「共同参画」2012年 10月号

「共同参画」2012年 10月号

特集3

平成24年版犯罪被害者白書の概要
内閣府犯罪被害者等施策推進室

平成24年版犯罪被害者白書の概要

犯罪被害者白書

女性に対する暴力の根絶に向けた最新の取組についてご紹介します。

犯罪被害者白書は、犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号、以下、「基本法」という。)第10条の規定に基づき、国会に対し、犯罪被害者等のための施策について報告を行うもので、平成24年版(以下、「本白書」という。)で7回目となります。

本白書では、特集(第1章)として「性犯罪被害者支援のための施策の展開」として、第2次犯罪被害者等基本計画(平成23年3月25日閣議決定、以下、「第2次基本計画」という。)中、特に性犯罪被害者に向けた施策を集約し、その進捗状況を記述しました。そのほか、例年どおり前年度に犯罪被害者等のために講じられた施策についてまとめるとともに(第2章)、基本法等の参考資料(第3章)を掲載しています。

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http://www8.cao.go.jp/hanzai/whitepaper/w-2012/pdf/zenbun/index.html

性犯罪被害者支援のための施策の展開

そのほかの犯罪による被害者への支援の充実も課題である中、性犯罪被害者に特集として焦点を当てることとした趣旨は、第2次基本計画においては、性犯罪被害者に関しての施策が多数盛り込まれたからです。これは、基本計画に盛り込むべき施策を検討するにあたって、犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体等から、心身及び社会生活上の影響等、被害者が被害後に置かれている状況についてのご指摘や、性犯罪被害者のニーズに寄り添う施策へのご要望を聴取したことを踏まえたものです。

施策の実施状況という点からすると、平成27年度末までの5か年計画としての基本計画なので、平成24年版という時期としては早すぎるようですが、逆に、各種施策を推進していくためにも、白書の特集とすることで、社会に広くこういった性犯罪被害者の状況及び支援の必要性等に関するご理解を訴える意義があると考えました。

第2次基本計画による施策内容

第2次基本計画では、5つの重点的課題の柱立て(損害回復・経済的支援のための取組、精神的・身体的被害の回復・防止への取組、刑事手続きへの関与拡充への取組、支援などのための体制整備への取組、国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組)に沿って各種施策が設けられています。

性犯罪被害者に特化したものとしても、ここでは全ての施策について言及することができませんが、以下のような施策が第2次基本計画上掲げられています。

○損害回復・経済的支援などへの取組

・カウンセリング等心理療法の費用の公費負担についての検討(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省)

心理療法を公費負担している現行制度、犯罪被害者等に対する心理療法の必要性・有効性や費用負担を含めた心理療法の実施状況等についてヒアリングを実施し、公費負担の在り方を検討している。

・性犯罪被害者の医療費の負担軽減(警察庁)

性犯罪被害者に対し、緊急避妊などに要する経費(初診料、診断書料、性感染などの検査費用、人工妊娠中絶費用などを含む。)を公費により負担することにより、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減を図っている。

○精神的・身体的被害の回復・防止への取組

・警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実(警察庁)

・性犯罪被害者に対する緊急避妊に関する情報提供(厚生労働省)

性犯罪被害者を含め、緊急避妊を必要とする者が緊急避妊の方法等に関する情報を得られるよう、保健所や「女性健康支援センター」等を通じ情報提供を図っている。

・医療機関における性犯罪被害者への対応の体制の整備(厚生労働省)

・性犯罪被害者対応における看護師等の活用(厚生労働省)

「チーム医療推進会議」において、「チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集」を取りまとめ、医師・看護師等の職種が連携し、各々の専門性を発揮して性犯罪も含めた暴力被害者支援に取り組んでいる実践的な事例を盛り込み、ホームページ等で周知している。

・ワンストップ支援センターの設置促進(内閣府・警察庁・厚生労働省)後述

・配偶者からの暴力被害者の安全確保の強化についての検討及び施策の実施(内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省)

・検察官に対する児童又は女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実(法務省)

・女性警察官の配置等(警察庁)

○刑事手続への関与拡充への取組

・医療機関における性犯罪被害者からの証拠採取等の促進(警察庁)

医療機関における性犯罪被害者からの証拠採取及び採取した証拠の保管について医療機関に対するアンケート調査を実施するなどの取組を推進している。

○支援等のための体制整備への取組

・地方公共団体における性犯罪被害者支援への取組の促進(内閣府)

「男女共同参画センター等における性犯罪被害者支援体制整備促進に係る担当課長会議」を開催している。

・性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡大(警察庁)

都道府県警察において、性犯罪被害者から被害相談などを受けるための性犯罪相談専用電話窓口の設置、相談室の整備などを推進し、性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡充を図っている。

平成23年4月現在、全国の都道府県警察本部において、女性警察官などによる性犯罪電話相談の受理体制、相談室が整備されている。

・交際相手からの暴力に関する調査の実施(内閣府)

・性犯罪被害者に関する調査の実施(内閣府)

3年に1度を目途に配偶者からの被害経験など男女間における暴力による被害の実態把握に関する調査を行っている。平成23年度は、配偶者に該当しない交際相手からの暴力も含む暴力の被害実態を把握するための調査を実施した。

○国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

・「女性に対する暴力をなくす運動」(内閣府)

