「共同参画」2014年 9月号

「共同参画」2014年 9月号

連載 その1

こんにちは! 復興庁男女共同参画班です(3) 岩手県における男女共同参画の視点での復興の事例
復興庁男女共同参画班

男女共同参画班では、東日本大震災からの復興の現場、男女共同参画の視点での取組を取材し、「男女共同参画の視点からの復興〜参考事例集〜」を取りまとめ、公表しています。今回は岩手県の事例を紹介します。各事例の詳細につきましては、復興庁ホームページに掲載しておりますので、こちらをご覧ください。

http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-16/20130626164021.html

まちづくりの例: 復興計画の実施に女性有識者の意見を反映

岩手県では、平成26年度から「岩手県東日本大震災津波復興委員会」に「女性参画推進専門委員会」を新設しました。女性団体、大学・学校、農山漁村、商工会、歯科医師、看護師、栄養士、放送、子育て支援等、各分野の女性有識者13名の構成です。各委員の知見を踏まえ、復興における女性参画推進に関する調査・分析を行い、女性の声を復興推進施策に反映させる取組を進めています。

第1回女性参画推進専門委員会
第1回女性参画推進専門委員会


仕事づくりの例: 編み物で女性の経済的自立を支援

寄付された毛糸による編み物で、被災地の女性の経済的自立につなぐ取組が、「ハート・ニットプロジェクト」です。

編み物講師を代表に招き、サンプル・編み図をもとに仮設住宅へ出張指導し、完成度の高い作品を作り上げています。事務局納品時に全作品を買い取り、収益は全額編み手に渡すことによって被災地の女性の安定的収入を目指しており、編み手は沿岸被災地である山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市他に広がっています。

また、編み手同士が語らい、編む作業に集中するうちに心もほぐれていきます。

このプロジェクトは、編み手と、毛糸の寄付を預かり編み手に届け、作品を買い取るスタッフと全国の復興支援イベント等で販売を担うボランティアの連携で維持されています。購入者からの要望に応じて新商品も増えていき、編み物を介した輪が広がっています。

ハートニットの作品
ハートニットの作品


健康づくりの例: 畑仕事で生きがい創出と生活不活発予防

仮設住宅の高齢者の生活不活発病や抑うつ傾向を憂慮した県立高田病院の医師が、農作業プロジェクト「はまらっせん農園」を発案しました。

敷地の広い住宅で暮してきた住民が、仮設住宅での窮屈な生活が長期化すると、心身の健康状態への影響が懸念されます。地域に親しみある農作業に着目した医師が、高田病院の理解を得て「運動・畑・嬉しい」を柱とする健康プロジェクトに着手。高齢者が自宅の庭感覚で畑仕事が楽しめるよう、各仮設住宅近隣の休耕地を探して地主に交渉し、農地の無償貸与を実現し平成24年6月農園開設に至ります。

「はまらっせん(=お入りなさい)農園」と名づけた仮設住宅付設農園を11か所開園。農園毎にリーダーをおく住民主導で共同作業が進み、こもりがちな生活に交流の場、運動の機会をもたらしました。

当初は女性主体でしたが、配偶者も参加するようになり、男性参加も増えました。さらに、保育園児との交流や感謝祭、料理教室「はまらっせんキッチン」を開催し、仮設住宅の枠を超えた交流が行われています。医師の調査では、参加者には、生活充実感や意欲の改善が見られ、農作業が生きがいとなっていると考えられ、骨密度も半年弱で有意に改善が見られました。

はまらっせん農園での農作業
はまらっせん農園での農作業