「共同参画」2018年12月号

特集

各国の駐日大使からのメッセージ(各国の男女共同参画の取組)

バングラデシュ、カナダ、フランス、ニュージーランド、スウェーデン、イギリス
6か国の駐日大使より、男女共同参画の取組に寄せたメッセージをご寄稿いただきました。

バングラデシュにおける男女平等について
駐日バングラデシュ大使 ラバブ・ファティマ閣下からのメッセージ

駐日バングラデシュ大使


女性は変革と発展の推進者

私は女性初の駐日バングラデシュ大使です。私の国では、現在、数多くの「女性初」が起きています。政治、行政、司法、民間企業の要職に就くだけでなく、へき地で起業する女性も急激に増えています。伝統的な道徳規範は、女性の活躍を促進する現実的な政策に置き換わっています。女性は人口の半分を占めます。国が経済発展や貧困からの脱却を果たす中で、誰一人取り残されない経済発展が必要です。

私たちは、国の経済発展の中で女性の主流化を最優先事項と捉えており、女性の教育と経済的・社会的自立を重要課題としています。そのため、女性のための意欲的かつ大胆な開発戦略を策定し、ジェンダー予算を採用しました。女性の起業家は用地を提供され、金融機関から無利子の融資を受けられます。また、農村の女性や恵まれない女性の経済活動を支援する資金もあります。

バングラデシュは貧困や困難を抱える女性を対象としたマイクロファイナンスの先駆けであり、その成功は世界に広く知られています。女性には融資先としての信用力があり、ビジネスの才覚があることを証明し、女性に対する社会の伝統的な考え方を変えました。そして、経済的自立を通じて、女性は自分や家族に関する問題に積極的な役割を果たすことができるようになりました。

経済的・社会的自立には教育が重要であり、女性が教育を受けられるよう、多額の投資をしています。女性は高等教育までを無償で受けられます。教科書も無償で、奨学金を受けられます。小学校教員の60%を女性に割り当てています。初等教育就学率はほぼ100%で、初等・中等教育では男女間の格差が解消され、この分野の平等指数は世界のトップです。

女性の経済的な地位向上は、男女平等の実現に大きく寄与します。そのため、安全で女性が働きやすい職場づくりに力を入れ、託児施設を用意しています。バングラデシュは世界第2位の既製服の輸出国で、縫製産業で働く労働者400万人の90%が女性です。また、公共サービス、司法機関、軍隊、国連PKOの指揮官、外交官その他の専門職やジャーナリスト、スポーツ界などでも女性が進出し、活躍しており、さらに、世界各地で働き、外貨獲得に貢献しています。

国連PKOに参加する女性兵士
国連PKOに参加する女性兵士


一方、社会的包摂の実現を図るため、障害のある女性や高齢の女性、離婚女性、未亡人、母子家庭などの社会的に恵まれない女性を対象とした強力な社会的セーフティネットプログラムを開始しました。「一家庭、一農地」など、母子家庭を優先する画期的なプログラムでは、これまでに250万人余りの農村女性が直接恩恵を受けています。こうした政策は女性に対する伝統的な考え方や偏見を確実に変え、女性の地位を向上させています。

女性の政治参加と指導的立場での登用も進んでいます。1991年以来、総選挙で女性が首相に選出されています。国会では、初めて、議長、院内総務、野党代表が女性です。女性国会議員は72名で、そのうち50席が女性への割り当て議席です。各政党は2020年までに党委員会に占める女性割合を33%以上にすることが義務付けられています。地方自治体の女性割当議席は3分の1(33%)で、12,500名以上の女性議員がいます。2017年のGGIは、政治分野が7位で、総合評価では47位。周辺諸国や多くの先進国をも上回っています。シェイク・ハシナ首相は、女性支援の取組により、「Global Women’s Leadership Award」など、数々の国際的な賞を受賞しています。

