「共同参画」2018年11月号

特集1

女性に対する暴力をなくす運動について~女性に対する暴力の根絶に向けた取組~
男女共同参画局推進課暴力対策推進室

女性に対する暴力について

女性に対する暴力(配偶者等からの暴力、性犯罪、ストーカー行為、売買春、人身取引、セクシュアルハラスメントなど)は、女性の人権を侵害するものであり、決して許されない行為です。女性が安心して暮らせる環境を整備することは、女性活躍推進の大前提であり、政府は女性に対する暴力の被害者支援を行うとともに、暴力を容認しない社会環境を整備するための教育や啓発活動にも力を入れています。

女性に対する暴力をなくす運動

政府では、女性に対する暴力の予防と根絶に向けて、毎年11月12日~25日までの2週間、地方公共団体、女性団体及びその他の関係団体との連携・協力の下、「女性に対する暴力をなくす運動」(平成13年男女共同参画推進本部決定)を実施しています。

内閣府では毎年ポスターやリーフレットを作成し、国の関係機関や地方公共団体等に配布しています。また、いくつかの鉄道会社の駅構内においてもポスターの掲示を行っています。

今年は俳優の東幹久さんを起用し、セクハラの防止をテーマに、ポスター・リーフレットのほか、連動した動画も作成しました。また今年も漫画家の西原理恵子さんに、暴力に悩んでいる方や若い女性に向けて、描き下ろし漫画とメッセージをいただきました(4ページに掲載)。

運動期間の初日である11月12日には、東京タワーや東京スカイツリーが運動のイメージカラーであるパープルにライトアップされます。

このパープル・ライトアップには、暴力根絶を呼びかけるとともに、被害者に対して「ひとりで悩まず、まずは相談を!」というメッセージが込められています。

今年も全国100か所以上のタワーや城などでライトアップが行われる予定です。

この他、運動に合わせて、地方公共団体等によるイベントや講演会等も催されます。

各地の行事予定はホームページに掲載しています。もし、お近くでパープル・ライトアップをご覧になる機会がありましたら、是非、SNS等を通して、多くの方に「ひとりで悩まないで」というメッセージを届けられるようご協力をお願いいたします。

そして、お近くのイベント等にもぜひ参加してみてください。

http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/no_violence_act/index.html

パープル・ライトアップ(東京スカイツリー・東京タワー)
パープル・ライトアップ(東京スカイツリー・東京タワー)


セクハラを決めるのは、あなたではない

「あれ?今日の服かわいいね。俺、好みだな」「痩せてきれいになった?」「二人きりで食事に行かない?」「彼氏いるの?結婚は?」

皆さんはこのような会話を耳にしたり、口にしたりしたことはありませんか。今年の動画やポスター等は、セクハラになり得る言動を示して、「セクハラを決めるのは、あなたではない」とのメッセージを伝えています。セクハラは受け手がどう感じたかが重要なポイントとなります。容姿やプライベートなどにかかわる言動を不快に感じる人がいます。また上司や部下の関係などから、相手が“イヤ”と言えない場合があることを理解することも大切です。相手に敬意を払い、周囲にも配慮した言動を心がけてみてください。

身近に潜む暴力

内閣府が平成29年度に実施した「男女間における暴力に関する調査」(20歳以上の男女5,000人を対象)によると、これまで結婚したことのある人のうち、配偶者から「身体的暴行」、「心理的攻撃」、「経済的圧迫」、「性的強要」のいずれかについて、被害を受けたことが『あった』と回答した人は、女性が31.3%、男性が19.9%、「交際相手がいた(いる)」という人のうち交際相手から被害を受けたことが『あった』と答えた人は、女性が21.4%、男性が11.5%となっています。

一方で、配偶者からの被害を受けたことがあると答えた人に、被害の相談の有無を聞いたところ、『相談した』と回答した人は、女性57.6%、男性は26.9%でした。『相談しなかった』と回答した人は全体で約半数(48.9%)に上りました。

相談しなかった人の主な理由は、全体で『相談するほどのことではないと思ったから』(58.2%)が一番多く、次いで『自分にも悪いところがあると思ったから』(34.3%)となっています。他にも、『自分さえがまんすれば、なんとかやっていけると思ったから』『恥ずかしくてだれにも言えなかったから』等がありました。

さらに配偶者からの被害を受けたときの相談先をみると、全体で『家族や親戚に相談した』(28.0%)、『友人・知人に相談した』(26.2%)が多く、『警察への連絡・相談』は、わずか2.2%でした。必ずしも、公的な相談機関につながっていない状況が窺えます。

