「共同参画」2014年 7月号

「共同参画」2014年 7月号

特集2

APEC
女性と経済フォーラム2014
内閣府男女共同参画局総務課

5月21日から23日まで、中華人民共和国・北京において、「APEC 女性と経済フォーラム2014」が開催されました。その概要と成果について、御紹介いたします。

5月21日から23日まで、中華人民共和国・北京において、「APEC 女性と経済フォーラム2014」が、APEC域内の閣僚級、企業の役員級、起業家及び学識経験者など、約300名の参加により開催されました。「女性の力を結集し、アジア太平洋地域の経済を発展させる」をテーマに、「女性とグリーン発展」「女性と地域貿易及び経済協力」及び「政策支援と女性の経済的エンパワーメント」をサブテーマとして議論が行われ、持続可能な経済成長や女性の経済参画について経験、情報及び成功事例等の共有が図られました。日本からは、岡田広内閣府副大臣及び民間の女性リーダーが参加しました。

※APEC(アジア太平洋経済協力)とは、アジア太平洋地域の21の国と地域(「エコノミー」と総称しています。)が参加する経済協力の枠組みです。その経済規模は、世界全体のGDPの約5割、貿易量及び人口の約4割を占めています。

各エコノミーの代表(前列右から3番目が岡田副大臣)
各エコノミーの代表(前列右から3番目が岡田副大臣)


5月21日(水)及び22日(木)
女性と経済に関する政策パートナーシップ:PPWE

女性と経済に関する各エコノミーの取組状況、本フォーラムの今後の取組方針等について議論が行われました。日本からは、塚本良江さん及び政府関係者が参加しました。

塚本良江さんは、民間の立場から女性の活躍推進の取組の報告を行いました。また、内閣府からは、我が国の女性活躍推進の取組や成果の報告を行い、外務省からは、女性と経済の分野における日本の貢献について提案を行いました。

塚本良江さんによる報告の様子
塚本良江さんによる報告の様子


5月22日(木)
女性と経済に関するハイレベル政策対話:HLPD

宋秀岩(ソン・シュウイェン)中国国務院婦女児童工作委員会副主席(中華全国婦女連合会副主席・第一書記)が議長を務め、各エコノミーの閣僚級及びビジネス界の代表が出席し、女性と経済に関する各エコノミーの取組方針等についてスピーチが行われました。日本からは、岡田副大臣が我が国の女性活躍推進の取組と成果や災害からの復旧・復興における女性のリーダーシップの促進等について、スピーチを行いました。

岡田副大臣によるスピーチの様子
岡田副大臣によるスピーチの様子


5月22日(木)及び23日(金)
女性と経済に関する官民対話:PPDWE

フォーラムの3つのサブテーマごとにパネルディスカッションが行われ、各エコノミーの官民のパネリストがAPEC各エコノミーで共通して取り組むべき課題について議論を行いました。「政策支援と女性の経済的エンパワーメント」をテーマとしたセッションでは、大崎麻子さんが、東北地方の東日本大震災の被災地における女性の起業の推進活動について発表を行いました。

大崎麻子さん(右端)による発表の様子
大崎麻子さん(右端)による発表の様子


5月23日(金)
ビジネスコミュニティにおける女性に関するセミナー

女性の起業に関する優良事例の共有のため、日本、中国、中国香港、カナダ、フィリピン、オーストラリアの女性起業家等がプレゼンテーションを行いました。日本からは、光畑由佳さんが、女性を支援するための商品づくりや子連れのワークスタイルに関し、プレゼンテーションを行いました。


光畑由佳さんによるプレゼンテーションの様子
光畑由佳さんによるプレゼンテーションの様子


5月23日(金)
閉 会

閉会式において本フォーラムの成果である「声明」が採択されました。「声明」には、日本からの提案により、「自然災害からの復旧・復興過程への女性の完全参加」、「公的及び民間部門におけるジェンダー・ダイバーシティの透明化や開示の推進」及び「幹部や中間管理職の女性差別的なマインドセットの変革」などが盛り込まれました。なお、この「声明」は11月に開催されるAPEC首脳会合に提出される予定です。

