「共同参画」2016年1月号

「共同参画」2016年1月号

行政施策トピックス2

潜在的バイアスと女性参画推進 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の取組
内閣府沖縄振興局

最近、「潜在的バイアス(Unconscious Bias)」が、米国Google社の社員教育に取り上げられたことで注目を集めています。潜在的バイアスとは私たちが無意識に持っている偏見のことであり、米国の大学では15年以上前から潜在的バイアスが教職員・学生の人材多様性を推進する上で重要な要素であると認識され、大多数の大学において潜在的バイアスへの対処の努力がなされてきました。日本の大学では同様の動きはありませんが、OISTでは、潜在的バイアスの影響を最小限に留めるべく、潜在的バイアスの自覚と影響の最小化を目指す研修を始めました。


OISTキャンパス

潜在的バイアスは誰もが持っているものであり、育った環境や文化の影響で無意識のうちに脳に刻まれています。バイアスの対象は男女、人種、貧富など様々であり、個人によって異なります※1。そして、既に社会心理学、認知・行動神経科学の研究から、潜在的バイアスが男女共同参画を推進する上で大きな妨げとなっていることが証明されています。よく引用される例としては、オーケストラの楽団員を採用する際、応募者と審査員の間に幕を張って応募者の性別が分からないようにしただけで女性の採用率が大幅に高まったという研究結果があります。潜在的バイアスは、完全に取り除くことはできませんが、バイアスを自覚し、その影響を最小限にすることは可能です。

※1 ハーバード大学のウェブサイトでは、自分がどのような潜在的バイアスを持っているかを調べることができる(「Project Implicit」https://implicit.harvard.edu/implicit/iatdetails.html)。

大学の教員採用の過程はオーケストラのケースよりはるかに複雑で、潜在的バイアスが入り込む余地が大きくなります。欧米のほとんどの大学では、学部長や教授など教員の採用と昇進査定に関わる人に潜在的バイアスの研修を受けることが義務付けられています。OISTでは、昨年12月、海外の専門家を招き、幹部職員及び教員を対象に、潜在的バイアスの存在とその影響を最小化するための対処を学ぶセミナーを開催しました。そして、本年は、教員採用に関わる全ての者を対象に、潜在的バイアスが人を評価する際にどのような形で現れ結果に影響をもたらすかを理解し、その影響を最小限に留めるための戦略を学ぶOIST独自の研修プログラムを開始します。

OISTでは、女性教員割合が少なくとも30%となるよう目指しており、現在、自然科学分野の大学としては高い18%となっています(国立大学は7%)※2。OISTがこのように成果を挙げてきたのは、これまでに、乳幼児の保育から学童保育まで対応できるChild Development Center、研究棟へのオムツ交換台、授乳・搾乳用の部屋の完備のほか、教職員がワーク・ライフ・バランスを保つことのできる就業規則、子連れ出張費の補助、Dual Career Couple支援システムを整備し、多様性を尊重してきたからだと考えています。今回新たに着手した潜在的バイアスに係る研修は、女性教員割合30%の目標に近づく大きな推進力になるはずです。米国の大学のベストプラクティスを取り入れながら、真に国際的なOISTにふさわしい研修プログラムを構築し、ひいては日本の大学に広く応用できる研修モデルになればと願っています。

※2 国立大学については理学(数学、物理学、化学、生物学、地学、原子力理学、その他)を専門分野とする本務教員を対象に女性教員割合を算出(出典:平成25年度学校教員統計調査)。



Child Development Center


ディルワース マチ 男女共同参画担当副学長