問題を解決するには専門機関へ相談することが一番の近道です。各窓口では様々な知識を持った専門の職員が、適切な対応を教えてくれます。被害を拡大させないためにも、できるだけ早く専門機関へ相談することが大切です。もしかして…と思ったら、ひとりで悩まず相談してください。もし、あなたの大切な人から相談を受けたら、専門機関への相談を勧めてあげてください。

※相談窓口等に関しては5ページをご参照ください。

配偶者からの暴力の被害の相談先(複数回答)
配偶者からの暴力の被害の相談先(複数回答)


スペシャルメッセージ

我慢をするのは勇気ではありません。正しい知識はあなたの武器になる!
ひとりで悩まず、専門家に相談を。
西原 理恵子
漫画家

○暴力は様々――

こんにちは。漫画家の西原理恵子です。11月12日~25日は女性に対する暴力をなくす運動期間です。

暴力にはいろいろな種類があるんですね。ただ殴られたりするだけが暴力じゃないんです。怒鳴られたり、セクハラされたり。ストーカーされたり、売春を強要されたり。殴る以外にもたくさんの暴力があることを皆さんに知っていただきたいと思います。

また、恋人や元カレなど親しい人からの暴力が非常に多いということも頭に入れておいてください。夫であると生活費を渡さないとか、彼氏だと他の人との交際を制限されるとか、携帯を全部覗かれてしまうとか。あなたの人格を否定したり、ものすごくひどいことを言ったり、小声でもそうなんですよ。あなたがとてもつらい思いをしたのなら、それはすべて暴力になります。よく覚えておいてください。

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○今、若い皆さんに知ってほしい――

そして私が今一番心を痛めているのが、若い女の子が風俗や性的なもののターゲットになることです。特に「JKビジネス」、本当に心が痛みます。

初めは時給2000円とか3000円もらえるからと、仲のいい男の子や女の子に頼まれて断りきれず、さらに働くうちに店員さんたちと仲良くなってしまうと、どんどん断れなくなりますよね。でもそれは恐ろしい性風俗や性暴力の入り口です。あなたたちを狙って断れない状況に追い込みます。AVへの出演強要や、売春にもつながります。絶対に「JKビジネス」というものに触れないで、近寄らないでほしいです。そして入り口となっているのがSNSです。悪い人たちは、あなたたちを用意周到に待っています。怪しい人、知らない人とは絶対につながらないようにしてください。

また、これから大学生になっていく女の子たちに多いのが、合コンですね。お酒に酔って体を触られたり、脱がされたり、お酒に何か薬を入れられてしまったり。こうしたニュースを何度も見ます。

でもほとんどの女の子がそれを悪いことだとか、いやなことだと思っても言えないんです。言えないからこそ、どんどん酷くなっていく。少しでもおかしいと思ったら、まず相談してみてください。自分の名前を明かさずに相談できる窓口もあります。「もしかしたら」と思ったなら電話をしていいんです。そうすれば専門家の意見を聞くことができます。

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○相談は専門家に――

もしあなたがひどい目にあったとしたら、まず最初に相談するのは、お友達とかそういう親しい人かもしれません。でも親しい人たちってみんな素人なんです。だから的確な答えが出せるとはかぎりません。私の周りの親戚のおばちゃんからも、私が夫に殴られた時、「我慢しなさい」「あんたも悪いところがあったんでしょう?」「もう一回だけやり直してみようよ」と間違った答えが返ってきたんです。

素人同士では解決できない問題もあります。間違ったアドバイスで逃げ遅れてしまう場合もあります。我慢をするのは勇気ではないです。我慢するのは間違っています。おかしいなと思ったらひとりで悩まず、必ず相談してください。そして周りの人に相談するだけで終わらず、さらにもう一歩、専門家に相談して的確なアドバイスをもらってください。正しい知識を持つことは、あなたの武器になります。ぜひ勇気を出して電話をする。チャレンジしてみてください。よろしくお願いします。

イラスト3


※本メッセージの動画や描きおろし漫画等「女性に対する暴力をなくす運動」については下記HPに掲載しています。ぜひご覧ください。
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/no_violence_act/index.html

※女性に対する暴力に関する事例や相談窓口に関する情報は、下記HPをご覧ください。
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/index.html

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西原理恵子
西原 理恵子
漫画家

さいばら・りえこ/
武蔵野美術大学卒業。88年デビュー。「毎日かあさん」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞や手塚治虫文化賞短編賞。「いけちゃんとぼく」「上京ものがたり」など映像化作品、「この世でいちばん大事な『カネ』の話」「ダーリンは70歳」「女の子が生きていくときに、覚えていてほしこと」「スナックさいばら」シリーズなど著書多数。13年ベストマザー賞文芸部門。2017年10月より「りえさん手帳」を連載中。

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