「共同参画」2019年8月号

特集1

令和元年度
「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」開催報告
内閣府男女共同参画局総務課

 

1.主催者挨拶・基調講演

池永肇恵内閣府男女共同参画局長による主催者挨拶と基調講演により幕開けとなりました。

池永局長からは、2012~2018年の6年間で女性の就業者数が288万人増加(就業者数全体の増加384万人の75%)するなど、近年の取組により女性活躍が確実に進展してきている一方で、女性の活躍の大きな妨げになっているのが女性に対する暴力やハラスメントであること、東京圏への人口流出は男性よりも女性が多く、女性にとって魅力的な地域づくりが重要であることが述べられました。また、女性活躍推進法の一部改正や政治分野における女性の参画拡大、女性活躍関係の国際会議の開催など、政府の取組について説明がありました。


内閣府男女共同参画局 池永肇恵局長

2.特別応援メッセージ

続いて、定年間際にパソコンをはじめ、アプリ開発で注目を集めた若宮正子さんからは、男女共同参画社会を目指すための応援メッセージをいただきました。差別をしたがる人は、性別でも差別する。男女共同参画社会のためには、差別をなくす必要がある。一人一人の個人が輝く社会になれば、差別がなくなる。そのためには、あらゆる機会をとらえて勉強し、新しい時代に必要な存在となることが必要。自分に投資し、強制されるのではなく、主体性をもって勉強することが大切。輝く、たくさんの個人の力で、日本を元気にし、世界に貢献するようになることを期待している、と会場のみなさんを勇気づけました。


若宮正子さん

3.取組事例紹介

取組事例紹介では、様々な活動にチャレンジし、輝いている3名の女性にそれぞれの取組をご紹介いただきました。

『妻有ビール(株)』代表取締役の髙木千歩さん(新潟県)は、東京から十日町市に移住し、地場産の原材料を使用したビールの製造・販売を通じて、地域おこしにつなげる取組にチャレンジしています。地域の農家とのつながりを大事にして、ビールクラフトの醸造所を立ち上げて働く場所を提供し、地域内での消費や、ビアフェスを開催して交流人口を増やすなど、地域で連携しながら、様々な活動に取り組んでいます。


妻有ビール株式会社 代表取締役 髙木千歩さん

特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワーク“やっぺす”』代表理事の兼子佳恵さん(宮城県)は、震災後、復興まちづくりの担い手としての女性の人材育成・社会進出を支援しています。公営住宅のコミュニティ支援、起業支援、人材育成スクール、子育て支援など、子育て世代の母親を中心とした女性スタッフが、様々な分野へ活動を拡げています。


特定非営利活動法人 石巻復興支援ネットワーク“やっぺす”代表理事 兼子佳恵さん

『(株)シードハウス』代表取締役の小林コトミさん(神奈川県)は、出産後の再就職で苦労した体験を経て、プログラム未経験の主婦でも隙間の時間で学べるアプリ「codebelle」をリリース。また、コワーキングスペースを兼ねたプロジェクト型学習塾を立ち上げ、さらに女性専用のコワーキングを運営して女性起業家を講師としてキャリアプランニングを行うなど、女性のキャリアアップを支援しています。


株式会社シードハウス 代表取締役 小林コトミさん

4.「多様な選択を可能にする学びに関する調査報告」

平成30年度に内閣府が実施した「多様な選択を可能にする学びに関する調査」について、調査報告が行われました。

報告は、内閣府男女共同参画局の宮崎千晶調査官が進行役となり、調査検討委員を務めた立命館大学産業社会学部教授の筒井淳也さん、リクルートワークス研究所調査設計・解析センター長の萩原牧子さんにご意見を伺いました。

調査は、国内に住む22~59歳までの男女3,000人ずつを対象とし、インターネットで行い、進路選択で重視した点や家族からの影響(性別を理由にした発言があったかなど)の振り返り、社会人になってからの学び直しの状況、性別役割分担をはじめとするジェンダー意識などの項目について回答いただきました。


内閣府男女共同参画局 宮崎千晶調査官

萩原さんは、

  • 女性は、出産や育児で離職するケースが多く、その後に復職するまでを考えて進路選択をしている。日本の雇用システムでは、一旦離職をしてしまうと、復職に当たり、元のような仕事内容・雇用形態で働くのが難しい実態がある。
  • 進路選択に当たり、家族から「男子だから」「女子だから」という性別を理由とした発言をされたことは、男性の方が多く、また、若い世代ほど多い。これは、女性の進学率が上がり、制約をする必要性が薄れてきた一方で、男性は、今でも学歴が将来の働き方に大きく影響しているためではないか。
  • 今回の調査では 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に対し、「そう思う」と回答した割合が、男性では若い世代が高く、年齢を重ねるごとに低くなっていく傾向があるのが意外。