毎年11月12日から11月25日(国連が定めた「女性に対する暴力撤廃国際日」)までの2週間、「女性に対する暴力をなくす運動」を実施している。期間中、地方公共団体、女性団体その他の関係団体との連携・協力の下、意識啓発等、女性に対する暴力に関する取組を強化している。

ワンストップ支援センター

性犯罪被害者が、被害直後に総合的な支援を1か所で受けることができるとするワンストップ支援センターの設置・促進に関しては、第2次犯罪被害者等基本計画では、「精神的・身体的被害の回復・防止への取組」及び「支援等のための体制整備への取組」の両課題の下、以下のような具体的施策として盛り込まれました。

・ワンストップ支援センターの開設・運営の手引の作成・配付(内閣府)

・性犯罪被害者対応拠点モデル事業の検証及び結果の提供(警察庁)

・医療機関に対する啓発・協力可能な医療機関の情報の収集及び提供(厚生労働省)

・医療機能情報提供制度における登録内容にワンストップ支援センターの施設内設置の有無を追加する(厚生労働省)

これを受けて、内閣府では、それぞれの地域で活用できる資源や実情に応じたワンストップ支援センターの設置促進を図るため、性犯罪被害者支援現場の一線で活躍されている医療関係者、支援者・当事者、弁護士などの有識者及び関係省庁の協力を得て、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引~地域における性犯罪・性暴力被害者支援の一層の充実のために~」を作成し、配布しました

http://www8.cao.go.jp/hanzai/kohyo/shien_tebiki/index.html

この手引の概要についても、白書で紹介しています。

手引が前提としているワンストップ支援センターとは、性犯罪・性暴力被害者に対して、被害直後からの総合的な支援(産婦人科医療、相談・カウンセリング等の心理的支援、捜査関連の支援、法律的支援等)を可能な限り1か所で提供(当該支援を行う関係機関・団体等に確実につなぐことを含む。)する支援施設のことです。このような総合的支援を可能な限り1か所で提供することにより、被害者の心身の負担軽減、健康回復、警察への届出促進、被害の潜在化防止を図ることを目的としています。

主な支援対象としては被害後1~2週間程度のいわゆる急性期の強姦・強制わいせつ(未遂・致傷を含む)の被害者としています。ただし、支援対象を広く受け止めることができるよう、表題上も「性犯罪・性暴力被害者」としましたように、警察への被害届の有無や性犯罪として扱われたかどうかに関わらず、また、可能な限り子どもも主な支援対象とするのが適当であるとしています。

ワンストップ支援センターには様々な支援の提供が求められますが、その中でも、核となる機能としては、(1)相談・支援のコーディネートと(2)産婦人科医療があります。相談及び支援のコーディネートは、電話・来所による相談に応じること、被害者の状態・状況・ニーズを把握し、必要な支援を行っている関係機関・団体等に確実につないで支援をコーディネートすることによる支援です。産婦人科医療は、主に急性期の性犯罪・性暴力被害者に必要な産婦人科医療における救急医療、継続的な医療及び証拠採取等を提供することによる支援です。

手引では、それぞれの地域で活用できる資源・実情に応じたワンストップ支援センターの設置を促進し、性犯罪・性暴力被害者の一層の支援の充実を図るという観点から、上記(2)の産婦人科医療を提供できる病院内に(1)の相談・支援のコーディネートの機能を担う相談センターを置く「病院拠点型」、(2)の産婦人科医療を提供できる病院から近い場所に(1)の相談・支援のコーディネートの機能を担う相談センターを置き、最初に被害者が病院に来たとしても、相談センターにつなげて、その他の支援に広げる「相談センター拠点型」、(1)の相談センターと(2)の産婦人科医療を提供できる複数の協力病院が連携することにより、ワンストップ支援センターの核となる機能を担っていく「相談センターを中心とした連携型」といった、3つのモデルを示しています。

いずれのモデルについても、支援者・医療従事者だけでなく、警察、精神科医、臨床心理士・カウンセラー、弁護士、児童相談所等の各地域においてそれぞれの支援を担っている関係機関・団体等の緊密な連携を前提としています。

現在すでにそれらの役割を果たしている支援者等には、手引を参考に、引き続き、各地域において、それぞれの役割を担っていただき、連携を高めていっていただくことを期待しています。

また手引作成にあたっては、国内での先行事例を調査し、これを参考としてワンストップ支援センターの開設運営にあたって考慮すべきポイントをノウハウとして提示するほか、社団法人日本産婦人科医会とりまとめによる「産婦人科医における性犯罪被害者対応マニュアル」等、既存の関連資料等についても含めています。相談機能、医療機能その他性犯罪被害者支援についてはまだ蓄積が不足する分野が残る地域においても、これから、各機能を担う支援者・医療関係者等の育成にあたってご活用いただけるのではないかと考えています。

その他第2次基本計画上の施策

もとより、支援対象を性犯罪被害者に限るものではありませんが;

・公営住宅への優先入居等(国土交通省)

・被害回復のための休暇制度の周知・啓発(厚生労働省)

・PTSD治療の可能な医療機関についての情報提供(厚生労働省)

・少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実等(文部科学省)

・刑事手続きにおけるビデオリンク等の措置の適切な運用(法務省)

等、その他の基本計画上の施策についても、性犯罪被害者にとってのニーズにこたえることができるものと考えます。

引き続き、第2次基本計画の着実な実施に向けて努力してまいります。

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