「共同参画」2013年 1月号

「共同参画」2013年 1月号

特集1

ミチェル・バチェレ UN Women 事務局長の日本訪問について
内閣府男女共同参画局

ミチェル・バチェレ氏 略歴

1983年 チリ大学医学部卒業

2000年 チリ共和国厚生大臣

2002年 チリ共和国国防大臣

2006年3月~10年3月 チリ共和国大統領(同国における初の女性大統領)

2010年9月 UN Women(10年7月設立)初代事務局長に就任

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平成24年11月11日(日)から14日(水)まで、ミチェル・バチェレ国連事務次長兼ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)事務局長(Her Excellency, Ms.Michelle Bachelet,Executive Director of UN Women)が日本を訪問しました。

UN Womenは2011年1月に発足した国連機関で、バチェレ事務局長のもと、世界、地域、国レベルでのジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた活動をリード、支援、統合する役割を果たしています。

バチェレ事務局長は、チリ共和国の厚生大臣、国防大臣を歴任し、2006年から2010年まで同国初の女性大統領を務めました。長年にわたって女性の人権の擁護に携わっており、ご自身のキャリアを通じて、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを唱道してきました。また、UN Women初代事務局長として、2011年には、「UN Women戦略計画2011-2013」を策定し、女性のリーダーシップと参画の拡大、女性の経済的エンパワーメント及び機会の増進、女性と女児に対する暴力の予防及びサービスへのアクセス拡大、平和・安全・人道的対応における女性のリーダーシップの拡大等の6つの分野について精力的に取り組んでいます。

我が国の男女共同参画の推進に当たっては、UN Women等国際機関との連携を図りつつ進めており、今回のバチェレ事務局長の日本訪問は、日本の女性に大きな勇気を与えるとともに、日本政府、企業を含めた各方面における男女共同参画の取組を前進させるに当たり、大きな刺激となることが期待されています。

訪問期間中、バチェレ事務局長は、野田佳彦内閣総理大臣、中塚一宏内閣府特命担当大臣(男女共同参画)及び玄葉光一郎外務大臣との会談を行ったほか、国内におけるUN Women関係団体を始めとする幅広い関係者と意見交換を行い、我が国とUN Womenとの協力関係の一層の強化が確認されました。

野田総理への表敬

12日(月)に行われた野田総理への表敬では、野田総理から、女性の社会的参画・エンパワーメントにおけるUN Womenの役割を重視しており、国内においても、女性の起業や再就職の推進等を図る行動計画を策定し、実施に取り組んでいる旨の発言がありました。

バチェレ事務局長から、第3次男女共同参画基本計画については特に実施が重要である旨述べるとともに、日本政府は女性の政治・経済分野への参画について様々な取組を行う余地がある旨の発言がありました。

写真提供:内閣広報室

中塚大臣との意見交換

12日(月)に行われた中塚大臣との意見交換では、バチェレ事務局長からは、女性の政治参画の促進や女性の経済的機会の拡大が重要であり、特に、意思決定の場への女性の参画を促していく必要がある、との発言がありました。

これに対し、中塚大臣からは、労働力人口減少の影響を抑えるためにも、女性の参画を一層促進する必要があり、「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画に基づく取組を進めていること、また、取組を進める上で、男性の理解や企業レベルでの取組を促していくことが重要と認識していることについて発言がありました。

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東京タワーのパープル・ライトアップ点灯式への出席

バチェレ事務局長は、12日(月)夜、女性に対する暴力をなくす運動(11月12日から25日まで)の広報活動の一環として行われた東京タワーのパープル・ライトアップ点灯式に出席しました。これは、運動の初日に、東京タワーを始めとする全国各地のタワーが、運動のシンボルである「パープルリボン」にちなんだパープルにライトアップされたものです。

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「聞く会」の開催

13日(火)には、「UN Womenミチェル・バチェレ事務局長に聞く会」が一橋講堂(東京都千代田区)で開催されました。

「聞く会」は、男女共同参画推進連携会議企画委員会が主催して行う公開シンポジウムで、これまでも男女共同参画に関する時宜に応じたテーマをもとに、国内外の講師を招いての講演や参加者との意見交換を行っています。

冒頭、挨拶に立った前川清成内閣府副大臣は、我が国において「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画の取りまとめ等、女性の活躍促進を日本再生の柱として取り組んでいることを紹介し、一方で我が国の男女共同参画の現状はまだまだ十分なものとは言えないことから、今回のバチェレ事務局長講演を男女共同参画社会実現のための大切な一助としたいと期待を述べました。

