「共同参画」2018年12月号

特集

各国の駐日大使からのメッセージ(各国の男女共同参画の取組)

バングラデシュ、カナダ、フランス、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス
6か国の駐日大使より、男女共同参画の取組に寄せたメッセージをご寄稿いただきました。

ジェンダー平等を越えて
-英国において共同参画が意味するところ-
駐日英国大使 ポール・マデン閣下からのメッセージ

駐日英国大使


1 英国の「今」

2018年は、英国でジェンダー平等の機運が二つの観点から高まりました。

一つ目は、本年が、女性の参政権が認められてから100周年を迎える記念の年にあたることです。ロンドンのトラファルガー広場等で女性リーダーを賞すエキシビジョンが開催されたり、BBCで女性ゲストだけを集めた番組が放送されたりと、国民の間でジェンダー平等の意識が高まりました。

二つ目は、男女間の賃金格差に関する報告書がはじめて公表されたことです。現状、英国の男女間の賃金格差は過去最低の18%から改善傾向にある一方、同報告書を受け、全ての産業セクターで男性の方が高い給与水準にあることが分かりました。賃金平等の実現は依然としてまだ道半ばです。

さて、本誌のタイトルである「共同参画」ですが、英国におけるそれは、法的に見ると、ジェンダー平等を越えてより広い概念から捉えています。英国では、個人の権利と差別禁止の根幹を成す最も重要な法律として、「平等法2010」が2010年に成立しています。過去分立していた多くの関連法律が同法に一本化され、性的指向、障がい、マイノリティー等を包括的に扱った形で、個人の権利と差別禁止が規定されています。我々は、「平等法2010」が公平な社会の実現に向けて、非常に重要な基底を成していると考えています。

2 英国外務省の取り組み

英国外務省は、「全ての職員が自分の価値を見出され、ベストな能力を発揮できるオフィス」という観点から、省内で様々なアクションを取っています。例えば、女性、マイノリティー、障がい等の各分野で、平等な職場環境の整備のため、職員自らが組織したグループが形成されています。LGBTとその支援者で作るグループでは、トランスジェンダーに係るガイドラインを作成中です。

女性外交官の活躍も顕著で、昨年はイウジ・エメ氏が黒人女性としてはじめて英国大使に就任した他、東京勤務の経験もあるジョアンナ・ローパー氏が新設の「ジェンダー平等担当特使」に就任しました。本年は、女性初の国連大使にカレン・ピアズ氏が任命されるなど、女性が英国外交を力強く引っ張っています。

また、職場の勤務体系の柔軟性を高めることにも積極的で、例えば駐ザンビア英国大使の職を夫妻がワークシェアリングで務めた事例もあります。

私が勤務する駐日英国大使館も精力的に活動しています。一例として、2013年より毎年東京レインボープライドに参加、大使館内ではカップルのどちらかが英国籍である場合には同性婚登録とセレモニーを実施しています。10月には、小池百合子東京都知事と、国際的保険市場であるロイズにおける史上初の女性トップでありLGBT当事者であるインガ・ビールCEOを招き「Diversity and Inclusion(多様性と包摂)」に関する講演を行って頂きました。約100名の来場者を迎え、同テーマに対する日本の関心の高さが伺える好機となりました。

本年10月の講演会にて
本年10月の講演会にて。左から、
-インガ・ビールCEO(英国ロイズ保険会社)
-小池百合子東京都知事
-ポール・マデン駐日英国大使


3 より平等な社会へ向けて

英国は、2017年のジェンダーギャップ指数で世界15位(144か国中)を記録し、前年より順位を上げました。しかし英国社会では今なお、様々な側面で不平等が看取されることから、更なる努力が肝要です。日本も英国と同じく、公平な社会の実現に向けて種々施策を講じていると思います。日英は共通の価値観を有する友好国です。「共同参画」の分野でも皆様と大いに協力できると信じています。

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