国会で答弁するシェイク・ハシナ首相
国会で答弁するシェイク・ハシナ首相


私が今あるのはバングラデシュが変わったおかげです。国が発展と進歩を遂げる中、女性が然るべき地位を占めるようになっています。私自身、教育の役割や機会の大切さを実感しています。機会があったからこそ、今の私があるのです。私の世代は、女性の権利と発展を推進する強力かつ大胆なリーダーシップがあるという幸運に恵まれました。それでも、新たな障壁を毎日打ち壊し続けながらも、なすべきことはまだまだ多いと感じています。根強く残る文化や社会の壁は撤廃しなければなりません。労働市場で女性がさらに活躍できるための措置も必要です。男女平等は憲法に規定されたものであり、全ての場面で男女の50:50の参加が実現するまで、私たちは頑張ります。


カナダのジェンダー平等について
駐日カナダ大使 イアン・バーニー閣下からのメッセージ

駐日カナダ大使


2015年、カナダのトルドー首相が15名の女性閣僚を任名したことが世界中で大きなニュースになりました。カナダの歴史上初めて、男女同数の閣僚で構成される内閣が誕生しました。この勇気ある決断の理由をたずねられたとき、首相はさらりとこう答えました。「もう2015年だから」。

このとき私たちは、完全なジェンダー平等を目指すカナダの取組が、困難を乗り越えて大きな進歩を果たしたことを強く実感しました。20世紀初めまでカナダの女性には投票権がなく、政治家になる権利もありませんでした。事態が変わり始めたのは1916年から1917年にかけてのことです。一部の州で初めて女性に投票権が認められ、連邦政府もすぐにこれに続きました。そして、1921年には初の女性国会議員が選出されました。

現在カナダでは、連邦法や州法、さらにカナダ憲法の一部を成すカナダ人権憲章によって、女性が差別を受けないようにしています。女性は今や大学卒業生の半数以上を占め、労働参加率は74.4%(2017年)となり、労働人口の半分に迫ろうとしています。しかも働く女性の大多数(70%弱)が幼い子どもを持つ母親です。また最近の調査では、医師の40%が女性であり、若年層では女性医師の数が男性医師を上回っていることから、数年のうちに男女同数となる見込みです。

ジェンダー平等へのカナダの取組は大きな成果を上げていますが、一方で課題も残されています。例えば、指導的地位に就く女性は依然として少なく、大企業の取締役では20%余り、国会議員では27%にすぎません。また状況が改善しつつあるとはいえ、いまだ家事・育児・介護の負担は女性の方が重く、収入は男性より少ない状態が続いています。したがって完全なジェンダー平等の実現は、カナダ政府にとって引き続き国内外で主要な優先課題になっています。

カナダ政府は、国内のさまざまな分野で取組を行っています。STEM(科学・技術・工学・数学)分野に携わる女性を増やす施策を継続しているほか、女性の企業経営者増加に向けて資金調達やネットワークづくり、専門知識習得の支援を行っています。また、賃金格差を解消するため、賃金体系の透明化を推進する施策を導入したり、連邦政府の規制下にあるセクターでは同一賃金制度の整備を積極的に進めています。さらに、手ごろな価格の保育サービスへの支援に加え、家庭内での育児負担をより平等化するための新しい育児支援制度も導入しました。

ジェンダー平等を進展させるためには他国との協力も不可欠です。2017年には、女性・少女のエンパワーメントとジェンダー平等を中核として開発援助を行う「フェミニスト国際援助政策」を初めて策定しました。また今年、G7サミットで議長国を務めた機会を活用し、トルドー首相の主導でジェンダー平等アドバイザリー評議会を設立しました。この評議会には日本から、国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)の元委員長であり、女性の人権保護活動に長年取り組んでこられた専門家である林陽子氏にご参加いただきました。

また今年9月にモントリオールで開催した女性外相会合には、河野太郎外務大臣をお迎えしました。先のG7サミットでジェンダー平等推進に向けてカナダと日本が緊密に連携したことに加え、大臣がこの会合にご出席くださったことで、両国が女性の政治的・経済的エンパワーメントをどれほど重視しているかが示されました。日本では2019年のG20サミット開催に向けた準備が進められていますが、カナダは引き続き日本と協力し、ジェンダー平等実現を推進していきます。

女性外相会議
カナダとEUが共催した女性外相会議(2018年9月モントリオール)
河野太郎外務大臣は、唯一の男性参加者


昨年の国際女性デーにトルドー首相は次のように宣言しました。「私たちは共に手を携えて、女性や少女たちが高い障壁やガラスの天井に阻まれることなく、それぞれの能力を自由にいかんなく発揮できる世界を作ることができる」。私自身も3人の娘を含む4人の子に恵まれた父として、人間の能力は性別では決まらないということを十分に理解しています。性別によって将来の可能性を決めつけたり制限したりすることは、絶対にあってはならないと考えます。

