「共同参画」2018年8月号

特集1

平成30年度「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」開催報告
内閣府男女共同参画局総務課

主催者挨拶・基調講演

始めに、野田聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)による主催者挨拶と基調講演が行われました。

野田大臣は、近年の取組により女性活躍が確実に進展してきている一方で、妊娠や出産、更年期といった各ライフステージにおける女性に特有の健康上の課題や、雇用の場における男女間の不合理な賃金格差、ひとり親女性が抱える困難、また、セクシュアル・ハラスメントを含む女性に対する暴力の問題など、いまだに解決されていない課題があると指摘し、「フェアネスの高い社会」の構築が、本当の意味での女性活躍につながる、と述べられました。

野田聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)


特別応援メッセージ

続いて、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんにご登壇いただき、先人の尽力により、現在のプロテニスの世界では大会賞金をはじめ男女格差はほとんどなく、比較的恵まれた環境であるが、指導者の分野では男女間の格差があることをお話しいただきました。そして、出産や子育て等、否応なく大きなライフステージの転換を迎える女性の多様な働き方を柔軟に受け入れる社会が必要である、また、「社会に歩み寄ってもらうと共に、女性側からも社会に歩み寄る必要もある。」とし、ご自身も一人の働く母として、男女共同参画社会づくりに向けて一石を投じながら、みなさんと共に頑張っていきたいと、力強い決意と応援メッセージを述べられました。

元プロテニスプレーヤー杉山愛さん


取組事例紹介

取組事例紹介では、地域の店舗を展開する形で障害のある人々の働く場を創出する『社会福祉法人シンフォニー』理事長の村上和子さん(大分県)、北海道と津軽の人たちが連携した地域おこしに取り組む『津軽海峡マグロ女子会』北海道側代表の杉本夏子さん(北海道)、出産前後にまつわる様々なトータル的なケア等に取り組む『菜桜助産所』院長の堀田久美さん(静岡県)にご登壇いただき、それぞれの取組について発表していただきました。

取組事例紹介


パネルディスカッション「スポーツを通じた女性の活躍」

順天堂大学女性スポーツ研究センター長の小笠原悦子さんをコーディネーターに迎え、東京大学医学部産婦人科学教室病院診療医の能瀬さやかさん、国際パラリンピック委員会教育委員のマセソン美季さん、日本オリンピック委員会理事の山口香さん、国際体操連盟会長の渡辺守成さんの4名のパネリストにご登壇いただきました。「女性アスリートが直面する課題」、「パラアスリートの課題」、「女性アスリートのキャリア支援」、「スポーツ界における女性リーダーの育成」、「セクシュアル・ハラスメント対策を始めとしたスポーツ分野の男女共同に向けた取組」についてディスカッションが行われました。

パネルディスカッション「スポーツを通じた女性の活躍」


議論のまとめとして、4人のパネリストの方々に、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の女性活躍分野のレガシーについて、それぞれご自身の考えるキーワードを次のとおり発表していただきました。


能瀬さん「多職種連携」

「2020年に向けては、女性アスリートに対する様々なサポートの取組が広がっていくと思う。しかし、このような取組は、決してトップアスリートに対してだけ行えればよいということではなくて、あらゆる層のスポーツに参加する女性、ひいては一般の女性全体の健康へのサポートにもつながっていく取組かと思っている。自分は、病院で診療に従事するだけでは縁がなかったであろう運動生理学者、スポーツ栄養士、スポーツトレーナー等の様々な方と、一緒に仕事をする機会を得ることができた。こういった多職種連携というのはスポーツ分野ならではのことと思うし、これがスポーツの力だと思っている。ぜひ、2020年に向けて、多職種の専門家が連携を取っていく体制が構築されること、そして重要なのは、それが決して2020年では終わらずに、その後も続いていくことを願っている。」


マセソンさん「道を切り開く」

 「最初「50/50」と書いて、男女比があらゆるところで50%ずつになることを目標にしたいと考えた。しかし、パラアスリート、しかも女性という観点でみると、50%でもあまりに高すぎる目標であると考えなおした。最終目標は50%ではあっても、まずはそこを目指すために、例えばコーチの男女比は現在何%になっているか等、発問の機会を増やしていく、まずは道を切り開いていくステージが必要なのではないか。」  


山口さん「価値のある人間→勇気を生む!」

「健常者と障害者、そして女性と男性、すべてが同じように扱われることで多様性のある社会が実現する。そこでキーワードになるのは、女性も障害者も「自分は価値のある人間なんだ」という自覚を、まず持つこと。誰もが社会に貢献するなんらかの力を持っている。その力は、自分の場合は何かを考えて自覚を持てば、勇気が生まれる。なぜ性的虐待やハラスメントを受けても黙っているのか、これは親から虐待を受けている子供たちも同じで『自分が悪いことをしているから、コーチがほめてくれない、親から可愛がってもらえない。』という風に自分で追い込んでいき、負の連鎖になっていくから。人から何を言われても、自分は頑張っている、そして頑張っている自分に価値があると信じること。そしてそれでいいんだということを、我々大人が伝えてあげたい。スポーツは社会を映す鏡であり、スポーツにある問題は、必ず社会にも存在する。我々は、現状に目を背けることなく、目を光らせ、ときには見守ることをしていかなければならない。」


渡辺さん「夢」

「選手、コーチ、そして日本社会の夢が、2020年で実現することを願っている。さらに2020年以降は、日本が新たな夢を持てる、そんなオリンピック・パラリンピックになってもらえればと思っている。」


コーディネーター小笠原さん


最後は、コーディネーターの小笠原さんから、「今回議論したことやメッセージは、2年後の2020年東京オリンピック・パラリンピックのためだけに向けたものではない。2年後に向けて、女性や障害者への支援は国を挙げて行われていくのだろうが、大事なのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックが、世の中に何を残すのか、ということ。2020年はゴールではなく、あくまできっかけとしなくてはならない。そのためには、スポーツ界だけが努力すればよいということではなく、みなさんの力も必要である。」とのメッセージで締めくくられました。

(全国会議の詳細な模様は、内閣府HP http://www.gender.go.jp/public/event/2018/index.htmlをご覧ください。)

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