司会の國井秀子氏(男女共同参画推進連携会議企画委員)の紹介の後、壇上に立ったバチェレ事務局長は、まず「どこの国でも、人々は自分の家族や子どもたちに豊かな暮らしをさせたいと願い、誰もが恐怖と欠乏のない、平和な暮らしを求めている。人々は自分の持てる力を発揮できる平等な機会を求めている」と、「人間の安全保障」という概念の重要性を述べた後、日本が長年、人間の安全保障推進に大きな貢献をしてきたことに感謝を示しました。

また、UN Womenが掲げている2012年の3つの最優先課題、すなわち講演内容は別掲のとおりですが、女性の政治参画とリーダーシップの促進、女性の経済的機会の拡大、女性と女児に対する暴力の撤廃について言及がありました。

最後に、次の言葉で講演を締めくくっています。

「経済、政界、社会の中で女性の全潜在能力を活かすことが、今、これまでになく求められていると確信します。現代社会で人々が直面している新たな必要性を考えれば、もう女性を過小評価したり排斥したりする余裕はありません。それは勇敢な新しい世界であり、私たちには新しいリーダーシップが必要です。倫理にかない、平和と正義と平等を推進する、インクルーシブなリーダーシップが必要です。」

講演後、会場からの質疑応答を交え、意見交換が行われました。

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詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。

・「聞く会」(男女共同参画推進連携会議)

http://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/ikenkoukan/57/index.html

ミチェル・バチェレ UN Women 事務局長スピーチのポイント

1 あいさつ

○ 主催者である男女共同参画推進連携会議、及び司会の國井氏への感謝と挨拶

○ 東日本大震災の復興への思いの共有

2 UN Womenの3つの最優先課題

(1)女性の政治参画とリーダーシップの促進

○ 2011年国連総会「女性の政治参画の促進」決議に関する日本政府の共同提案を賞賛する。

○ 女性は世界人口の51%であり、政策決定過程に完全に参加するべきである。

○ 女性の経験は男性と異なり、男女がともに意思決定を行うことが、よりよい政策を促進し、政策ニーズに応えることになる。

○ UN Womenは、「ジェンダーに敏感な議会」を推進している。その実現のためには、女性が予算編成に関わることが重要である。

○ 女性の政治参画の促進はロールモデル効果ももたらす。

○ 議員の女性比率は、世界平均で20%であり、日本は13.4%である。30%以上である国は33ヶ国であり、26ヶ国で暫定的特別措置を講じている。

(2)女性の経済的機会の拡大

○ GGI(ジェンダーギャップ指数)では日本は135ヶ国中101位である。

○ 世界では、女性の賃金は平均的に男性の70~90%である。日本の女性の賃金は、男性の3分の2であり、非正規雇用の大半が女性である。男女平等賃金の実現は重要である。

○ 労働におけるジェンダー・ギャップを縮小することは、生産性の上昇等の経済的利益をもたらす。日本の経済成長と再生のためには、より多くの女性労働者が必要である。

○ ゴールドマンサックス社の調査によると、妊娠・出産による退職を減らし、ワーク・ライフ・バランスを推進して男女の格差をなくせば、女性労働者が820万人増え、日本のGDPが15%上がる、とされている。

○ 日本におけるイクメンの取組や、経済同友会が「意思決定ボードのダイバーシティに向けた経営者の行動宣言」を策定して管理職比率30%の実現を目指していることに非常に勇気づけられる。

○ 女性の参画促進を政策の優先課題とすることは、経済活性化と社会の団結という2倍の配当をもたらす。

(3)女性・女児に対する暴力の撤廃

○ 昨日、東京タワーのライトアップ・イベントに参加した。

○ 女性に対する暴力は最も劣悪な人権侵害の一つである。日本政府が女性に対する暴力、とくに配偶者暴力防止法の立法、セクシュアル・ハラスメント、性暴力、人身取引への対応を含む、男女共同参画に関する基本計画を作成していることを賞賛する。

 ○ 女性、平和、安全保障に関する安保理決議1325号が採択されてから12年経過したが、いまだに女性の平和構築への参加は不十分である。日本政府はその採択を支持し、その履行への支援を提供している。日本の、安全保障の推進における財政的な貢献及びハイチやアフガニスタンにおける自然災害や武力紛争への支援は、より平和な社会の構築に向けて役立つ。

3 謝辞