「“おとう飯”始めよう」キャンペーン
大使が三女と参加した「“おとう飯”始めよう」キャンペーン。
カナダでは、父親もよく家族と一緒に料理をします。


男女平等に対するフランスの取り組み
駐日フランス大使 ローラン・ピック閣下からのメッセージ

駐日フランス大使


エマニュエル・マクロン大統領は就任数カ月後の2017年11月、女性に対する暴力を根絶すべく男女平等を「国の大義」として掲げました。男女平等問題はあらゆる面で政治の優先課題です。1999年以来、「選挙によって選出される議員職及び役職への男女の平等なアクセスを促進する」ため、憲法改正や新法制定など法整備が進められました。この立法府の意志によって、大きな進歩を遂げました。

政治面では、2000年法と2013年法が候補者名簿を男女同数とすることを義務化、違反した場合に罰金を科す制度も導入され、女性の代表性向上につながりました。パリテ(男女同数)は2012年以降、政府内でもルール化されました。現内閣の閣僚数は男性17人、女性17人です。国民議会の女性議員比率は39%です。わが国では女性大統領はまだ誕生していませんが、女性が政治的要職に就くことは一般的になりました。女性の政治参画の拡大に伴い、政治活動で実力を発揮する有能な人材も増えています。

フランス現内閣の閣僚
フランス現内閣の閣僚(2018年10月)


進歩は経済・社会面でも

 女性就業率は近年上昇の一途をたどり、現在67.6%に達します。フランスでは男性だけが働くという伝統的な家族形態はもはや少数派です。適切な家族政策(父親・母親育児休暇、託児制度、大家族に対する経済的支援など)のおかげで、女性は経済的に自立し、私生活と仕事を両立しています。その結果、フランスの出生率はヨーロッパ屈指の高水準(女性1人あたり1.8人の子ども)にあります。2011年法は従業員500人以上の企業を対象に、取締役会と監査役会の女性比率を2017年を目途に40%以上に引き上げる目標を定めました。経済面でも、女性の役割と地位の強化は平等な権利の実現だけでなく、国の経済や人口動態の活性化につながります。

第一線で活躍するフランス女性たち
第一線で活躍するフランス女性たち 左から、
-クリスティーヌ・ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事
-エマニュエル・シャルパンティエ博士(微生物学・遺伝学者)「生命科学」分野でJapan Prizeを受賞
-ローランス・テュビアナ元気候変動交渉担当大使(COP21特別代表)・欧州気候基金CEO


行政機関が模範を示す

2012年法は公務員の上級管理職・幹部職への女性登用率を40%以上にすることを定めました。これは即効性がありました。例えばヨーロッパ・外務省では、2012年に11%だった女性大使の比率が今や26%、47人に急増し、フランス外交の顔が大きく変わりました。

平等に向けて道半ば

完全な男女平等の達成はなお道半ばです。女男平等・差別対策担当副大臣が指摘するように、2018年の数字はまだ不十分です。女性が家事の72%を行い、女性の30%(男性の8%)がパートタイム労働者であるほか、女性は男性との賃金格差や低い管理職登用率に苦しんでいます。特に女性はカップル間や公共空間で、ハラスメント、身体的暴力、性的暴力の最大の被害者です。

男女平等は日仏交流・協力の優先テーマ、フランス対外行動の優先課題

日仏両国は経済・社会分野をはじめ、数多くの共通課題に直面しています。両国は高齢化、教育、社会政策・家族政策、男女平等などのテーマをめぐり共有すべきことが多くあります。経験とグッドプラクティスの共有は、われわれが日本で取り組む政治、経済、学術、文化の交流の優先課題です。これらのテーマをめぐる討論会が定期的に開催され、両国の専門家が接触する機会となっています。このようにしてわれわれは手を携えて前進し、日仏両国で女性が本来の地位を占めるように取り組みを進めています。