などとお話されました。


リクルートワークス研究所 調査設計・解析センター長 萩原牧子さん

筒井さんは、

  • 日本はまだ共働き社会に移行している途中である。日本的雇用が変容したり、共働き社会への移行が進んだりして男性が転職や再就職をする機会が増えれば、男性にも資格志向が増えてくる可能性がある。この調査とは別のデータだが、結婚の際には、親が口を出す度合いは男性より女性の方が多いと言われている。親世代では、仕事(有償労働)の世界では男性がまだ優位であり、女性の結婚は相手の男性にかかっている、という意識があるのではないか。
  • 日本の企業の特徴は、社内の人材育成を重んじるというところ。内部で教育をしたり、配置転換をするというのは、ややもすれば転勤や残業ありきということにもなり、女性管理職比率の低さにも結びついている。
  • ワーク・ライフ・バランスという言葉は、仕事と家事・育児等以外の自由の時間も確保しようということ。フルタイムで働いていて、さらに家事・育児等も加われば、仕事以外の活動のための学びができない理由として「時間がない」という回答が一番になるのは当然。
  • 働く女性が増えているとはいえ、フルタイム同士の夫婦は有配偶者の中で25%未満。これからの家計は、女性が補助ではなく、男女共に支える、と意識をどう変えていくか、考えていかなければならない。

などと述べられました。


立命館大学 産業社会学部教授 筒井淳也さん

5.パネルディスカッション 「多様な選択を可能にする学びの充実」

立教大学社会学部教授の萩原なつ子さんをコーディネーターに迎え、日本大学薬学部薬学研究所上席研究員の大坪久子さん、昭和女子大学ダイバーシティ推進機構キャリアカレッジ学院長の熊平美香さん、大和総研研究員の是枝俊悟さん、大阪市立男女共同参画センター中央館(クレオ大阪中央)館長の沢田薫さんの4名のパネリストで、「多様な選択を可能にする学びの充実」をテーマにディスカッションが行われました。


大坪さん:『無意識のバイアス』という言葉を覚えてほしい。「あなたは女の子(男の子)だから」と周囲から言われたりして、子どもの頃から知らないうちに身についてしまっているような偏見。それが、男女間の差別、さらには障害の有無、宗教、民族等、グループで固まって他を差別することも引き起こす。『無意識のバイアス』は誰でも必ず持っているものであるが、小さな偏見が積み重なると、社会の大きな差別になってしまうので、一人一人がお互いに気を付けましょう。


日本大学薬学部薬学研究所 上席研究員 大坪久子さん

熊平さん:学生のうちからのキャリア教育と、社会人になってから学び直すリカレント教育が重要。キャリア教育は、今の学生の親世代ではまだバリバリのキャリアウーマンのモデルがおらず、イメージが持てないので、社会人の先輩等と直接お話ができる場を設けてあげることが効果的。リカレント教育も、日本は遅れているのが実情。自分もリカレント教育に取り組んでいるが、5年前は、女性は管理職になることを全く期待されておらず、「管理職になってほしい」と上司に言われても「管理職って一体何?」と話をしていたのが、最近は、みな自分なりのリーダー像を語り、管理職になることを前提に前向きに学ぶようになっている。人生100年時代を迎え、時代の変化に対応するために、新しいことを学ばなければならないのは大人も子どもも一緒である。


昭和女子大学 ダイバーシティ推進機構 キャリアカレッジ学院長 熊平美香さん

是枝さん:経済の観点で男女共同参画を考えてみると、夫がもし育休を取って多少出世が遅れてしまう、あるいは残業をしないことにより残業代の収入が減るということがあったとしても、妻もともに働いていれば、妻の収入で取り戻すことができる。ただし、夫が家事育児を全くしなければ、女性は働き続けることは非常に難しくなり、二人目の子どもも生みづらくなる。夫婦ともに家事育児に参画することは、非常に費用対効果の良い投資だと思う。そこで、男女ともに働き続ける社会を前提とするなら、やはり学校教育の場で、女性だけではなくて、男性にも一緒にライフプランニングを教えることが大事になる。転職や起業、学び直しについても、共働きの方が、パートナーの収入があるためハードルが低く、チャレンジしやすくなる。男性が家事育児に参加することは、妻が力をつけることにつながり、結果として自分も自由な時間を持つことができるようになる。


大和総研研究員 是枝俊悟さん

沢田さん:大阪市立男女共同参画センター(以下「センター」)では、結婚や出産を機に退社された女性が、子育てしながらでもスキルアップできる講座を開設したり、起業支援をしたり、理工系へ女子学生が進みやすくするための応援セミナーを開催している。個人が、可能性を広げるために、自身の努力ももちろん必要だが、それを後押しするために、大学をはじめ地域社会の資源を活用しつつ、長期的な視点でサポートできるセンターの役割は大きいと感じる。


大阪市立男女共同参画センター中央館(クレオ大阪中央)館長 沢田薫さん

議論のまとめとして、4人のパネリストの方々に、キーワードを発表してもらいました。

4人のパネリストの方々のキーワードとコメント表

最後に、コーディネーターの萩原さんにより、社会とどうつながっていくかのソーシャルキャリア、男女が協力して生きることでお互いが幸せになること、可能性を広げるための教育の機会が平等であることが、結果として一人一人の多様な働き方や生き方に結び付いていく、と締めくくり、閉幕しました。


立教大学社会学部教授 萩原なつ子さん

全国会議の詳細な模様は、内閣府HP http://www.gender.go.jp/public/event/2019/index.html
をご覧ください。


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