「共同参画」2020年6月号

トピックス2

令和元年度 諸外国における政治分野への女性の参画に関する調査研究
内閣府男女共同参画局推進課

 日本の政治分野への女性の参画状況は国際的に見ても遅れており、例えば、衆議院議員に占める女性の割合は9.9%で、世界191か国中165位※となっています。

 このような状況の中、「男女の候補者の数ができる限り均等となること」を目指すことを基本原則とする「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(平成30年法律第28号)が平成30年5月23日に公布・施行されました。内閣府男女共同参画局では、法律の施行も踏まえ、我が国の政治分野における男女共同参画のための取組の参考となる情報を得ることを目的として、平成30年度のイギリス・フランス調査に引き続き、令和元年度は大韓民国(以下「韓国」)、オーストラリア、カナダ、メキシコを対象として取組や動向を調査しました。以下、令和元年度調査から得られた韓国、オーストラリア、カナダ、メキシコにおける取組を紹介します。

※ 本稿掲載の女性議員比率及び順位は、列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union ; IPU)の“Women in national parliament”による2020年2月20日最終閲覧時の下院又は一院制議会の順位。


出典:IPU及び各国の議会・選挙管理委員会作成資料
[ ]内は2020年1月時点の値

1. 韓 国

 韓国では、2000年より法的候補者クオータ制が導入、順次改正されており、小選挙区・比例代表並立制の選挙制度において、比例代表では50%以上クオータが義務化され、奇数順位に女性を配置しなければならないとされています。小選挙区では30%クオータが努力義務で規定されています。また、政治資金法により、政党交付金の10%を女性発展基金として使用することとされているとともに、各政党が小選挙区に女性候補者を推薦した比率に合わせて女性候補者推薦補助金が支給されるというインセンティブが設けられています。

 女性候補者推薦補助金は、総額42億ウォン(約4億円)で(有権者×100ウォン)、配分されるのは選挙がある年です。小選挙区の全定数の3割を超える女性候補者を擁立した政党があれば、その政党は満額受給でき、他の政党には支給されません。複数の政党が3割を超えた場合は、その政党間で規定に応じて配分されます。韓国では地方選挙においても小選挙区・比例代表並立制を採用しており、小選挙区に30%の努力義務、比例代表に50%の義務規定を設けています。比例代表に関しては基準に満たない選挙名簿を受理しない仕組みとなっています。

2. オーストラリア

 オーストラリアでは、政党による自発的なクオータ制が行われており、労働党において1994年に女性候補者の比率を35%とする党内クオータを導入しました。その後、2002年に40%、2015年に50%と段階的に比率を引き上げています。 2019年には連邦上院においては、議員76人中38人が女性となりパリテ(男女同数)が実現しています。

 また、労働党系の独立団体であるエミリーズ・リストは、アメリカの団体を参考に、1996年に設立された団体です。(注 EmilyとはEarly Money Is Like Yeastの略語で、(女性候補者に対する)初期のささやかな資金援助は、イースト菌のようにパンだねを大きく膨らませて成果を上げることができるという言葉の頭文字を取っています。)エミリーズ・リストは、支援する候補者に対する資金調達・援助、政治的・個人的なネットワーク作り、メンターリングやデブリーフィング(報告を聞いてもらうこと)等の活動を行っています。メンバーは現在1,100人程度で、これまでに200人以上の女性候補者を当選させてきました。エミリーズ・リストによって恩恵を受けて当選した議員が、次の女性を支援するという循環型の構造になっています。

3. カナダ

 カナダでは、政党による自発的なクオータ制が行われており、新民主党が1985年に女性候補者を50%以上とする目標を掲げ、自由党が2007年に女性候補者を3分の1以上にするという目標を掲げています。自由党には、党内委員会である自由党女性委員会(NWLC)が設けられており、女性候補者のリクルート、研修、メンター、財政支援を行っています。

 また、公選職に女性を増やすことを目的とする超党派の市民団体であるイコール・ボイス(Equal Voice)が2001年に創立されました。連邦下院の全338選挙区から若い女性を一人ずつ招待し、連邦議会議員の仕事を学んでもらう「参政権の娘たち」というイベントで有名になり、イベントの参加者で、地元コミュニティに変化を起こす活動をする女性に対して一人当たり2,000カナダドル(17万2,000円)の資金提供を行っています。

4. メキシコ

 メキシコでは、2002年に女性候補者を30%とする法的候補者クオータ制が導入された後、2008年に40%、2014年に50%と段階的に比率が引き上げられています。2019年には、全公的部門にパリテを適用する憲法改正が行われました。上院・下院共に、比例名簿の順位を男女交互とし、選挙の度に女性と男性を交互に名簿の1位とすることとなっています。

 また、2006年より政党交付金の2%を女性のための研修に使うことが義務化され、2014年には3%に増加されました。メキシコの政党交付金は約43億ペソ(約240億円)で、その3%の1.29億ペソ(約7億5,300万円)が女性の研修に用いられており、女性の研修以外に使われたことが判明した場合は、政党はその150%を罰金として支払うこととされています。

 さらに、パリテが守られているかどうか、女性の政治参画監視機構が監視を行っています。女性の政治参画監視機構は、2014年に国家選挙管理機構(INE)、国家女性庁、選挙裁判所の3機関が共同で設置したプラットフォームです。議長を3機関で持ち回りとし、政治家や研究者が参加する連合体となっています。男女比の調査だけではなく、政党が候補者に使うキャンペーン費用の男女差や、メディアにおける政治家の男女別露出時間を調査し、情報公開を行い、世論喚起という意味でも重要な役割を果たしています。この監視機構に参画する国家女性庁もかなり充実した体制となっており、ジェンダー主流化のための監視能力を有し、女性差別撤廃条約に国内政策が違反していないかを監視し、ジェンダー統計レポートも刊行しています。

内閣府男女共同参画局では、引き続き政治分野における男女共同参画の推進に向けて国内外の実態調査等を進めていきます。

報告書の詳細をご覧になりたい方は、内閣府男女共同参画局WEBサイトをご覧ください。

http://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/index.html#seijibunya_info

なお、使用されている為替レートは、原則2020年1月時点の平均レートを適用。

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