日仏交流160周年について

日本とフランスは今年、日仏交流160周年を迎えています。

この記念すべき年に、フランスからジャン=イヴ・ル・ドリアン・ヨーロッパ・外務大臣が1月に来日、国民議会議長が春に来日した一方、日本の河野太郎外務大臣が7月12日から14日まで、日本文化を紹介する「ジャポニスム2018」の開幕に合わせてフランスを訪問、皇太子殿下が9月7日から14日までフランスを訪問されました。

日仏両国は2013年より、同じ価値観の共有に基づいた「特別なパートナーシップ」で結ばれています。2019年にG20議長国を務める日本とG7議長国を務めるフランスは、多国間主義の強化、気候変動対策、テロとの闘いを共通の優先課題として掲げています。またG7では、人材育成を優先課題としており、男女平等も重要なテーマです。

日本はフランスにとってアジア第2位の貿易相手国、アジア最大の対仏投資国です。観光分野では、フランスはヨーロッパで日本人旅行者が最も多い国です。


ニュージーランドにおける男女共同参画の取組と女性参政権取得の歴史
駐日ニュージーランド大使 スティーブン・ペイトン閣下からのメッセージ

駐日ニュージーランド大使


2018年はニュージーランドの女性にとって記念すべき年でした。6月にジャシンダ・アーダーン首相とパートナーのクラーク・ゲイフォード氏の間に第1子のニーブちゃんが誕生し、首相は6週間の産休を取得しました。選挙で選ばれた世界のリーダーの中で、在任中の出産は2人目、産休の取得は初めてのことでした。また、9月のニューヨークでの国連総会にニーブちゃんを同行させたことも話題となりました。

「First Baby」のニーブちゃん
アーダーン首相、パートナーのゲイフォード氏、「First Baby」のニーブちゃん
(出典:NZ Herald/Mark Mitchell)


クラーク元首相の発言にもありますが、首相の妊娠が明らかになった祝福の日は、ニュージーランドが成熟した国であり、キャリアと家庭の両立は女性の自由な選択であることを受け入れたことを示す日でもありました。またゲイフォード氏が喜んで幼い子どもの育児に専念する姿が、現代のニュージーランド男性らしいと称賛されました。

さらに今年、女性の参政権125周年を迎えました。ニュージーランドで女性の参政権が認められたのは1893年、世界で初めてのことでした。この運動は10ドル紙幣の肖像にもなっている素晴らしい女性、ケイト・シェパード氏によって率いられました。運動には多くのマオリの女性も参加しました。代表的人物がメリ・テ・タイ・マンガカヒアです。彼女はさらにマオリ議会議員の被選挙権を女性にも認めるよう求める活動も行いました。

ケイト・シェパード氏と全国女性評議会メンバー
ケイト・シェパード氏と全国女性評議会(National Council of Women)メンバー(1896年)


女性参政権獲得への道のりは決して平坦ではく、長く困難なものでした。法案は何度も否決され、最終的に僅差で可決しました。投票直前に2名の議員が反対から賛成へ方針転換をしたためです。その2カ月後の総選挙で女性の投票が初めて実現し、多くの女性が投票所に詰めかけました。しかし、まだ完全な勝利と言える段階ではありませんでした。女性初の国会議員が誕生したのは、それから実に40年も後のことです。中国系の人々は男女ともに1952年まで選挙権がありませんでした。また女性が初めて首相になったのは、1997年の出来事した。

現在、首相、総督、最高裁長官と、国の最も枢要な3つのポストは女性です。また、アーダーン首相は、ジェニー・シップリー氏、ヘレン・クラーク氏に続く3人目の女性首相です。

歴代の女性首相
歴代の女性首相 右からヘレン・クラーク元首相、ジャシンダ・アーダーン現首相、ジェニー・シップリー元首相
(出典:NZ Herald/Babiche Martens)


現在の国会における女性議員の数は過去最高で、議員総数120名のうち40%は女性からなり、マオリ系、太平洋島嶼国系、アジア系の女性も多数含まれています。女性国会議員の増加の背景には、小選挙区制から比例代表制への選挙制度の移行も影響しています。比例代表制では政党名簿に載ることが国会議員になるためのひとつの道です。各政党は女性候補を多く含むことで、ニュージーランド社会の多様性を反映した多様な候補者からなる名簿の構成に努めています。