閉会式の様子
閉会式の様子


APEC女性の経済参画に関する写真展

フォーラム会場では、各エコノミーの「平等な女性の経済参画」の取組について、写真展示による紹介が行われました。

日本の取組の展示
日本の取組の展示


〜APEC女性と経済フォーラム2014 日本からの参加者〜

  • 岡田  広   内閣府副大臣
  • ◆民  間
  •  塚本 良江さん NTTコムオンラインマーケティングソリューション代表取締役社長
  •  大崎 麻子さん 開発政策・ジェンダー専門家、関西学院大学総合政策学部客員教授
  •  光畑 由佳さん 有限会社モーハウス代表取締役
  • ◆関係省庁
  •  内閣府、外務省、経済産業省

■二国間会談

フォーラムの開催期間中に、岡田内閣府副大臣は、参加エコノミーの閣僚級と女性の活躍状況や推進の取組について意見交換を行いました。

岡田副大臣と米国のラッセル国際女性問題担当大使
岡田副大臣と米国のラッセル国際女性問題担当大使


岡田副大臣とオーストラリアのデスポーヤ女性及び少女担当大使
岡田副大臣とオーストラリアのデスポーヤ女性及び少女担当大使


APEC 女性と経済フォーラム2014を振り返って
(民間参加者からの報告)

塚本良江さん
□塚本 良江さん
(NTTコムオンラインマーケティングソリューション株式会社 代表取締役社長)

昨年のバリに続き、北京でのフォーラムに参加させていただきました。昨年のテーマは、女性とICT、インフラと人材育成等、女性活躍支援の基本的なプラットフォームや政策整備が議論の中心でしたが、今年は各国での取組が進み、既にAPEC全域で約60%の女性が経済進出をしていることを受け、「更なる能力活用とアジア太平洋経済の連結」がテーマとなり、議論も参加支援から、社会的インパクトを上げるための、STEM人材の育成や、指導層となる女性比率を上げること等にレベルアップしていたように思います。私はPPWEとHLPDに参加させていただいたのですが、各国の力の入れようと、進展に向けての強い意思がよく伝わってきました。日本でも「アベノミクス成長戦略」の喫緊の課題として女性の活性化が推進されています。一方で、他国と比較すると、国際的女性活用指標であるジェンダーギャップ指数では136か国中105位と急速な改善が望まれています。オーストラリアでは男性トップ層自らが意識改革のためのクラブを形成し積極的推進した結果、大きな改善が出始めているという事例紹介がありました。日本においても、男性も含めた社会全体としての意識改革(マインドセットの改革)が必要であると改めて強く認識しました。貴重な経験をさせていただいたことに感謝すると同時に、今後も微力ながら女性活躍に向け自分のできる貢献をさせていただきたいと思います。


大崎麻子さん
□大崎 麻子さん
(開発政策・ジェンダー専門家、関西学院大学総合政策学部客員教授)

「政策支援と女性の経済的エンパワーメント」セッションで、東日本大震災の復興支援の一環として、オックスファム・ジャパンと行っている女性の起業支援の現状を報告しました。「災害復興をいかに女性のエンパワーメントと地域経済の活性化の機会にできるか?」は、大規模自然災害が増加傾向にあるアジア太平洋地域の共通課題であることがわかりました。また、中国のパネリストが報告した、女性のためのマイクロ・クレジット(小口融資)事例が東北の女性起業支援の参考になりました。そのスキームは、2003年に発表された『中国のWTO加盟:女性への影響調査』が土台になっているということでした。その調査は、筆者がUNDPに勤務していた時に、UNDP/日本WID基金の案件として実施した、UNDP、中国国家開発改革委員会、中国国際経済技術交流センター等の共同調査です。当時、国際的にも大きな注目を浴びました。

10年の時を経て、WID基金の支援があらゆる女性支援政策にインパクトを与え、シングルマザーや農村地帯の貧困女性のエンパワーメントに繋がったことを知りました。WID基金のインパクトを追跡調査し、成功事例を掘り起こすのも面白いプロジェクトになるかもしれません。


