「共同参画」2019年11月号

特集3

APEC 女性と経済フォーラム2019
内閣府男女共同参画局総務課

APEC(アジア太平洋経済協力)は、アジア太平洋地域の21の国・地域(エコノミー)が参加する経済協力の枠組みです。

アジア太平洋地域は、世界人口の約4割、貿易量の約5割、GDPの約6割を占める「世界の成長センター」です。

アジア太平洋地域の経済発展のためには、女性の新たな経済参画機会の創出が不可欠であるとの認識のもと、 APEC域内の閣僚や民間参加者が一堂に会する「女性と経済フォーラム〔WEF:Women and the Economy Forum〕」が、毎年開催されています。2019年は、9月30日~10月5日の6日間の日程で、チリのラ・セレナにおいて開催されました。日本からは、別府充彦(べっぷあつひこ)内閣府審議官及び林文子(はやしふみこ)横浜市長が参加しました。

 

APEC 女性と経済フォーラム(WEF)2019

本年のAPECでは、「女性、中小企業及び包摂的成長」が優先課題の1つとされ、WEFは「経済への女性の包摂の推進」をテーマとして開催されました。また、ハイレベル会合では、議長であるチリのイニシアチブにより、2030年までの達成努力目標を定めた「女性と包摂的成長のためのサンティアゴ・ロードマップ」が取りまとめられました。


各エコノミー代表
(前列右から3人目が、別府内閣府審議官)

■女性と経済に関する政策パートナーシップ第2回会合〔PPWE2: Policy Partnership on Women and the Economy〕(9月30日・10月1日)

PPWE2においては、我が国より「2020年までに管理職に占める女性の割合を高めるための個別行動計画(IAP)」及び我が国の拠出金を活用したプロジェクト「女性と経済に関する取組支援」の進捗報告を行うとともに、今後の計画について発表しました。さらに、「APEC女性と経済ダッシュボード2019」、「女性と経済フォーラム声明」及びAPEC初の女性の経済的なエンパワーメントに係るロードマップとなる「女性と包摂的成長のためのサンティアゴ・ロードマップ」の最終案について活発な議論が行われました。また、2020年PPWE行動計画の柱の1つとして、ロードマップの推進を重点取組事項とする予定である旨、チリより報告されました。


会議の様子(PPWE2)
〔写真:APEC 公式ウェブサイトより〕

■APEC BEST AWARD(10月2日)

サイドイベント「APEC Business Efficiency and Success Target(BEST)AWARD」は、優れた女性起業家・経営者を表彰するビジネスコンテストであり、成功体験、困難の乗り越え方、事業の拡大の経緯などを広く世界に共有することで新たな女性起業家を応援し、経済を活性化させることを目的として開催されています。本年は、10のエコノミーから20名の女性起業家が参加し、大賞を始めとする7つの賞において、各1名計7名の受賞者が選ばれました。日本からはオンラインで、小笠原恭子(やすこ)氏(株式会社グランディーユ代表取締役)、酒井里奈氏(株式会社ファーメンステーション代表)の2名が参加しました。


APEC BEST AWARDの参加者・主催者・審査員
〔写真:APEC 公式ウェブサイトより〕

本イベントでは、林横浜市長がオープニングスピーチを行い、参加した女性起業家にエールを送りました。


林横浜市長によるスピーチ
(APEC BEST AWARD)

■女性と経済に関する官民対話〔PPDWE : Public-Private Dialogue on Women and the Economy〕(10月3日)

官、民、学識経験者などから女性リーダー等が参加し、4つのサブテーマに沿って活発なパネルディスカッションが行われました。


ディスカッションの様子(PPDWE)

また、林横浜市長がセッション4「指導的地位の女性の数を増やす」にパネリストとして登壇し、女性リーダーの育成・登用における横浜市の取組を紹介しました。

■女性と経済に関するハイレベル政策対話〔HLPDWE: High Level Policy Dialogue on Women and the Economy〕(10月4日)

最終日には、閣僚級による政策対話が行われ、女性と経済に関する各エコノミーの取組方針等についてスピーチが行われました。

別府内閣府審議官は、セッション1において「女性活躍が持続的な経済成長に不可欠」との認識のもと、2013年から官民挙げて取組を加速してきた、(1)女性の登用の促進、(2)保育所などの整備、(3)男性の意識改革、(4)働き方改革といった4つの取組を紹介するとともに、女性が活躍できる環境は男性にとっても働きやすい環境であり、生産性の向上や経済の活性化につながっていくとのスピーチを行いました。セッション2においては、第4次産業革命やデジタル化について、AIの活用やSTEM分野への女性の参画促進、リカレント教育の拡充などについてスピーチを行いました。

  

女性と経済フォーラム声明

会合の最後に、フォーラムの成果である「女性と経済フォーラム声明」が採択されました。

声明のポイントは以下のとおりです。

(1)「女性、中小企業、包摂的成長」として、女性の経済参画が、APECの歴史で初めて議長のエコノミー(国と地域)の優先課題に取り上げられたことを歓迎する。
(2)女性が、資本にアクセスし労働市場に参加しようとする際に直面する文化的、社会的及び構造的障壁に対処するため、公共政策の策定を推奨する。また、性別による職業の分離、差別、ケア責任の不平等な負担が、女性に悪影響を及ぼすことに対処するために、公的及び民間部門が努力することを奨励する。さらに、ジェンダーによる賃金格差を対象とし、女性の採用、昇進等を強化するなど、より包摂的な労働市場をつくるための政策の採用を奨励する。
(3)女性が、デジタル経済や第4次産業革命において競争力を発揮するには、質の高い教育へのアクセス及び技能開発、能力形成、技術リテラシーが不可欠である。
(4)データは女性の経済参画を前進させるための基盤であることから、性別で細分化されたデータの収集、分析、公表、活用のための更なる努力を推奨するとともに、機会の平等と女性の経済的なエンパワーメントを効果的に推進する政策立案に情報提供することを要請する。
(5)「APEC女性と経済ダッシュボード2019」及び「女性と包摂的成長のためのサンティアゴ・ロードマップ」を歓迎する。


共同記者会見の様子
〔写真:APEC 公式ウェブサイトより〕

ニュージーランド女性省次官との会談

また、会議期間中、別府内閣府審議官は、ニュージーランドのレニー・グラハム女性省次官と会談を行いました。

別府内閣府審議官からは、日本の女性活躍、育児休業制度及び男性の育児休業の取得状況、防災などの取組について説明しました。

グラハム次官からは、ニュージーランドにおける男女間賃金格差を縮小するための取組や、DV対策の取組の紹介がありました。具体的には、ニュージーランドではDV被害者のための有給休暇制度を新設したとの説明がありました。通常の20日の有給休暇にプラスして10日間、DV関連で病院に行く場合などは1時間単位で取得が可能です。また、被害者には、リモートワークを含めた2か月間のフレキシブルな働き方を認めるルールを作ったとの説明がありました。


別府内閣府審議官とグラハムNZ女性省次官

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