ニュージーランドの完全なジェンダー平等の実現に向けては、まだ課題が残っています。現在も女性が企業の役員・管理職や経営職を占める割合は低く、諸外国と同様に「#MeToo」運動によって、女性が差別やセクシャルハラスメントを経験していることが明らかになりました。また男女の賃金格差は約10%あり、低賃金労働に従事するのは女性が多く、さらには家庭内暴力の被害を受けている女性も数多くいます。

9月の国連総会で行った演説の中で、アーダーン首相は次のように述べています。

「現代においてもなお、ジェンダー平等に改めて尽力しなければならないことは驚きですが、それが現実です。ニュージーランドは女性のためにいくつもの成果を達成してきましたが、私自身は、それを喜ぶつもりはありません。世界には、最も基本的な機会と尊厳すら持てない女性や少女がいるからです。『Me Too(私も)』は『We Too(私たちも)』にならなければなりません。これは私たち全員の問題です。」

ニュージーランド外務貿易省では夫婦のどちらかが海外へ赴任する場合、配偶者の長期休暇取得を自動的に認めるなど女性のキャリアと家庭の両立を支援しています。私と妻のジャネット・ローは共に外交官です。このような制度のおかげで、共に支え合いながら二人の娘を育て、外交業務を継続することができただけでなく、共に大使のレベルにまで達することができました。


スウェーデンにおける男女平等の歩み
駐日スウェーデン大使 マグヌス・ローバック閣下からのメッセージ

駐日スウェーデン大使


本年はスウェーデンと日本の外交樹立150周年記念であり、様々なイベントが開催され、4月には国王王妃の訪日もありました。私の赴任以来3年連続で9月をジェンダー月として行っていたジェンダーセミナーについても、本年は「男女平等を実現する手段としての税制―スウェーデンの経験と日本の選択」と題し、スウェーデンで所得税を夫婦単位の課税から個人単位に切り替えたことで社会がどのように反応したか、また政治的抵抗をどのように克服したかなどを2人のスウェーデン人有識者が発表し、日本の税制改革の参考になるか、などを議論しました。またこれに合わせ、スウェーデンのジェンダーに関わる改革の歴史の年表などの展示も同時に行いました。

ジェンダーセミナーの様子
ジェンダーセミナーの様子

ジェンダーに関する歴史年表の一部
ジェンダーに関する歴史年表の一部
(1972年 配偶者との共同課税が廃止される(1971年に法成立、翌1972年に施行))


1971年の税制改革はやはり特筆に値します。すでに産業界では人手不足が進み、女性の労働市場への進出は始まっていましたが、この所得税改革(完全には1991年に個人単位の税制となる)により、既婚女性が有償労働に参画する心理的なバリアが取り除かれました。政治的にも反対は多く、与党の社会民主党内でも意見は割れていましたが、女性自身が経済的自立を望んだことが世論の後押しをしたようです。そして女性の賃金が上昇し、既婚女性の労働市場への進出が本格化すると、保育の整備が必要となりました。

保育制度は急速に拡大され、制度を利用する子供は1972年には12%でしたが1985年には50%となり、今では1〜5歳児の85%がプレスクールに登録しています。また公的保育サービスは安価で、収入に関わらず一人目の保育料の月額上限は16,000円程度です。

 スウェーデンは世界に先駆けて、それまで母親のみが取得できた出産休暇から、両親双方が取得できる育児休暇を1974年に導入、同時に公的保育制度の整備を決定しました。また男性の育児休暇取得を促進するため1995年には30日間の「父親月間」を導入。2002年には「父親月間」を60日に延長、2016年からは両親合わせて取得できる480日のうち90日が「父親月間」とさらに延長されました。このような制度改革により、今では10人中9人の男性が育児休暇を取るようになりましたが、休暇の長さではまだ女性のほうが長く、不平等は完全には解消されていません。

政治の世界でも、この9月の選挙の前まで政権の座にいた政府では、閣僚の半数は女性、国会議員の議席も44%が女性でした。9月の選挙では349議席中161議席を女性が占め、46%となりました。一院制となった1971年には14%だった女性議員の比率は、1990年代に与党社会民主党が候補者名簿を男女交互とするジッパー制を導入し、他の政党でも女性議員の比率を高める努力をしたため、今では40%を超えています。

