手が少ない」という課題を抱えています。支援員の専門性については、センターの半数以上が「ケースをコーディネート(相談者の希望、事案の内容に応じてセンターと専門の支援機関をつなぐ)できる支援員が少ない」「スーパーバイズできる支援員が少ない」という課題を抱えています。また相談員と兼務していない、センターの事務的業務に従事する事務局員が「0名」のセンターが半数以上(57.1%)であり、多くのセンターで相談員が相談対応をしながら事務的な業務もこなしている実態がうかがえます。

夜間・休日の相談対応については、35か所のセンターが「支援員の確保が難しい」という課題を抱えており、24時間365日化に向けた最大の課題は支援員の確保であることがわかります。一方で、「夜間・休日の体制整備の必要性をあまり感じない」は5か所のセンターにとどまり、多くのセンターが夜間・休日の体制整備の必要性を感じていることがうかがわれる結果となりました。

3. 被害者支援の中核としてのセンターの機能強化に向けて

令和2年6月11日に決定した「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」には、本調査の結果も踏まえて、センターの機能強化によって被害者支援の充実を実現するための取組が盛り込まれています。

被害直後のできるだけ早期に支援につながることが重要ですので、全国共通短縮番号の導入や無料化の検討、メールやSNS等の多様な相談方法の充実などを進めていきます。また、全国どこでも24時間相談できることが重要である一方で、人材面での課題が非常に大きいことから、国として、夜間休日コールセンターの設置を検討します。併せて、地域における被害者支援の中核的組織としてのセンターの機能強化が必要ですので、センターの体制の充実や地域における関係機関の連携強化を推進していく必要があります。病院をはじめとする関係機関との連携強化、コーディネーターや事務職員の配置、相談員等に対する研修による質の向上等を進めます。

被害に遭われた方が、躊躇なく相談でき、適切な支援に迅速につながることができるよう、引き続き、被害者支援のための取組の充実を進めていきます。

(注)
1.行政が関与するセンターの一覧は、男女共同参画局WEBサイトに掲載されています。


http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html

2.設問によって回答対象相談者数が異なる場合があります。
3.「親」には実親、養親、継親、親の交際相手を含みます。

(備考)調査実施:株式会社リベルタス・コンサルティング

本調査の詳細は男女共同参画局WEBサイトでご覧になれます。


http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/r02_top.html

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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