「共同参画」2020年5月号

特集1

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2019
特集「ワーク・ライフ・バランスの希望と実際の一致状況」
内閣府男女共同参画局推進課

 内閣府では、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(2007年12月策定)に基づき、官民一体となって、様々な取組を進めています。「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」「仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議」では、年度ごとに最新の取組状況と課題等を「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート」にまとめ、公表しています。

 今回は、令和2年3月末に発行した2019年度のレポートの中から、巻頭特集として取り上げた「ワーク・ライフ・バランスの希望と実際の一致状況」について御紹介します。

1.ワーク・ライフ・バランス優先内容の希望と実際の一致の状況

 ワーク・ライフ・バランスの実現状況について「仕事」「家庭生活」「地域社会・個人の生活等」の3つについて、何を優先したいか、希望を調査したところ、「『家庭生活』を優先」又は「『仕事』と『家庭生活』をともに優先」の回答割合が高くなっています(図表1)。

 一方、実際の生活においては、「非就労者」を除いて「『仕事』を優先」と回答した割合が高く、希望と実際の働き方のギャップが存在しています。ただし、「非就労者」では「『家庭生活』を優先」と回答した割合が希望・実際ともに高くなっています。

 なお、非就労者の就労についての意識を見てみると、「仕事を通じて、社会との関わりを持ちたい」 について「そう思う」又は「ややそう思う」の回答割合は女性が34.2%と、男性の約2倍となっています(図表2)。

 次に、1年以上の離職期間がある回答者(現在は就労している者及び以前は就労していたことがあるが、現在は非就労者)の離職のきっかけ(図表3)を見てみると、男性の離職のきっかけは、「転職」と回答した割合が高く、一方、女性は「結婚」「第一子の妊娠・出産」といったライフイベントを機に離職に至っている場合が多い現状です。

 以上のことから、就労・非就労に関わらずワーク・ライフ・バランスの希望と実際が一致していない状況にある人々が一定程度いることが分かります。

【図表1 WLBの優先内容の希望と実際】
図表1WLBの優先内容の希望と実際

【図表2 仕事を通じて、社会との関わりを持ちたい】
図表2 仕事を通じて、社会との関わりを持ちたい

【図表3 離職のきっかけ】
図表3 離職のきっかけ

2.働き方の実態

 主な仕事の週当たり労働時間については、「正社員」では男性・女性とも「週40~50時間未満」の回答割合が最も高く、また、「正社員・男性」「雇用者以外の就労者・男性」で約3割が「週50~60時間未満」又は「週60時間以上」と回答しています。

 「労働時間が長い」と思うかどうかについては、「正社員」で「そう思う」又は「ややそう思う」の回答割合は男性36.3%・女性33.6%に上ります(図表4)。

 年次有給休暇の取得状況については、「非正社員」よりも「正社員」の方が休暇の取得日数が長い傾向にあります。しかし、「5日未満」(※)の回答割合は「正社員」「非正社員」ともに約3割となっています(図表5)。

【図表4 労働時間が長い】
図表4 労働時間が長い

【図表5 年次有給休暇の取得状況】
図表5 年次有給休暇の取得状況

 次に、雇用者の柔軟な働き方に関する希望と実態を聞いたところ、「正社員」男女ともに4割を超える回答者が、「始業時間・就業時間の繰上・繰下を柔軟に変更する」「勤務時間中に、数時間程度中抜けをする」「フレックスタイム」「テレワーク・在宅勤務」のいずれについても、「してみたいが、できていない」と、答えています。

 このことから、柔軟な働き方をしたいとの希望を持っているものの、実際にはできていない状況がわかります。

 さらに、「長く働くことよりも、効率よく働くことが評価される」とした回答割合が、約3~4割である(図表6)ことから、柔軟な働き方ができる制度を利用して効率よく働くことが、正当に評価されにくい状況があることが考えられます。

【図表6 長く働くことよりも、効率よく働くことがよしとされる】
図表6 長く働くことよりも、効率よく働くことがよしとされる

3.生活時間の実態

 平日における家事時間について見てみると、男性は、「まったくしていない」又は「30分未満」の回答割合が「正社員」「非正社員」で約5割、「雇用者以外の就労者」「非就労者」で約4割です(図表7)。一方で女性は、「1~5時間未満」の回答割合が「正社員」で約5割、「非正社員」「雇用者以外の就労者」「非就労者」で6割以上となっています。このように家事時間の長短については、就労形態よりも性別による差が大きく、家事の担い手が主に女性であり、負担が偏っていることの表れと考えられます。

【図表7 回答者本人の平日における家事時間】
図表7 回答者本人の平日における家事時間

4.誰もが希望を実現するために

 今回の調査によって、就労者の多くが仕事を優先することによって、ワーク・ライフ・バランスの希望を実現できていない状況や、女性が家事に多くの時間を費やしたり、ライフイベントを機に離職を選択したりしている状況があることが示されました。また、非就労の女性は、男性に比べ、仕事を通じて社会との関わりを持ちたいと考えている割合が高い傾向にあることも分かりました。

 この状況を踏まえ、社会全体としてワーク・ライフ・バランスを実現するためには、まず家事・育児等の家庭責任が女性に偏っている状況を解決する必要があり、引き続き、男性の家庭生活(家事・育児等)への参画を促進することが重要です。そのためには、育児の分担、家事の合理化・省力化(便利家電の活用など)について夫婦間で話し合うことや、家族・夫婦の協力体制を整えるという考え方を共有することも、家族との充実した生活への第一歩となるのではないでしょうか。

 加えて、多くの男性が家庭生活を優先したいと回答していることも見逃せません。企業等による柔軟な働き方の制度の導入とともに、制度を利用しにくい職場風土を改善し、利用促進のため制度自体の周知を行うことや、制度利用の手続き簡素化等の運用改善を図ることが必要と考えられます。

 さらに、企業や個人がモノやサービスを調達・消費する際に、取引先やそこで働く労働者のワーク・ライフ・バランスを考慮する、過剰なサービスを求めない、といったことも社会を変える一つの方策となると思われます。

 以上のことから、引き続き官民一体となって、個の希望が叶えられる社会を目指し、具体策の検討に資する更なる現状分析や先行事例の収集及び周知、普及を図ること等により、仕事と生活の調和の実現を目指していく必要があります。

5.ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組事例

 誰もがワーク・ライフ・バランスの希望を実現できる社会をつくるためには、国や地方公共団体、企業が一丸となり、女性の活躍推進や男性の育児参画を支援することが重要です。

 2019年度のレポートでは、そのような取組の一環として、第二東京弁護士会によるクオータ制の導入や、フィンランド政府による切れ目のないファミリー子育て支援(図表8)、神奈川県庁によるパパの子育て参加促進施策(図表9)を御紹介しています。

【図表8 母子の無料相談所 「ネウボラ」(フィンランド)】
図表8 母子の無料相談所 「ネウボラ」(フィンランド)

【図表9 父子手帳 「パパノミカタ」とパパサークルの活動 (神奈川県)】
図表9 父子手帳 「パパノミカタ」とパパサークルの活動 (神奈川県)

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2019の詳細は、HPをご覧ください。

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-19/zentai.html

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