政治および公的セクターに比べ、民間部門では女性の役員の数等まだ改善の余地があります。2016年の段階で上場企業における女性の取締役は32%、数年間でかなりの改善がみられたものの、平等になるには10年かかると言われています。役員を指名する側の10人に9人が男性だからです。また平均月給額についても職種やセクターの違いなどを考慮しても説明できない4.5%の男女格差(2016年)があります。今後はこの分野においての改善に力を注いでいかなければならないということが認識されています。

国会女性議員の比率
国会女性議員の比率


ジェンダー平等を越えて
-英国において共同参画が意味するところ-
駐日英国大使 ポール・マデン閣下からのメッセージ

駐日英国大使


1 英国の「今」

2018年は、英国でジェンダー平等の機運が二つの観点から高まりました。

一つ目は、本年が、女性の参政権が認められてから100周年を迎える記念の年にあたることです。ロンドンのトラファルガー広場等で女性リーダーを賞すエキシビジョンが開催されたり、BBCで女性ゲストだけを集めた番組が放送されたりと、国民の間でジェンダー平等の意識が高まりました。

二つ目は、男女間の賃金格差に関する報告書がはじめて公表されたことです。現状、英国の男女間の賃金格差は過去最低の18%から改善傾向にある一方、同報告書を受け、全ての産業セクターで男性の方が高い給与水準にあることが分かりました。賃金平等の実現は依然としてまだ道半ばです。

さて、本誌のタイトルである「共同参画」ですが、英国におけるそれは、法的に見ると、ジェンダー平等を越えてより広い概念から捉えています。英国では、個人の権利と差別禁止の根幹を成す最も重要な法律として、「平等法2010」が2010年に成立しています。過去分立していた多くの関連法律が同法に一本化され、性的指向、障がい、マイノリティー等を包括的に扱った形で、個人の権利と差別禁止が規定されています。我々は、「平等法2010」が公平な社会の実現に向けて、非常に重要な基底を成していると考えています。

2 英国外務省の取り組み

英国外務省は、「全ての職員が自分の価値を見出され、ベストな能力を発揮できるオフィス」という観点から、省内で様々なアクションを取っています。例えば、女性、マイノリティー、障がい等の各分野で、平等な職場環境の整備のため、職員自らが組織したグループが形成されています。LGBTとその支援者で作るグループでは、トランスジェンダーに係るガイドラインを作成中です。

女性外交官の活躍も顕著で、昨年はイウジ・エメ氏が黒人女性としてはじめて英国大使に就任した他、東京勤務の経験もあるジョアンナ・ローパー氏が新設の「ジェンダー平等担当特使」に就任しました。本年は、女性初の国連大使にカレン・ピアズ氏が任命されるなど、女性が英国外交を力強く引っ張っています。

また、職場の勤務体系の柔軟性を高めることにも積極的で、例えば駐ザンビア英国大使の職を夫妻がワークシェアリングで務めた事例もあります。

私が勤務する駐日英国大使館も精力的に活動しています。一例として、2013年より毎年東京レインボープライドに参加、大使館内ではカップルのどちらかが英国籍である場合には同性婚登録とセレモニーを実施しています。10月には、小池百合子東京都知事と、国際的保険市場であるロイズにおける史上初の女性トップでありLGBT当事者であるインガ・ビールCEOを招き「Diversity and Inclusion(多様性と包摂)」に関する講演を行って頂きました。約100名の来場者を迎え、同テーマに対する日本の関心の高さが伺える好機となりました。

本年10月の講演会にて
本年10月の講演会にて。左から、
-インガ・ビールCEO(英国ロイズ保険会社)
-小池百合子東京都知事
-ポール・マデン駐日英国大使


3 より平等な社会へ向けて

英国は、2017年のジェンダーギャップ指数で世界15位(144か国中)を記録し、前年より順位を上げました。しかし英国社会では今なお、様々な側面で不平等が看取されることから、更なる努力が肝要です。日本も英国と同じく、公平な社会の実現に向けて種々施策を講じていると思います。日英は共通の価値観を有する友好国です。「共同参画」の分野でも皆様と大いに協力できると信じています。

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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