「共同参画」2019年5月号

トピックス2

ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究について
内閣府男女共同参画局推進課

1.資本市場の動き(背景)

資本市場では世界的潮流として、非財務情報であるESG(環境・社会・ガバナンス)情報を投資判断に組み込み長期的な投資リターンの向上を目指す、いわゆる「ESG投資」が拡大しています。我が国においても、年金積立金管理運用法人(GPIF)が平成29年7月にESG投資に参入、約1兆円の運用を開始することを発表しました。1兆円のうち約3,800億円は「日本株女性活躍指数(WIN)」に投資されており、同指数は、女性活躍推進法施行による企業の開示情報を活用して作られました。

また、議決権行使助言会社や大手機関投資家が、「役員に1名も女性が含まれていない場合、経営トップの取締役選任議案に反対票を投じる」との指針を示すといった動きもあり、資本市場において女性活躍推進の重要性が認識され始めています。

2.調査概要

こうした動きを受け、男女共同参画局では、ESG投資において機関投資家がどのように企業の女性活躍情報を投資判断等において活用しているのかの調査を行いました。

〈アンケート調査〉

日本版スチュワードシップ・コードに賛同する機関投資家等227社に対しアンケートを送付し、119社(回答率52.4%)から回答を得ました。アンケートでは、ESG投資の規模やその手法、女性活躍情報を投資判断に活用する理由、投資判断に資する情報開示等を回答項目としました。

〈ヒアリング調査〉

日本市場で活動する国内外の機関投資家、指数ベンダー、議決権行使助言会社等13社にヒアリングを行いました。ヒアリングでは、女性活躍と企業成長の関係性、評価できる開示方法等をお伺いしました。

〈先進企業インタビュー〉

アンケートやヒアリング調査で名前が挙がった女性活躍や情報開示に関し先進的な取組を実施する企業7社にインタビューを実施しました。企業の女性活躍取組やその背景、情報開示の方針等をお伺いしました。

3.調査結果

■ ESG投資の拡大

今回実施したアンケート調査によると、ESG投資残高について「1兆円以上」と回答した機関投資家が30.3%に上ることがわかりました。日本においてもESG投資が大きなインパクトを持つことが示されました。

【図表1 ESG投資残高】

■ 女性活躍と企業成長

本調査では、約7割の機関投資家が、投資判断や業務において女性活躍を活用する理由として、「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」と回答しています。

機関投資家が、女性活躍が企業業績に影響があると考える背景として、女性活躍が企業のイノベーション創出、働き方改革、人材の確保(採用、リテンション対策)、リスク低減等に繋がると考えていることが明らかになっています。

【図表2 投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由】

■ 機関投資家が活用する女性活躍情報と情報開示

本調査では、機関投資家が具体的にどのような女性活躍情報を活用しているのか、またどういった着眼点で評価しているのか等について機関投資家の考えをまとめています。

【図表3 投資や業務において活用している女性活躍情報】

例えば、機関投資家は投資や業務において活用している女性活躍情報として、女性取締役比率や女性管理職比率に着目しており、特に経営層・マネジメント層における女性活躍を注視していることがわかります。

また、機関投資家は単純に数字を開示するだけでなく、「経営戦略上との関連性で示す」ことや、過去データの有無等、開示の質に関しても一定の水準を求めていることが明らかになりました。機関投資家による企業価値算定に資する情報開示が、日本企業に求められていることが浮き彫りになっています。

4.今後に向けて

今後は本調査結果を、シンポジウム等を通じて、企業経営者やIR担当者に機関投資家の投資活動において女性活躍が重視されていることを広く周知していきます。その結果、企業の自発的な女性活躍の取組推進に繋がることを期待しています。


調査研究報告書では、上記内容のほか、機関投資家から名前が挙がった先進取組企業の事例紹介や、アンケート調査の全結果、英語版資料の掲載もしております。
ぜひご覧ください。
http://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/30esg_research.html

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