光畑由佳さん
□光畑 由佳さん
(有限会社モーハウス 代表取締役)

お話をいただいた時は、私たちのような小さな会社が国際的な会議で何をお伝えできるのだろう、と迷いました。しかし、周囲の方々から「出産育児期に起業し、母親を登用する就労スタイルをぜひ話しに行くべき」と背中を押していただきました。最終日に開催された、「ビジネスコミュニティにおける女性に関するセミナー」は、今年初の開催とのこと。こうしたセミナーが新たに会議に加わったのは、女性の雇用のためにも、女性による起業が注目を浴びていることと無関係ではないでしょう。

セミナーでは各国の女性起業家の12の事例が発表されました。私は、その一人として、「Creating Alternatives(新たな選択肢を創る)」と題し、自社・モーハウスの事例を紹介しました。胸を見せずに母乳が与えられる「授乳服」と、子育て中の女性と社会をつなげるための商品づくり、さらに、社内子育て中の女性と社会をつなげるための商品づくり、さらに、社内で取り組んでいる「子連れ出勤」というワークスタイルについても言及しました。「Breastfeeding(おっぱい)」という言葉と、赤ちゃんに授乳しながらの会議風景の写真には、会場から拍手がわきました。

子育てと就労・起業は相反するものではない、というアピールに、国を超えて共感が得られたことは、新鮮な驚きでした。こうしたワーク・ライフ・バランスが、女性のエンパワーメントにつながることを強く感じました。今後もすべての人々が自分らしい人生を歩むことができる社会への一翼を担っていけたらと思います。


左から大崎麻子さん、光畑由佳さん、塚本良江さん
左から大崎麻子さん、光畑由佳さん、塚本良江さん


APEC女性と経済フォーラム2014 声明(抄訳)

すべてのAPECエコノミーに対して、以下の措置を講じることを奨励する。

■女性とグリーン発展

  • 意思決定を下す役割を担う女性、特に、先住民族の女性が、経済発展、社会の進歩及び環境の保護・管理に関する議論に完全に参画できる機会を奨励し、推進すること。これには、気候変動に対する適応・緩和施策の策定や実施、自然災害からの復旧・復興、経済成長や効率性の向上におけるクリーンエネルギーの役割が含まれる。

■女性と地域貿易及び経済協力

  • −省略−

■政策支援と女性の経済的エンパワーメント

  • 女性及び少女の教育へのアクセスを拡大し、女性及び少女の教育の機会を強化し、女性及び少女がSTEMの分野を学習することを奨励する政策及び制度を構築し改善すること。
  • 官民双方の指導的及び意思決定を担う役割や地位に占める女性の比率など、各エコノミーが2020年末までに達成することを目指して取り組めるような、測定可能で野心的な、任意の目標を明確化し、設定するよう取り組むこと。
  • APEC域内の官民部門での指導的地位におけるジェンダー・ダイバーシティについて、官民それぞれの研究の進展を支援すること。意思決定や指導的役割への女性の参画を促すポジティブアクションを奨励するために、有効な戦略に関する知識の共有を図るための国内及び他のAPECエコノミーとの間での優良事例の交換や普及などを通して、官民協力を強化すること。官民において、ジェンダー・ダイバーシティをめぐる透明性と情報公開を奨励する制度の開発を促すこと。
  • 女性のリーダーを登用し、ワーク・ライフ・バランスを支援し、有能な女性人材の参画を促し、確保する行為慣行を奨励し、家庭内の責任の分担を促すため、上級幹部及び中間管理層のマインドセットの中に存在するジェンダーに基づく偏見に対処する施策を進めること。
  • 自然災害の被害を受けた女性、特に、先住民族や農村地域の女性が、起業家精神やイノベーションを通じて自然対策への対応や復興に貢献するのを奨励し、推進すること。

※ここでは、日本の提案により盛り込まれたものを掲載しています。全文(英文・仮訳)は、内閣府男女共同参画局HPに掲載していますので、そちらをご参照ください。http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_apec/wef2014.html